――お二人は今回が初共演となります。こうしてお話を伺っていてもとても息が合っていますが、撮影現場で距離を縮められたきっかけなどはありましたか。
川谷:移動の車の中でもずっと話をしていたので、そのおかげで距離を縮めることができました。僕は同じ顔ぶれで何かをやるというのが、バンドメンバーくらいしかいないので、同じスタッフさん、キャストさんと3週間くらい一緒に過ごすということはとても不思議な感覚でした。でも役者さんって、ある程度の期間を一緒に過ごして、撮影が終わったらいきなり「解散!」とリリースされるわけですよね。そしてまた新しい現場でゼロからスタートする。寂しいし、少し残酷なものもあるなと。そういった日々を過ごしていると、コミュニケーション能力が上がりそうですね。
萩原:いいえ! 役者を始めて10年以上が経ちますが、コミュニケーション能力はまったく上がりません(笑)。だいたい仲良くなってきた頃に現場が終わってしまうので、寂しいなと思うことが多いです。本作の現場は、皆さんと本音で話すことができたので、終わってしまうのが本当に寂しかったです。こんなにも自分の素顔を出せたのは初めてじゃないかな、と思うくらいです。解散するのが、ものすごく寂しい現場でした。
――本音で話せた理由は、どのようなところにあったのでしょうか。
萩原:いつもは家と現場できちんと切り替えて、家の自分とは違う“萩原みのり”として現場にいるんですが、今回は家にいる自分とほとんど同じでした。おそらく現場に行くまでの移動車の中に、めちゃめちゃしゃべる川谷さんがいらっしゃったことが大きいと思います(笑)。川谷さんは、車に乗った途端に話し始めるんです。切り替える間もなくすぐに会話が始まって、そのまま現場に入ることができたので、リラックスして過ごせたように思います。長野県伊那市での撮影もありましたが、泊まりの撮影ということもあって、さらにスタッフさん、共演者の皆さんと距離を縮めることができました。
川谷:この現場は、本当に雰囲気がよかったです。スタッフ、キャストの方たちもみんな明るくて、優しくて、話しかけてくれて。その空気感が、作品にも出ているような気がします。でも萩原さんは、本番となると役柄にパッと切り替わるんですよ。すごいなと思いました。サイコパスとかそういった役柄の方が、きっと切り替えやすかったりするものなのかなと思うんですが、上国料さんってほんわかとした明るい女性ですよね。日常と延長線上にあるような作品であり、役柄なのに、本番になるといつもの萩原さんとは違う、きちんとその役として生きているのがわかる。他の役者さんも撮影の合間には普通に仲良くしゃべっていたと思ったら、セリフになると急にイントネーションや雰囲気まで変わったりして。僕としては「置いてけぼりにしないで!」という思いでした(笑)
萩原:(笑) 川谷さんだって、弦を演じている時は全然違う表情をしていましたよ! 川谷さんは、バンドをいくつもやっていらっしゃるし、こうやって役者業もやられて、その都度新しい表情を見せていらっしゃるので「一体何人いるんだろう?」と思うんです。ゲスの極み乙女の時とindigo la Endの時でも、違う表情をしていますよね。全て、違う川谷さんに見える。ゲスの極み乙女のライブにも行かせていただいたんですが、本作の現場で見た川谷さんとは別人すぎて、びっくりしました! キラキラしているし、速く動いているし「ええ!?」って(笑)。あれだけのステージに堂々と立たれている方が、本作では誰よりも地味な役を演じている。どういう仕組み? と思ったりしました(笑)。あと私、すごく印象的なことがあって。本読みの時に、“立ち上がる”というト書きがあるシーンがあったんですが、川谷さんはそこできちんと立ち上がって本読みをされていたんです。ものすごくまっすぐな姿勢で、作品に臨まれているんだなと感じました。