かつて、アニソンといえばアニメのタイトルやストーリーに直結した内容を歌うものが一般的でした。しかし、今日のアニソンはこれまでのアニソンとは異なる様相を呈し、「アニメを印象付けるテーマソング」でありながらもアニソンらしさから逸脱。「J-POPのトップアーティストがアニソンを歌う時代」に変革しています。オリコンのウィークリーランキングトップ10の半数以上をアニソンが占めるケースも少なくなく、「アニソンの主題歌を務めること=一流のアーティストへの登竜門」になりつつあります。

そこで今回は、昭和に誕生した日本初のシリーズアニメ作品『鉄腕アトム』以降のアニソン史の変遷を振り返るとともに、昨今特に人気を集めている楽曲を厳選して37曲ご紹介します。

アニソンの歴史〜アニメ黎明期からアニソンは神曲尽くし〜

遡ること60年、1963年に日本で初めてシリーズアニメとしてTVで放送されたのが、『鉄腕アトム』です。「空を超えて~♪」のフレーズでお馴染みのあの曲は、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。鉄腕アトム以降、アトムに続け!と言わんばかりに『ゲゲゲの鬼太郎』『巨人の星』『妖怪人間ベム』など様々なアニメの放送が開始。この時代のアニメは基本的に小学生以下の子供に向けたものが多く、主題歌も子供向けの分かりやすいテーマソングであることがほとんどでした。

こうしたアニメ主題歌に変化が訪れたのは、1972年のこと。アニソンの帝王としてお馴染み、水木一郎が歌う『マジンガーZ』の主題歌は「アニメのタイトルを連呼する」といういわゆる「アニソンらしさ」を確立させるとともに、アニソン歌手誕生のきっかけにもなりました。この頃には「アニメ=子供向け」という概念も薄れ、『宇宙戦艦ヤマト』『ルパン三世』『機動戦士ガンダム』といった中高生~大人まで楽しめるアニメが続々登場。それに伴い、当時の流行りの音楽を取り入れるなどして進化していったアニソンは歌謡曲との垣根がなくなっていきます。『キャッツ・アイ』の主題歌である「CAT’S EYE」がアニソンで初のオリコン1位を記録したことは、アニソンの歴史において非常に大きな意味を持つといえるでしょう。

平成に入ると、アニソンは多様化を極めます。現在でも根強いファンが多い『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」など “アニソン色の強いアニソン” が引き続き人気を博す一方で、著名なJ-POPアーティストによる “アニソン色の弱いアニソン” が主題歌に起用される流れも出てきます。代表的なのは『名探偵コナン』で、コナンの主題歌を務めたアーティストといえばZARD・倉木麻衣・B’zなど90年代を彩ったトップアーティストの面々。また、1クール周期でアニメの主題歌が変わる現在のアニソンの特徴は、この時代から徐々に見られるようになりました。

2000年代に突入すると声優がアニメのキャラクターを演じながら歌う「キャラソン」が誕生し、これにより声優ブームが巻き起こりました。2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱』を皮切りに、2007年には『らき☆すた』が、2009年には『けいおん!』が大きなムーブメントを生み出し、それぞれの主題歌を出演声優が歌うことがトレンドに。さまざまに紆余曲折を経たアニソンも、この頃には「アニメがヒットすればアニソンもヒットする」という流れが定番化していきます。

特に近年は、「人気アニメの主題歌にはJ-POPのトップアーティストや新進気鋭のアーティストを起用する」が一般化。「すでに漫画で高い人気を得ているものがアニメ化されることで、アニメのヒットも間違いないであろう」という流れからJ-POPのトップアーティストの新曲を人気アニメの主題歌に当てたり、レーベルがこれから売れると推す新進気鋭のアーティストをアニメの主題歌に当てたりする流れが多い傾向にあります。

2019年に『鬼滅の刃』の初代OPであるLiSAの「紅蓮華」が、オリコンで「平成最後の1位」と「令和最初の1位」を獲得。社会現象を巻き起こし、爆発的なヒットとなったことは記憶に新しいでしょう。その後もOfficial髭男dismの「ミックスナッツ(『SPY×FAMILY』OPテーマ)」やEveの「廻廻奇譚(『呪術廻戦』OPテーマ)」などアニソン界では数々の神曲が誕生。こうしてJ-POPの第一線で活躍する数々のトップアーティストがアニメの主題歌を務めるようになったことに加え、AdoやEveなど歌い手出身の新進気鋭のアーティストがアニメの主題歌を務め、新たな一流アーティストへの登竜門を叩いているのも今日のアニソンの特徴といえます。

令和のヒットチャートを賑わすアニソン代表曲37選

ここからは、実際に令和のヒットチャートを賑わせているアニソンを厳選して37曲ご紹介します。


MAN WITH A MISSION×milet - 絆ノ奇跡

人気アニメの新シリーズ、『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編が2023年4月から放送開始。全米メジャーデビューを果たし世界からも注目されているロックバンドのMAN WITH A MISSIONと、2019年にメジャーデビューして間もなく一気にブレイクしたシンガーソングライターのMiletという異色のコラボが主題歌を務めることでも注目されました。OPテーマの「絆ノ奇跡」は、和のテイストを織り交ぜながらも疾走感溢れるロックナンバーとなっており、従来のアニソンらしさも感じられる一曲と言えるでしょう。力強い歌声で「我が命 果てようとも 繋げていくよ」と未来への希望を歌い上げる本楽曲に元気づけられた人も多いはず。

milet×MAN WITH A MISSION - コイコガレ

同じく『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編の、milet×MAN WITH A MISSIONによるEDテーマ「コイコガレ」。OPテーマの印象とは異なり、力強くも切なさを含んだ美しいメロディが印象的です。本楽曲は、これまでTVアニメ『鬼滅の刃』のED主題歌を手掛けてきた梶浦由記が作詞・作曲・プロデュースを担当しており、編曲はMAN WITH A MISSIONと共同で行われました。「優しいひとたちを全部守りたいな」というフレーズには、大切な人を守りたいという登場人物の一途で真っ直ぐな心がストレートに表現されています。

millennium parade×椎名林檎 - W●RK

King Gnuのメンバー・常田大希が主宰する音楽プロジェクトmillennium paradeと椎名林檎が初のコラボを披露!トップアーティスト同士によるコラボとあり、一躍話題になりました。「W●RK」は、2023年4月に放送開始したTVアニメ『地獄楽』のOPテーマであり、両者の強烈な個性がお互いを上手く引き立てながら混沌とした作品の世界観を艶やかに表現しています。パワフルなサウンドにのせて展開されるマイクリレーには、思わず圧倒されるほどの迫力が。ファンの間では、MVの中で椎名林檎の楽曲へのオマージュが随所に登場することでも話題になりました。

YOASOBI - アイドル

累計部数は700万部を突破し、「次にくるマンガ大賞 2021」でコミックス部門1位を受賞した『【推しの子】』が2023年4月にTVアニメ化。原作者の赤坂アカがYOASOBIのために書き下ろしたOPテーマ「アイドル」は、明るくキャッチーなメロディでポップな印象ながらも、主人公の辛さや息苦しさといったネガティブな要素を併せ持つ、アニソンらしさを逸脱したアニソンと言えるでしょう。MVの再生回数が公開からわずか1か月で1億回を突破するほど異例のヒットを飛ばしており、ネットユーザーの間では同曲と音程が似ている別曲を組み合わせた動画をアップすることも流行りました。

10-FEET – 第ゼロ感

10-FEETの「第ゼロ感」は、2022年12月3日に公開されてわずか2か月後に興行収入100億円を突破した映画『THE FIRST SLAM DUNK』のED主題歌。監督・脚本も手掛けた原作者の井上雄彦とともに2年の年月を費やして製作された楽曲で、熱くパワフルなロックチューンとなっています。本楽曲は映画の公開に先立って配信されたため、「Dribble」「Pass」「Penetrator」などのバスケ用語を散りばめることで、作品の内容に触れすぎずに世界観が垣間見えるようにした一曲。高揚感のあるメロディで、気分を上げたい時に聴くのにもぴったりです。

RADWIMPS - すずめ

公開からわずか3日で興行収入18億円超えとなった、新海誠監督の最新映画『すずめの戸締まり』。RADWIMPSが同監督作品の主題歌を務めるのは『君の名は。』『天気の子』に引き続き3度目であり、「すずめ」は歌手の十明によるフルコーラスと美しい旋律のハーモニーが心に響く楽曲。本作は東日本大震災をテーマにした作品であり、十明の切なさと力強さが共存する澄んだ歌声で歌い上げる本楽曲からは、悲しくも前を向いていこうとする主人公の想いが感じられるでしょう。「君の中にある 赤と青き線 それらが結ばれるのは 心の臓」と独特な言い回しの歌詞にも注目してみてください。

King Gnu – 一途

シリーズ累計発行部数が7,000万部を突破した『呪術廻戦』の初の映画化作品である『劇場版 呪術廻戦 0』。King Gnuにとって初のアニメ映画のタイアップ曲となった主題歌の「一途」は、配信されるや瞬く間に再生回数を伸ばし、オリコン年間ランキング2022の「合算シングルランキング」で1位を獲得するなど、その年の音楽チャート史を賑わせました。イントロから疾走感のあるギターサウンドで展開される本楽曲は、力強く高速なロックチューン。「愛が体を喰いちぎった」と狂気スレスレのロマンチシズムを歌った破滅的なラブソングです。

スピッツ - 美しい鰭

2023年4月14日に公開してから早くも観客動員数は約783万人を記録し、興行収入が100億円を突破するなど、劇場版シリーズで歴代NO.1の成績を記録した大ヒット映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』。主題歌の「美しい鰭」は、ユニークな言い回しとやさしいメロディが印象的なスピッツらしさに溢れた楽曲です。作品のキャラクターに寄り添った内容もメロディにマッチしており、エンドロールでこの曲が流れると涙を流す観客も多いのだとか。SNSでは、サビの「抗おうか 美しい鰭で」の高音ボイスの美しさに感動したと賞賛の声が多く寄せられました。オリコンのアニメシングル週間1位をはじめ、数々のチャートを記録しています。

Creepy Nuts – 堕天

日本の三連覇のラッパー「R-指定」と、世界一のDJ「DJ 松永」によるHIP HOPユニットCreepy Nutの2枚目のシングルとして、2022年9月にリリースされた「堕天」。TVアニメ『よふかしのうた』のOPテーマであり、人が抗えず何かにハマっていくときの感情を遊び心たっぷりのリリックで表現した一曲です。疾走するようなトラックとリズミカルなテンポが心地よく耳に響き、巧みな韻踏みも相まって聴けば聴くほどクセになってしまいそう。MVで披露された二人の初のワイヤーアクションにも要注目です。

yama – slash

「ガンダムシリーズ」の最新作TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のSeason2が2023年4月より放送開始。主題歌を務めるのが令和の時代を象徴する新世代シンガーのyamaで、OPテーマの「slash」はこれまでのyamaのイメージを覆すような壮大で重厚感あるサウンドが印象的。クールな歌声で「らしくない感情のお前が嫌いだ」と感情をむき出しにして歌い上げる本楽曲は作品の世界観に見事にマッチしており、SNSでは幅広い年代のガンダムファンから賞賛のコメントが寄せられています。

Uru - 紙一重

2018年1月より少年ジャンプ+で連載がスタートし、美麗なタッチと過酷な状況下での力強い人間ドラマで人気を呼んだ『地獄楽』。2023年4月に放送開始されたTVアニメのEDテーマを務めたのがシンガーソングライターのUruで、「紙一重」では原作に寄り添いながら大切な人を想い焦がれる心情が切実に表現されています。他者の心を完全には理解できないことを「心は紙一重」と表現するなど、切ない歌詞と儚く悲壮感漂うメロディが美しくもあるバラードです。

Novelbright - Cantabile

YouTubeの総再生回数は2億5,000万回を突破し、第62回日本レコード大賞では新人賞を受賞するなど、大躍進を見せる5人組ロックバンドのNovelbrightが2023年4月にリリースしたニューシングル「Cantabile」。NHK Eテレアニメ『青のオーケストラ』のOPテーマであり、“支えられることで暗闇から抜け出し光を見つける”ことをテーマにした壮大な一曲です。ストリングスも入った美しいメロディラインが印象的で、「君と歌うメロディなら 後世でも響き渡る歌になる気がするんだよ」と、寄り添ってくれる誰かがいる幸せを透き通るような歌声で歌い上げています。

須田景凪 - メロウ

「マンガ大賞2020」で3位を受賞し、TVアニメが放送されるや早速SNSのトレンド入りを果たした『スキップとローファー』。シンガーソングライターの須田景凪によって書き下ろされたOPテーマの「メロウ」では、原作から感じられる「キラキラとした部分」が真っ直ぐに表現されています。疾走感溢れるサウンドにのせた柔らかな歌声が耳に心地良く、「青い温度の正体が 恋だとしたら」とストレートな歌詞が心に刺さる青春ソングです。

KANA-BOON - ぐらでーしょん feat. 北澤ゆうほ

累計発行部数200万部を記録し、2021年8月の「次に来るマンガ大賞」で4位を受賞するなど近年注目されている『山田くんとLv999の恋をする』が2023年4月にTVアニメ化。そのOPテーマを務めるのがKANA-BOONで、ロックバンドthe peggiesの北澤ゆうほをゲストボーカルに迎えた本楽曲は、男女の距離感をグラデーションにたとえたポップで明るいナンバーとなっています。近付いてはすれ違う微妙な距離感と、恋が成就する前の胸の高鳴りを表現した歌詞に思わずキュンとしてしまいます。

オーイシマサヨシ – 死んだ!

TVアニメ『勇者が死んだ!』のOP主題歌「死んだ!」は、アニメソングシンガーとして活動するオーイシマサヨシが原作の世界観を巧みに表現した楽曲。クセになるリズム感のメロディでインパクト抜群の本楽曲は、歌詞の中で何度も登場する「死んだ」という言葉の強烈さとは裏腹に、「『君』を表現するのは君自身だ」と背中を押すような歌詞に勇気づけられる一曲です。MVで繰り広げられる“5人のオーイシマサヨシ”によるキレのあるダンスと、所々に散りばめられたゾンビオーイシのアニメーションも要チェックです。

ナナヲアカリ - 奇縁ロマンス

“あかりん”の愛称で親しまれるナナヲアカリの6thシングル「奇縁ロマンス」。2023年4月に放送開始したTVアニメ『江戸前エルフ』のOPテーマであり、作品の世界観を反映させた和のテイストも感じられるキャッチーなメロディが印象的です。ノスタルジックな印象がありながらも、「運命の赤い糸 僕と希望 繋がっていよう」と“人との縁”をテーマにした前向きな歌詞が絶妙にマッチしており、中毒性の高い一曲。素性を隠しながら現役大学生シンガーソングライターとして活動する“和ぬか”が作詞・作曲を担当したことでも話題に。

米津玄師 - KICK BACK

コミックスの累計発行部数2,000万部以上を誇る『チェンソーマン』が2022年アニメ放映を開始。その主題歌を務めるのが米津玄師です。本楽曲は米津本人とともにKing Gnuのギター・ボーカル常田大希が編曲に参加。類い稀な音楽センスと遊び心たっぷりに紡がれる言葉選びが魅力で、本楽曲では特に “「止まない雨はない」より その傘をくれよ”という歌詞の秀逸さが話題を呼びました。また、モーニング娘。の2002年のヒット曲「そうだ!We’re ALIVE」をサンプリングしているのも印象的。

BUMP OF CHICKEN – SOUVENIR

「Yahoo!検索大賞2022」「TikTok流行語大賞2022」「Z世代トレンドランキング2022」など、2022年様々なランキングを総なめにした『SPY×FAMILY』。2022年10月に放送された第2クールのOPテーマを務めたのが、長年日本のロックシーンを牽引するBUMP OF CHICKENです。落ち着きのある雰囲気を纏いながら時に疾走感のある展開を用い、スルスルと耳に心地良く入ってくるリズムは、聞けば聞くほどハマること請け合いでしょう。サビの「歩いて歩いて いつの間にか急いで」には彼らのリスナーへの想いが込められているだけでなく、主人公たちの心情も表れているよう。オリコンではシングルランキングで初登場1位を獲得しています。

yama - 色彩

同じく『SPY×FAMILY』から、こちらは第2クールED主題歌の「色彩」。TikTokをきっかけにZ世代を中心に人気に火が付いた新世代シンガーのyama約2年ぶりの新曲です。自身初のオリジナル楽曲であり代表曲の「春を告げる」以来の新曲となる本楽曲の作詞・作曲を手掛けたのは新進気鋭のアーティスト “くじら” で、これまでも抜群の相性を見せてきた2人が再びタッグを組むとあって話題になりました。アニメの世界観を表現しつつ、アップテンポなサウンドとyamaの軽やかな歌い回しがマッチした一曲です。

Official髭男dism - ミックスナッツ

続いても『SPY×FAMILY』から。同作のOPテーマとして2022年4月にリリースされたOfficial髭男dismの「ミックスナッツ」は、「Billboard Japan Hot 100」で自身初の総合首位を獲得したほか、「2022 年間 USEN HIT J-POP ランキング」で1位に選出された楽曲。本楽曲のタイトルはメインキャラクターの一人・アーニャの好物であるピーナッツから着想を得たのだそう。ファンの間では仮初めの家族である3人をナッツ(木の実)ではないピーナッツが混じった「ミックスナッツ」に例えたこと、喜びや幸せで胸がいっぱいになったさまを「胃がもたれてゆく」というネガティブな表現を用いて比喩したことなど、髭男らしさが溢れた多様な仕掛けが話題を呼びました。

Ado - 新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)

「新時代はこの未来だ」で力強く始まるフレーズが印象的なAdoの「新時代」。本作は2022年8月に公開された『ONE PIECE FILM RED』の主題歌であり、Adoは劇中のキャラクター・ウタとして歌唱を担当しました。第73回NHK紅白歌合戦では、初のアニメキャラの出場で話題になったことも記憶に新しいでしょう。作詞・作曲を手掛けるのは、日本のエレクトロシーンの立役者として知られる中田ヤスタカ。テクノポップのニュアンスを含んだ疾走感のあるサウンドと、「さあ行くよ new world」と背中を押してくれるような歌詞に元気づけられる一曲です。

結束バンド - ギターと孤独と蒼い惑星

結束バンドは、漫画家・はまじあき原作のTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に登場する4人組ガールズバンド。1stアルバム「結束バンド」は2022年12月の配信直後、瞬く間に「オリコンチャート1位」「Billboard JAPAN チャート1位」にランクインしました。アルバム収録曲の「ギターと孤独と蒼い惑星」は第5話、第8話の劇中曲であり、ファンからの人気も高い一曲です。邦楽ロックらしいテンポのよいサウンドに、「一瞬でもいいから ああ 聞いて 聴けよ」というエモーショナルな歌詞が載る、「キャラソン」としてアニソンらしさを持ちながらもアニソンの領域を逸脱した秀逸な一曲です。

Aimer - 残響散歌

2019年にTVアニメ化され、爆発的な人気で社会現象にもなった『鬼滅の刃』。初代OPテーマのLiSAの紅蓮華はアニメを観たことがなくても一度は耳にしたことがあるでしょう。2021年12月に放送開始された遊郭編の主題歌を務めたのがAimerで、「残響散歌」はBillboard JAPAN2022年の年間総合チャートで見事1位を獲得。本楽曲で2022年に自身初の紅白歌合戦出場を果たしたことも記憶に新しいでしょう。遊郭編は、これまでとは打って変わり煌びやかな夜の街が舞台に。Aimerの力強い歌声と疾走感のあるサウンド、遊郭をイメージさせるワードが散りばめられた歌詞が作品のイメージにぴったりな一曲です。

ano - ちゅ、多様性。

全12話のED主題歌を様々なアーティストが週替わりで担当することでも注目を集めたTVアニメ『チェンソーマン』。anoの「ちゅ、多様性」は、第7話のED主題歌です。本作はanoと相対性理論の真部脩一がアニメのために書き下ろした楽曲で、作中の「ゲロチュー」シーンをテーマにしたことでも話題に。「ゲロチュー!」に寄せて「Get get get on! Get get get on! Get on chu!」と歌うなど、ポップで可愛らしい曲調のなかにも巧みな言葉遊びを用い作品の世界観を見事に表現。中毒性のあるメロディと特徴的なサビのダンスが若い世代を中心に注目を集め、TikTokでは多くの踊ってみた動画がアップされました。

ReoNa – Alive

大人気スマホゲーム「アークナイツ」が、2022年10月よりアークナイツ【黎明前奏 / PRELUDE TO DAWN】』としてTVアニメ化。主題歌を務めるのは“絶望系アニソンシンガー”として知られるReoNaで、彼女はOPテーマの「Alive」の作詞にも携わっています。自身もゲームファンであることを公言しており、歌詞の言葉一つ一つが絶望や死と隣り合わせの世界に生きる作品の世界観に寄り添っていて心に響くと絶賛の声が多く挙がりました。特に「理不尽と戦って」という歌詞に勇気づけられた人は多いことでしょう。

TOOBOE - 錠剤

2022年11月にリリースされたTOOBOEの「錠剤」は、毎回EDが入れ替わるTVアニメ『チェンソーマン』の第4話EDテーマです。原作の持つ激しさや勢いを盛り込んだという本作は冒頭からいきなり叫び声で始まり、曲の中で何度もシャウトを多用。エネルギッシュなサウンドや、作品のテーマである “支配からの開放” を歌詞に落とし込んでいることで多くの原作ファンの心を掴みました。また、本作のMVが年齢規制をかけての公開となったことでも話題に。アニメのノンクレジットEDとMVとでまた違った印象を受けるのも本楽曲の特徴といえます。

キタニタツヤ - スカー

2001年に連載開始し、コミックスの世界累計発行部数が1億3,000万部を突破した『BLEACH』。20周年プロジェクトの一環として2022年10月にスタートしたTVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』のOPテーマが、キタニタツヤの「スカー」です。高揚感のあるリズミカルなギターサウンドと、困難に立ち向かいながらも前に進もうとする主人公の気持ちを表した歌詞に、ファンからは少年漫画アニメの王道らしさを感じられるという声も。「向かい合ったあの恐怖も刻んで共にまた歩き出す」という歌詞に勇気づけられる一曲です。

LiSA - 炎

日本国内で404.3億円の興行収入を記録する大ヒット作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌である、LiSAの「炎(ほむら)」。ストリーミング累計再生回数は3億回に達し、デジタル・ダウンロードではミリオンセールス(100万DL)を達成したほか、「第62回日本レコード大賞」で大賞を受賞するなど、2020年の音楽史に燦然とその名を残した名曲です。冒頭から「さよなら ありがとう」で始まる本作は、大切な仲間との別れを綴った壮大なバラード。エンドロールでこの曲が流れると思わず涙する人が続出し、今でも聴いただけで泣きそうになるという人も少なくないのだそう。切なくも勇気が漲るエモーショナルな一曲です。

MAISONdes - トウキョウ・シャンディ・ランデヴ

「だっちゃ!」のフレーズでおなじみ、“ラムちゃん” が登場する『うる星やつら』が2022年版として再びTVアニメ化! “どこかにある六畳半アパート”という設定のもと、歌い手とクリエイターを繋ぎ合わせる音楽プロジェクト・MAISONdesが主題歌を務めることでも話題を集めました。EDテーマの「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」は、バーチャルシンガーの花譜と「フォニイ」などのヒット曲を生み出したツミキの2人が担当し、昭和の懐かしさと令和の新しさが融合した独特な歌い回しとポップなサウンドが中毒性抜群な一曲です。

Vaundy - CHAINSAW BLOOD

22歳という若さで、作詞・作曲のみならず映像プロデュースなど幅広い分野で躍動するVaundyの「CHAINSAW BLOOD」。TVアニメ『チェンソーマン』の記念すべき第1話EDテーマとして、2022年10月にリリースされました。イントロから飛ばすギターサウンドや激しい戦闘シーンを思い起こさせる歌詞が作品の世界観と見事にマッチしていてかっこいいと、多くのリスナーの心を掴んだ一曲。また、本作のジャケット写真をコラージュ・アーティストの河村康輔がデザインしたことでも話題になりました。

UNISON SQUARE GARDEN - カオスが極まる

2004年に結成し、「ユニゾン」の愛称で親しまれる3人組ロックバンドのUNISON SQUARE GARDEN。2022年10月にリリースした「カオスが極まる」は、TVアニメ『ブルーロック』のOPテーマとして書き下ろしされた一曲。イントロから独創性の高いギターフレーズが炸裂し、まさにタイトル通りカオスを具現化したような一曲。日本代表の出場権をかけて戦うデスゲームの世界観が、ユニゾンなりのカオスな解釈で描かれた楽曲です。

SennaRin - 最果て

YouTubeのカバー動画から人気に火が付き、2022年にはEP「Dignified」でメジャーデビューを果たしたSennaRinが同年11月に待望の1stシングル「最果て」をリリース!『BLEACH 千年血戦篇』のEDテーマに起用された本作は、前回に引き続き作曲家・澤野弘之がプロデュースしていることでも話題を呼びました。彼女の魅力である特徴的な低音と透明感のあるハスキーボイスを最大限に活かし、ダークな雰囲気をまとったスタイリッシュな曲調の一曲です。

SUPER BEAVER - ひたむき

2005年結成の4人組ロックバンドSUPER BEAVER。数々のTVアニメ主題歌やCMソングを手掛け年間100本近いライブ活動を行う彼らは、いま日本で最も注目を集めるグループの1つです。2022年11月にリリースされたニューシングル「ひたむき」は、コミックスの世界累計発行部数が6,500万部を突破した大人気コミック『僕のヒーローアカデミア』のTVアニメ第6期のOPテーマに起用されました。ひたむきに音楽活動を続けてきた彼らが歌う「ひたむきさが 希望を繋いでいく」という力強いフレーズには、大きな説得力があって励まされるとSNSには絶賛する声が多く見受けられます。

前島麻由 – story

Twitterの投稿からスタートし、累計発行部数が150万部を突破した話題の漫画『異世界おじさん』が、2022年7月にTVアニメ化。OPテーマの「story」は、前島麻由4枚目のシングルです。音楽ユニット・MYTH & ROIDの初代ボーカリストを務めたこともある彼女は、iTunes総合ランキングで1位を獲得するなど、国内外から高い評価を受ける力強い歌声の持ち主。サビの「無理だと決めつけちゃ最初から負けなんだ」という歌詞には、あらゆる負の感情もポジティブに歌に遺すという彼女の信念が表れており、多くの人に勇気を与えたことでしょう。

菅田将暉 - 虹

2020年11月に公開された映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌を務めたのが、俳優や歌手として活躍する菅田将暉。2年3か月ぶりのCDリリースとなる「虹」は配信がスタートするとBillboard JAPANやオリコンランキングで週間2位を記録し、ストリーミング累計再生回数は1億回を突破。大切な人への想いを男性目線で描く本作はウエディングソングとしても人気で、特に式のエンドロールでこの曲を使う人が多いのだとか。「一生そばにいるから 一生そばにいて」と歌いあげる本楽曲は、飾らないストレートな言葉だからこそまっすぐに想いが伝わり心に響くと高い支持を集めています。

ヒグチアイ - 悪魔の子

「悪魔の子」は、世界的ヒット作『進撃の巨人』のTVアニメThe Final Season Part 2のEDテーマに起用され、2022年1月に配信がスタート。その後瞬く間にストリーミング再生回数を伸ばし、Apple Music J-POPランキングでは100か国以上で1位を、iTunes Store J-POPランキングでは40か国で1位を獲得するなど世界中のチャートを席巻しました。低音ボイスが持ち味のシンガーソングライター・ヒグチアイの歌声と、シリアスかつダイナミックな曲調が、主人公の苦しくて切ない心情をリアルに表しているかのような一曲は、「正義の裏 犠牲の中 心には悪魔の子」で終わる歌詞の秀逸さも話題となりました。

04 Limited Sazabys – Keep going

コミックスの累計発行部数が2,800万部を突破したスポーツ青春漫画『弱虫ペダル』。TVアニメ第5期の『弱虫ペダル LIMIT BREAK』は、2022年10月よりNHKにて地上波同時放送が開始となりました。主題歌を務めるのは「フォーリミ」の愛称で親しまれる4人組ロックバンドの04 Limited Sazabysで、OPテーマの「Keep going」は彼らの4thアルバム「Harvest」の先行リード曲でもあります。はじめから終わりまで疾走感溢れる明るいメロディと、前へ進もうとするがむしゃらな様子を描いた歌詞に勇気付けられる応援ソングです。

まとめ

今回は、昭和~令和のアニソンの変遷を振り返るとともに、昨今特に人気の楽曲を厳選してご紹介しましたが、いかがでしたか。

アニメ創成期ともいえる昭和はいわゆる「アニソンらしいアニソン」という曲がほとんどでしたが、平成中期から後期にかけてアニソンは多様化し、令和には時代を映し出す数々の神曲を生み出すジャンルにまで成長しました。アニソンの変遷は、たとえば1999年から20年以上も続き放送されている『ONE PIECE』を例に見ると顕著に現れています。初代OPとして知られるきただにひろし「ウィーアー!」は、アニメ本編の内容に沿った歌詞で近年の同主題歌に比べるとアニソンらしい楽曲ですが、2022年のAdoの新時代と比べるとその違いは歴然。本記事をきっかけに、ぜひ懐かしのあの曲から今流行りの神曲まで、アニソンの世界に酔いしれてみてはいかがでしょうか。

(KKBOXライター:KKBOX編集室)