女優の松本穂香が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、4日に放送される『私は何者なのか… ~すべての記憶を失った男~』。記憶をなくした男性が、“本当の自分”を探す日々を追った作品だ。

あまりに衝撃的な境遇に、その心中は「想像がつかない」という松本。だが、彼が過去を探しながら前に進もうとする姿に、「今を誠実に生きていこうという気持ち」を強くしたと語る――。

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した松本穂香

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した松本穂香

■最初は「本当なのかな?」と思ったが…

今回登場するのは、「自分に関する、すべての記憶がない」という男性。2019年12月、横浜市西区役所に保護されたが、名前が分からないままでは生活支援も受けられないため、「西六男」という仮の名前が付けられた。

医師による診断は、心に受けた大きなショックから自らを守るため、それにまつわる記憶を全て忘れてしまうという「解離性健忘症」。過去の自分をすべて消したくなるほどのショックとは何だったのか。家族はいるのか、探してくれている人はいるのか、そして自分は何者なのか…。“本当の自分”を取り戻すための“自分探しの旅”に密着する。

この内容を聞いた際、「最初はドラマの設定みたいだと思って、『本当なのかな?』と、ちょっと斜めな気持ちもありました」と、懐疑的な部分もあったという松本。しかし、「周りの人たちとの関わり方を見ていると、西さんがすごく信頼できる方なんだろうなと感じました」と、素直に受け入れるようになったという。

そんな西さんの姿に、「孤独になって、誰からも連絡が来なくても、誰かを傷つけたくないという考えでいられて、すごく強い方なんだと思いました。何だか、不思議な感情になりました」と、率直な心境を吐露。

また、本当の自分を追い求めるという行動については、「相当なショックがないと、あのように記憶がなくなるということにはならないわけですから、自分には想像がつかないです」とした上で、自身が同じような状況に置かれたら、「やっぱり過去はやり直せないから、今を誠実に生きていこうという気持ちになるのではないでしょうか」と話す。

  • 横浜駅を歩く西六男さん (C)フジテレビ

■寄り添ってくれる人たちとの出会い「素敵な方ばかり」

ナレーションでは、「記憶よ、戻れ。」と、日記につづられた西さんの気持ちを読み上げる場面もあり、「この場所(=ナレーションブース)で出せるものを出したいという気持ちでした」と振り返るが、全体としては、「気持ちが入り込みすぎるのも違うかもしれないと思って、シーンごとの絶妙な音楽も聴きながら、俯瞰(ふかん)した立場であることを意識しました」と明かした。

記憶を失うという不幸に見舞われながらも、衰弱しているところをボランティアに発見され、保護され、施設で寄り添ってくれる人たちに出会えたことには、「私が最初に感じたように『本当に?』と思う人もいると思うのですが、周りにいらっしゃるのがとても素敵な方ばかりですよね」と、ある種の幸運に恵まれた面も感じたそう。

そして、記憶を失った要因である「解離性健忘症」が、心に受けた大きなショックから自らを守るためだという人間の構造について、「心が完全に壊れないように、脳がシャットアウトしてくれるというのは、すごいことですよね。“心と体はつながっている”とよく言われますが、私も普段の生活でそう感じることがあるので、本当にその通りだと思います」と驚いた。