約2年半ぶりの再始動となる劇団朱雀の新作公演『祭宴』が19日、東京・かめありリリオホールで開幕。前日18日に同所で公開ゲネプロが行われた。
東京公演の会場となったかめありリリオホールのステージ上方には、劇団の看板や提灯のほかに、今回のタイトルを象徴するように“御祭禮”の提灯も。
三部構成の公演となり、まず幕開けの一部は二代目座長・早乙女太一による女形の舞をメインにした舞踊ショー。太一の女形と言えば……という彼の代表曲とも言えそうな「胡蝶之夢」をはじめ、和太鼓との共演・実演など新鮮な取り組みもある。また、曲間のわずかな時間でガラリといでたちが変わって涼やかに登場。舞台上でその早替えの手順がチラリと目撃できる場面もあり、衣裳スタッフたちの手際の良さ、曲のリズムやきっかけに合わせながら着替える仕草も美しい本人の所作に、目の前でどんどん仕上がっていくスピード感も相まって、良き見世物ともなっていた。
舞台上でボリュームあるゴージャスな衣裳を着込むと、そこから始まるのは艶やかな花魁道中。その妖しさ、圧倒的な美しさには会場のあちこちからため息が漏れていた。
休憩を挟んだ二部は日替わり芝居。九本の演目が日替わりで上演されることになっているが、ゲネプロで上演されたのは劇団☆新感線の座付き作家である中島かずき氏が今回の公演のために書き下ろした新作『桜吹雪八百八町』。これは太一版“遠山の金さん”。物語は、両国橋のたもとで咲き誇る一本桜の古木の下で展開する。
太一演じる遊び人の金さんの周囲で起こる不穏な事件。その真相を目撃してしまう“桜の精”を早乙女友貴が演じ、この2人が絡む場面はイキイキとチャーミングで作家の2人への愛、劇団への愛をも感じる描きっぷり。聴き馴染みのあるテーマ曲が流れるほか、“金さん”以外にもさまざまなモチーフへのオマージュを匂わせつつ、ダイナミックな殺陣やお白洲での名裁きの場面、そしていかにも中島かずき節と言える痛快な“決め台詞”も飛び出す、見せ場満載の人情話かつお江戸ファンタジーとなっている。
二度目の休憩(このタイミングで二代目座長や劇団員によるお馴染みの物販コーナーがある)が終わると、三部は出演者全員による舞踊ショー。太一の「待たしたな!」には「待ってたよ!」でコール&レスポンスができ、全力を尽くして踊りまくる“騒ぎ屋”メンバーたちとの一体感を味わいつつ、一曲目から一気にお祭り騒ぎの時間帯に突入。ここでも早乙女兄弟の高速超絶技巧の殺陣と身体能力は、その持てるポテンシャルを惜しみなく披露してくれる。ほかにもコミカルなパートあり、セクシー度がアップしたダンスもありと盛りだくさん。
初代座長の父・葵陽之介の貫禄、母・鈴花奈々の柔らかな存在感、早乙女家以外では唯一の劇団員・岩崎祐也のアツい全力加減、レギュラー感のあるゲスト・富岡晃一郎は笑いもMCも頼れるポジションを務め、今回二代目座長と共にダンスの振付を担った関根アヤノの貢献度の高さも感じさせた。
なお、東京公演は5月19日~31日にかめありリリオホール、大阪公演は6月7日~11日にCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、福岡公演は6月16日~18日にキャナルシティ劇場にて、沖縄公演は6月24日~25日にアイム・ユニバースてだこホール 大ホールにて上演。
撮影:橋本雅司