会員間の連携で生まれる新たな技術

SAcは「日本の農業を北海道から牽引(けんいん)し、農業を最も夢のあるビジネスへの変革を支援する」ことを目的として、2018年10月に始動。北海道で農業資材卸売業などを展開するサングリン太陽園の北濵宏一(きたはま・こういち)社長が中心となり、道内におけるスマート農業の普及促進に力を注いできた。

1989年、北海道で初めて産業用無人ヘリコプターを導入し、近年ではドローン事業にも進出するなど、「北海道農業の空のパイオニア」として地元農業を支えてきた同社だが、数年前はスマート農業現場実装に多くの課題があった、と白川さんは振り返る。「農業現場で実装され、浸透していくには、生産者と専門家・技術情報を正しく繋げる必要があります。技術を有する企業、研究機関と生産者によるネットワークを構築し、連携を加速すべく共同体は結成されました」

SAc設立の背景を話す白川さん

スマート農業や先進技術の開発、普及に向けて、SAcではこれまで、大きく分けて下記四つの施策を講じてきた。

新技術の普及推進

イベント活動

情報発信

教育

まずは、新技術の普及促進。「平素から、新しい技術の検証などがSAc会員同士で進められています。例えば、これまで難しいとされてきた、農薬を必要とする箇所へのドローンによるピンポイント散布などが挙げられます。会員間の連携によって、技術的には可能という所までこぎつけています」(白川さん)。

また、SAcでは生産者ら一般会員に加盟団体の製品やサービスのモニターになってもらい、その技術で何ができるのか、使用してどうだったかなどの評価をフィードバックしてもらうなど、現場実装への支援も行っている。
会員企業、生産者間の相互連携を加速することを目的に、イベント活動にも力を入れる。象徴的なのが、生産者や企業、団体が一堂に集い、農業の未来を語り合うイベント「北海道スマート農業SUMMIT(サミット)」だ。2019年の開催以降、会員企業を始め、多くの生産者らが最新の農業技術に触れながら関わりを深めてきた。今年は国内最大級の農業機械展示会「国際農業機械展in帯広」にも出展する。

WEBサイトやSNSを活用した農業情報の発信も行う。SAcでは農業情報サイト「SAcWEB」を運営し、会員企業の取り組み事例や道内生産者への耳寄り情報などを幅広く発信している。

最後に、教育。法人会員である北海道ハイテクノロジー専門学校では、2021年に道内で初めてスマート農業を学ぶ「AIスマートアグリ学科」を新設。SAcに加盟している会員企業や研究機関から最新のテクノロジーを実践的に学べるのが特徴だ。

2022年には、サングリン太陽園と酪農学園大学が道内初となる産学連携によるドローンの操縦資格を取得するための教習コースを創設。単にドローンを操縦できるだけでなく、持続可能な農業の実現に貢献する空間情報を活用できる人材の育成を目指している。

「スマート農業の普及推進のみならず、それを扱う次世代の人材育成にも注力しています。特にAIスマートアグリ学科ではスマート農業に触れ、体験することで、スマート農業への理解を深めてもらい、主体性、実行力を養っています」(白川さん)

農家の目線に立った取り組みにも注力

企業単体では成し得なかった技術開発、現場実装などが会員同士による連携によって実を結びつつある中、白川さんは今年度の方針について「引き続き会員間とのマッチングを促進するとともに、農家さんの目線に立った取り組みにも注力したいと考えています」と話す。

特に力を入れていきたいと話すのが、消費者へ向けた情報発信だ。白川さんは「これまであまり知られることのなかった生産物が育つ過程や、農家さんが苦労を乗り越えて作物を生産するストーリーを広く伝えていけたら。農業のことをより多くの方々に知ってほしいですね」と展望を語る。将来的には消費者向けセミナーやイベントなどを催し、農業現場の実態を伝えていくという。

「農業は“永遠に不滅産業”だと思っています。今後も熱い思いを持った会員企業とともに、農家さんと企業、消費者とをつないでいきたい」と白川さん。「SAcは、北海道を活動の起点に、未来へ向かって持続可能な農業の発展を目指して、ともに活動していく企業、生産者をまだまだ募集中です。『SAcWEB』にて活動内容や会の規約等を公開していますので、入会にご興味ありましたら是非ご確認ください」と話している。