「懲りずに」は、「これに懲りずに」などの形でよく使われるフレーズです。使い方を間違えると失礼にあたるため、注意が必要です。
本記事では「懲りずに」の詳しい意味、意思表明や激励、依頼などシーンごとの使い方と例文を紹介します。謝罪や目上の人に使用できるかや、別の言い方、英語表現もまとめました。
「懲りずに」の意味とは
「懲りる(こりる)」は、「失敗を経験したり、痛い目を見たりしたことにより、もう同じことは繰り返さないと強く思うこと」を意味します。
「懲りずに(こりずに)」は「懲りる」の否定表現であり「失敗したり痛い目を見たりしたにも関わらず、同じことを繰り返す様子」を表すフレーズです。
大きく分けると、ポジティブな意味として「再挑戦するとき」に使用される場合と、ネガティブな意味として「過ちを繰り返すとき」に使用される場合があります。
ポジティブな意味の「懲りずに」
「懲りずに」は、「諦めずに再挑戦する」「失敗にくじけない」などのポジティブな文脈で使われることがあります。
この場合、「今回は失敗したが、次こそ成功させるためにもう一度やろう」とする姿勢を伝えます。
「今回は失敗してしまいましたが、これに懲りずにまた次回もチャレンジします」といった形で使用します。
ネガティブな意味の「懲りずに」
「懲りずに」には、ネガティブな意味を伝える側面もあります。
「失敗を失敗だと思わないために、また同じ過ちを繰り返してしまう」「失敗を改める姿勢が見られない」などの表現として使われ、行為を繰り返す相手に対して、否定的な態度を示します。
「家族に愛想を尽かされたというのに、彼は懲りずにまた賭け事に手を出しているようだ」といった形で使用します。
「懲りずに」の使い方と例文
「懲りずに」は前述のように、使い方で意味やニュアンスが変わる言葉です。そこで、ポジティブな意味の「懲りずに」について、どのような状況で使う言葉なのかを、具体的な例文と併せて解説します。
意思表明や激励
「懲りずに」は、失敗にくじけることなくまた挑戦する意思を示したり、自分と同等もしくは目下の人に対して、諦めないようにと激励したりする場合に使います。
【例文】
・初めての経験ということもあり残念な結果となってしまいましたが、これに懲りずに次回も挑戦したいです。
・彼女はオーディションに何度も落ちているが、懲りずに挑戦し続けている。
・今回は予定が合わず残念です。
また懲りずにお誘いしますので、そのときはよろしくお願いします。
・今回は思い通りにいかなかったみたいだが、君の頑張りは見ていたよ。
これに懲りずに来年もよろしく頼むよ。
依頼や挨拶
「懲りる」とは、失敗や痛手を負ったことに対して二度と経験したくないと思う気持ちを表します。
依頼や挨拶で使用する場合の「懲りずに」には、「もう二度としたくないだろうけど、そうは言わずにお願いします」というニュアンスが含まれます。
そのため、目上の人や謝罪に最適な表現とはいえません。親しい関係の相手に対して、フランクな場でのみ使うのがいいでしょう。
【例文】
・本日のサイクリングはいかがでしたか。
筋肉痛になる方もいるかもしれませんが、これに懲りずにぜひまた参加してくださいね。
ビジネスで「懲りずに」を使うときの注意点
先ほども少し触れましたが、特にビジネスシーンにおいて、「懲りずに」を目上の相手に対して使うことはおすすめできません。
「懲りずに」を相手の行為に対して使用する場合、相手の失敗を指摘する形になり、たとえ敬語表現を付け加えたとしても、目上の人に使用するのは失礼になるためです。
また、謝罪に使用することも避けましょう。「懲りずに」を謝罪文に使用することで、自分が犯した失態を深刻に捉えていないように聞こえる他、相手に非があるように聞こえたり、上から目線な印象を与えたりする可能性があるためです。
例えば以下のような使い方は、失礼と捉えられる可能性がありますので注意しましょう。
【間違った例文】
・今回は残念な結果となりましたが、これに懲りずにこれからもご活躍なさることを祈念しております。
・今回は私のミスによりご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございませんでした。
これに懲りずに、引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
・この度は長時間お待たせしてしまい失礼いたしました。
これに懲りずにお付き合いください。
・今回は都合をつけられず誠に申し訳ありません。
懲りずにまたお誘いいただけますと幸いです。
謝罪メールの書き方のポイント
前述のように、「懲りずに」を目上の人に使うこと、お詫びに用いることはおすすめしません。
謝罪メールを書くときは「懲りずに」を使わず、他の言い回しで書くのがいいでしょう。下記に例を記します。
【謝罪メールの例文】
・この度は、◯◯により、お待たせしてしまい誠に申し訳ございませんでした。
今後は二度とこのようなことがないように、◯◯を徹底いたします。
しっかりと謝罪した上で、問題の原因と、今後の対応策を述べることがポイントです。
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「懲りずに」の類語や言い換え表現
ここからは、「懲りずに」のそれぞれの意味について、類語を例文を併せて紹介します。
めげずに
「めげずに」は「めげる」の否定表現であり、「負けずに」「弱気にならずに」などを意味する言葉です。
「諦めずに挑戦する」という前向きな姿勢を示す場合に、自らの意思表明や激励の言葉などとして使用できます。
【例文】
- 今回は失敗に終わりましたが、めげずに頑張ります。
- 彼はあまたの逆境にもめげず、ついに目的を果たした。
- これからの新生活、多くの困難があるかもしれないけれど、めげずに頑張ってね。
次の機会もぜひ・次の機会にはぜひ
「次の機会もぜひ」は、依頼や挨拶において、「懲りずに」の言い換えとして使用できます。
また、「次の機会にはぜひ」はこちらから断りを入れる際に使え、できなかったことに対して「本当はやりたかった」と前向きな気持ちを示せます。
【例文】
- この度はハードな練習にお付き合いいただきありがとうございました。
次の機会もぜひお願いします。 - 今回は親睦会に参加できず、大変残念です。
次の機会にはぜひ参加したいので、またお誘いいただけたら幸いです。
性懲りもなく
「性懲りもなく(しょうこりもなく)」の意味は「失敗して痛い目を見たにも関わらず、同じ行為を繰り返し、一向に改めない様子」です。
「性懲りもなく」は、「懲りずに」をネガティブな意味で使うときとほぼ同じように使用できます。
【例文】
- 彼は性懲りもなく、女の子に声を掛けているようだ。
- あれだけ負けたのに、性懲りもなくまたギャンブルに手を出している。
- 何度強く断っても、あのセールスマンは性懲りもなく営業にやってくる。
「懲りずに」の英語表現
「懲りずに」の意味を表せる英語表現について、いくつかの例を紹介します。意味に合わせて適したものを選びましょう。
- won't give up
(諦めずに)
He won't give up and keep on studying until he can speak Japanese.
彼は日本語を話せるようになるまで、諦めずに(懲りずに)勉強を続けるでしょう
- without getting down
(落ち込むことなく、めげずに)
He has kept trying without getting down from the mistakes.
彼は失敗に落ち込むことなく(懲りずに)挑戦し続けている
- learn nothing from ~
(~から何も学ばない)
・He has learned nothing from his mistakes.
彼は失敗から何も学んでいない(失敗に懲りない)
- again (また、再び)
Please visit us again.
(また来てください)
「懲りずに」の意味を知って正しく使いましょう
「懲りずに」とは、「失敗しても同じことを繰り返すこと」を意味します。
ネガティブな意味もありますが、ポジティブな意味では失敗にくじけずに何度もチャレンジする様子や、失敗した先を見据えた前向きな姿勢が表せる表現です。
「懲りずに」を適切に使うことで、自分や相手を励まし、強い気持ちを示せます。しかし謝罪に使用すると失礼にあたるため、注意が必要です。
相手や状況に応じて、「懲りずに」を正しく使いましょう。