カボチャ生産の動向

近年の夏は、猛暑やゲリラ豪雨などでカボチャの栽培環境が悪化しています。現場ではうどんこ病が多発し、早期に葉が枯れ上ってしまうリスクも高まっています。枯れ上りが早まれば、果実の肥大不足や品質の劣化をもたらすほか、葉による日よけ効果が期待できず果実が直射日光にさらされて、日焼け果の発生が助長され、果実品質の低下や腐敗を誘発してしまいます。こうしたリスクが高まる一方で、減農薬・無農薬栽培といった青果物の「安全・安心」を求める消費側の要求はさらに高まっていくと予想されています。

そこで、これまでのカボチャ品種が持ち合わせていなかった、減農薬栽培が可能なレベルでの、高度なうどんこ病耐病性を付与することで、特別栽培下でも多収が期待でき、良好な食味を持ち合わせた品種の育成を目指しました。北海道、ニュージーランドなど主要な産地で試作を行った結果、主力品種「えびす」並の多収性と食味のよさ、減農薬栽培実現によるコスト削減を提案できる点を確認し、「グラッセ」と命名して発表。カボチャの加工向け産地を皮切りに、主要な青果用産地も含めて普及が始まり、高い評価を得ています。

本品種は草勢がやや強く、水田から転換圃場のような不良環境気味な条件下でも、栽培に取り組める品種です。

品種特性

うどんこ病耐病性

特許(第6306252号)を取得した本耐病性は、これまでにないハイレベルな耐病性と認められました。ただし完全抵抗性ではないため、発病状況によっては薬剤防除が必要です。
栽培後半は、本耐病性により健全な葉の状態が非常に長く続き、果実肥大や食味向上を
もたらします。

安定した栽培性と多収性

「グラッセ」の草勢はやや強めで安定します。つるの伸び始めは節間がやや短く生育が進むにつれ、長い節間となります。雌花の着生頻度はやや少ないですが、着果と肥大力も良好なため、多収(下記、表1参照)が見込めます。

青果販売でも有利な果実外観のよさ

果形はへん平で、条線は太めに出ますが、果皮色は濃い黒皮で貯蔵中の色あせも少ないことが特長です。また、果肉色は濃黄色に仕上がり、カット販売に有利です。

食味のよさ

肉質は粉質と粘質の中間で、甘みも強く青果用として良食味で加工適性の高い「えびす」と同様、煮崩れしにくい特性があります。

適作型・施肥設計
作型はトンネル、露地、露地抑制まで対応可能です。露地栽培では、10アール当たりチッソ成分で最低10キロを目安に元肥を施して減肥は避け、初期の株作りを促進します。 

追肥は、肥料が流亡しやすい土壌、または、粘質土など草勢がつきにくい土壌は、10アール当たりチッソ成分3キロを目安に行います。

栽培ポイント

放任栽培も可能

草勢が安定して着果もよいため、放任栽培も可能です。ただし、熟期のそろいを重視する場合は、子づる2本仕立てが適します。

収穫判断

収穫適期は、部で判断します。縦割れしたコルクに横割れが入り始めれば、収穫の目安です。本品種は果梗部の色が薄いため、色での判断には向きません。

また、うどんこ病に強いため、葉が健全な状態で収穫期を迎えますが、収穫適期は交配後45〜50日を目安とし、むやみに収穫を遅らせることは避けましょう。遅れて着果した場合は、必ずコルクの割れで収穫を判断します。

一斉収穫の場合の注意点

圃場の中で10果を無作為に選び、内5果が、前述の収穫目安に達したタイミングで行うとよいでしょう。

収穫後は、直ちに風乾・キュアリングを行うと、貯蔵性が向上します。

収穫1.5カ月後の果皮色比較。左側が「グラッセ」、右側の従来品種に比べて退色が遅く、青果販売にも有利

左側が「グラッセ」、右側がうどんこ病が発生した従来品種の圃場

左:グラッセ 、右:えびす。収穫適期の判断:「グラッセ」は果梗部全体の色が薄く未熟に見えるが、コルクが縦割れ+横割れで収穫適期(交配後45日)

(執筆:タキイ研究農場 阪口 敬太郎)