渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑戦する第81期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、第2局が4月27日(木)・28日(金)に静岡県静岡市の「浮月楼」で行われました。対局の結果、87手で勝利した藤井竜王がスコアを2勝0敗として奪取に向けて大きく前進しました。
相居飛車の力戦形
挑戦者・藤井竜王の先勝で迎えた第2局で、後手となった渡辺名人は4手目に角道を止める趣向を見せます。角換わりや相掛かりの研究勝負を外して相居飛車の力戦に持ち込む意図で、本局は矢倉系の力戦に落ち着きました。飛車先の歩交換が行われない穏やかな駒組みが続くなか、渡辺名人は9筋の香を走って歩交換を狙う積極策を決断しました。
盤上左方で歩交換を果たした後手の渡辺名人は、手順に9筋に飛車を回って雀刺しの攻撃陣を築きます。戦いが2日目に入ると、今度は先手の藤井竜王が角を使って3筋の歩交換に出て本格的な戦いが始まりました。この直後、渡辺名人が金を上がった局面は大きな分岐点。控室では、ここで先手から角を捨てて端を突破する攻め筋が重点的に検討されていました。
悲観が招いた急転直下
角損の攻めでは自信を持てなかったという先手の藤井竜王は、穏やかに角を引いて戦いを長引かせる方針を採ります。この直後に角香交換の駒得を果たしたのは大きな実利ですが、渡辺名人もこの代償として先手陣に竜を作っており形勢は互角です。盤面全体を使った押し引きののち、藤井竜王が2筋に金取りの桂を打った周辺が終盤のポイントとなりました。
攻めの継続を図る藤井竜王が1筋に桂を跳ねて王手をかけたのに対し、形勢を悲観していたという後手の渡辺名人は玉を逃げて局面の複雑化を図りますが、結果的にこの手を後悔することになりました。局後の検討では、ここはいったんこの桂を取って粘り強く攻め合いの順を探れば難解な終盤戦が続いた可能性があったとされました。
終局時刻は19時51分、たたきの歩で後手玉を危険地帯におびき出した手が決め手となって藤井竜王が快勝。これで開幕2連勝を飾りました。藤井竜王が怒涛の3連勝を決めるか、渡辺名人がタイトルホルダーの意地を見せるか。注目の第3局は5月13日(土)・14日(日)に大阪府高槻市の「高槻城公園芸術文化劇場」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)
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