■熱量や思いが伝わることで人の心を動かせる

オープン日には店のコンセプトをまとめた資料をカラオケ用のモニターに映しながら客にプレゼンし、経営コンサルタントと売上をチェックする際には、現在抱えるウィークポイントを整理しながら経営状況を振り返る。有村はそんな千里さんの営業スタイルを「私もお仕事をしていて感じることですが、いくらやりたいと思ったことでも、ちゃんとした動機がないと、なかなか人を説得できませんよね。熱量や思いが伝わることでやっと人の心を動かせる」と読み解き、「千里さんは、本当に筋の通った方」と評価した。自身も作品や役に挑戦したいとき、その思いを周囲に伝える機会があるという。「まずは、この作品に出演して誰に何を届けたいか、この役を任せてもらえたら自分には何ができるか、としっかり考えます。その道筋がないと私も気持ちが乗らないので、『どうしてやりたいか』という理由を、周囲に説明できるようにしています」と明かした。

  • スナックのママとして働く千里さん

■SNSの発信は苦手 それでも応援してくれるファンに感謝

ママを始めてから知った苦労や、好調な売上とうらはらに広がらない客層など、悩みが尽きない千里さんだが、大好きなセツコさんに会うたびに元気をもらい、気合いを入れ直す。最初は反対していた父親も、信念を貫いて資金の調達までやってのけた千里さんの熱量に胸打たれ、今では心強い味方だ。“力をくれる存在”について有村に尋ねると、SNSでコメントをくれるファンが挙がった。「YouTubeやインスタライブで素顔を見せる方法がたくさんある時代ですが、私は自分自身のことを発信していくのが苦手なタイプなんです。イベント事もあまりない中で、作品を見て応援し続けてくれる方の存在は本当にありがたいですし、舞台挨拶に来てくれる姿をうれしく思っています」と目を細めて感謝する。

最後に、今作を通して改めて感じたことを有村が語った。「どんな道であろうが、一人の人間が懸命に頑張っている姿には心を動かされますし、それを邪魔する権利は誰にもありません。一人ひとりの尊厳が守られ、認め合える人たちがたくさんいる世界であってほしいと思いました」。

  • 自宅で開店の準備をする千里さん

■有村架純
1993年2月13日生まれ、兵庫県出身。2010年にドラマ『ハガネの女』(テレビ朝日)で女優デビュー。2013年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で一躍注目を集め、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ/2016)で民放連続ドラマ初主演。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)でヒロインを務めた。映画『花束みたいな恋をした』(2021)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。そのほか近年は、映画『るろうに剣心最終章 The Final/TheBeginning』(2021)、『月の満ち欠け』(2022)、『ちひろさん』(2023/Netflix)ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?』(2022/TBS)などに出演。現在、NHK大河ドラマ『どうする家康』に出演している。