第94期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は、決勝トーナメント準決勝の渡辺明名人―佐々木大地七段戦が4月20日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、165手の熱戦を制した佐々木七段が決勝進出を決めました。もう一方の山からの勝者である永瀬拓矢王座と挑戦権を争います。

10日ぶりの再戦

両者は今月10日に行われた王位戦の挑戦者決定リーグでも顔を合わせており、その際は佐々木七段が矢倉対雁木の力戦を制していました。本局でも先手となった佐々木七段は、今度は相掛かりの作戦を採用。右銀を3筋に上がって、俗に「UFO銀」と呼ばれる棒銀系の速攻を見せることで後手の渡辺名人に守備体形を整える手を強要しました。

自玉を銀冠の堅陣に収めた佐々木七段は、自陣中央に自陣角を放ちます。この角のにらみを生かして1筋の端攻めで先攻したのは自然な継続手ですが、佐々木七段はこの直後に緩急自在の構想を用意していました。1筋で歩を手に入れたのに満足して角交換を迫ったのがそれで、今度は9筋の端攻めから後手陣に馬を作って不満のない展開に持ち込みました。

佐々木七段が快勝

1筋と9筋それぞれの端を起点とする細かい押し引きが続いたのち、佐々木七段はわずかに形勢をリードすることに成功します。2筋に跳ね出した後手の桂を銀で食いちぎったのが中盤の勝負手で、これによって空いたスペースにたたきの歩を放って手番を握りながら攻めが続きます。渡辺名人もうまく攻め合いに持ち込んで、戦いは終盤戦に突入しました。

後手の渡辺名人が7筋に打った歩を先手の佐々木七段が銀で払った局面が終盤におけるポイントの局面になりました。渡辺名人は素直にこの銀を香で取る手を選びますが、結果的にこの手を後悔することになりました。局後の検討では、後手はいったん9筋の香頭に歩を打って先手玉を詰みやすい形にしておくのが急務とされました。

終局時刻は20時10分、激しい攻め合いの終盤戦を乗り切った佐々木七段が渡辺名人の追撃をかわし切って勝利。2019年以来、自身2度目となる挑戦者決定戦への進出を決めました。準決勝のもう一方の山は永瀬拓矢王座が佐々木勇気八段に勝利。こちらは2期連続となる棋聖挑戦を目指します。

  • 佐々木七段は今年度に入って5戦全勝と絶好調だ

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水留 啓(将棋情報局)