同じ量を食べても「太る人」と「太らない人」がいます。これは体質だと実しやかに言われますが「そうとも限らない」と動作解析の専門家である夏嶋隆氏は話します。「太りやすい」「太りにくい」には、日常生活における姿勢も影響していると─。

  • 「ナチュラルポジションを保てば太りにくいカラダになれる」と話す夏嶋隆氏。

あなたは重力に負けずに地面に対して真っ直ぐに立てていますか? 「太りにくいカラダ」を求めるなら、まずはナチュラルポジションを身につける必要があります。そのキーとなるのが「浮遊ろっ骨」なのです。

■「ナチュラルポジション」とは?

──「太りにくいカラダ」になるためには「ナチュラルポジション」を身につけることが必要だと先生は言われます。まずは、ナチュラルポジションとは何でしょうか?

夏嶋 ひとことで言うと「カラダに負担をかけない自然な姿勢」。重力に負けずに地面に対して真っ直ぐに立つ、それがナチュラルポジションです。 具体的に説明すれば、次のようになります。

夏嶋 視線を正面に向け真っすぐに立ちます。この時、頭頂を真上に引き上げられる意識を持ってください。頭頂に糸がつけられ、それが真上に引っ張られるイメージです。この時、肩は上げないように注意しましょう。
顔も前方に突き出したり、胸を張り過ぎてもいけません。あくまでもリラックス。横から見ると、足の真上に骨盤、そして肩、耳がライン上に揃います。

──「良い姿勢」というと、しっかりと胸を張るイメージがありますが、そうではないと。

夏嶋 はい。その姿勢だと背中から腰にかけてを反らしてしまい、腰痛を引き起こしかねません。人のカラダの構造を考えると、足の真上に骨盤があり、骨盤の真上に頭がある状態が重力の負荷をもっとも受けにくい姿勢なのです。
ナチュラルポジションでは、カラダのどこかに力を込めることはありません。そして、この時に「浮遊ろっ骨」は閉じています。

■「浮遊ろっ骨」を閉じると

──浮遊ろっ骨とは?

夏嶋 人間のろっ骨は12本あり、その一番下の小さな骨が「浮遊ろっ骨(第12ろっ骨)」です。後方は背骨に関節がつながっていますが、前方は遊離しており、そのため「浮遊ろっ骨」と呼ばれカラダを動かすうえで重要な役割を果たします。
前屈、後屈、側屈、回旋といった動作の起点となり、この骨を意識できるか否か、上手に閉じられるかどうかでカラダは大きく変わります。

──「ナチュラルポジション」で、「浮遊ろっ骨」が閉じた状態を保つと、なぜ太りにくくなるのでしょう?

夏嶋 「浮遊ろっ骨」を閉じた状態では、ウエストがくびれます。そう話すと、グッと力を込めてお腹を凹まそうとする人がいますが、それはナチュラルポジションではなく、逆に「浮遊ろっ骨」が開いてしまいます。ここは間違えないようにしてください。
ナチュラルポジションは、先に説明した通り、カラダのどこにも力みのないリラックスした姿勢なのです。この姿勢を維持すると、それほどには空腹を感じることはありません。自然に食欲が抑えられるのです。

──姿勢を正す、つまりは「ナチュラルポジション」を体得するだけで「太りにくいカラダ」になれると。

夏嶋 なれます。そもそもダイエットには、まず最初に理にかなった姿勢作りが求められます。単に体重を落とすだけではなく見栄えの良い美しいカラダを手に入れたいなら、健康であり続けたいなら、まずは「ナチュラルポジション」を知り体得しましょう。 また、ダイエットに失敗した人が「私は意志が弱いから」と落ち込んだりしていますが、それは間違いです。そんなふうに自分を責めてはいけません。
日々の生活、楽しいことばかりではないのです。食事制限を決意したとはいえ、私生活や仕事でストレスを抱えることもあり、そんな時に甘いものに手を出してしまうことは自然な行為です。人間は欲望に負ける生き物であることを自覚しましょう。 そのうえで理にかなった姿勢、身体動作を身につければ「太りにくいカラダ」を、あなたは手に入れることができます。

<次回、『「太らない食事姿勢」を、あなたは知っていますか?』に続く>

文/近藤隆夫、監修/夏嶋 隆、モデル/鶴田美月、写真/山口比佐夫、イラスト/平のゆきこ