星来氏による人気コミックス『ガチ恋粘着獣~ネット配信者の彼女になりたくて~』の実写化に挑戦するドラマ『ガチ恋粘着獣』(ABCテレビ4月9日スタート毎週日曜23:55~※初回24:00~、テレビ朝日4月8日スタート毎週土曜26:30~※TVerで見逃し配信)。3人組人気動画配信グループ・コズミックのメンバーに“ガチ恋”している女性ファンの物語を、香音演じる女子大生の輝夜雛姫、石井杏奈演じるコンセプトカフェ店員の花織琴乃の視点で描いていく。人気動画配信グループ・コズミックのメンバーは、スバルを井上想良、コスモを山下幸輝、ギンガを松本大輝が演じる。

今回は香音と石井が「本番前から泣いてしまった」「耳が聞こえなくなるくらい思い切り怒鳴った」という壮絶な役作りを語ったほか、ガチ恋に身を投じる役を演じた立場から“推し”のいる読者へのメッセージを寄せた。

  • 左から香音、石井杏奈 撮影:宮田浩史

    左から香音、石井杏奈 撮影:宮田浩史

■毎日戦っているような感覚で撮影

――自身の役が抱える“ガチ恋”をどう演じたか教えてください。

香音:雛姫は動画配信者のスバルくんが純粋に好きだったんです。画面の中の人だったスバルくんが目の前に現れて、知っていくうちに思い描いていたスバルくんじゃないと分かってからは、裏切られたという思いから豹変していくことになります。行動も言動も荒々しくなっていく雛姫を演じることで、自分と全然違う人物になれて楽しかったですし、穏やかなシーンと激しいシーンを同じ日に撮ることもあったので、1日で感情の起伏が0と100を行ったり来たりして、毎日戦っているような感覚でした。

石井:琴乃は内に秘めて恋をするタイプなのですが、原作を読んで、自分より好きな人のことを優先できて、自分が今どうするべきかを一度考えてから行動する子だという印象を持ちました。あるラインを超えてしまうと泣き叫んだりするのですが、普段抑えている分、感情を外に出すお芝居では、耳が聞こえなくなるくらい思い切り怒鳴りました。いつも自分を優先しない琴乃の切なさや儚さを表現できていたらうれしいです。

■気持ちが昂ぶると本番前から泣いていた

――そんな役をどう作っていきましたか。

香音:まずは見た目から雛姫になれるようにエクステをつけたのですが、結構な重量だったので、杏奈ちゃんと2人で頭への負担を心配していました(笑)。これまでの人生で推しがいたことがなかったので、実際に配信者の方たちの動画を見たり、1人の時間もスバルくんの写真を見ることで、「ヒナの彼氏になってください、ヒナのものになってください」という思いを高めていきました。クランクインしたときは、スバルくんの顔を見ただけで「画面から出てきてくれた。スバルくんは本当にいたんだ」という思いで涙があふれてしまって。撮影期間も気持ちが昂ぶると本番前のテストの時点で泣いてしまって、本気で怒るシーンでも号泣していたのですが、スバルくんを思って心から泣いたり覚えていないほどの熱量で怒ったり、いろんな感情が自然に湧いてきたことが自分でも印象的でした。

石井:漫画の世界観を映像化するにあたって、いつもはしないのですが、翌日撮影するシーンの原作を読み直すようにしていました。原作の琴乃らしさを絶対になくしたくなかったので、常に漫画の琴乃の動きや表情を頭に入れて自分に憑依させて演技しようと心がけたことが、一番の役作りだったかなと思います。

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■半日かけた1シーンも…丁寧に制作されたドラマ

――人気漫画の実写化ということへのプレッシャーや、狂気をはらむ役どころを演じきれるかといったことへの不安はありましたか。

香音:原作を元々読んでいてすごく好きだったので、丁寧に演じたいなと思うと同時に、自分が雛姫になれることがうれしかったです。不安はありましたが、監督と井上さんと台本の読み合わせをしたとき、どう演じようかなと悩んでいたシーンがすごくしっくりきて、このメンバーで作っていけば大丈夫だと自信がついたんです。雛姫は「スバルくんが好きだ」という気持ちが原動力なので、私はただ雛姫の感情を大切に育てて、スバルくんと会ったときに爆発させれば大丈夫だと考えられるようになりましたね。井上さんのスバルを前にすることで、思いついたアイデアや引き出された感情がたくさんありました。

石井:プレッシャーはとてもありました。琴乃ファンの方も多いと思いますし、この異次元な世界観をドラマとしてどう表現すればいいのだろうと不安に感じていました。ですが、漫画に自分の想像で立体感を出していくという醍醐味があるように、映像だからこそ毎回違う泣き方や怒り方の琴乃を見せることができたらと思い、泣くことも怒ることもワンパターンにせずさまざまなバリエーションを見せていこうと目標を立てて演じました。原作ファンの方の中には、1クールのドラマで、雛姫編と琴乃編を描ききれるのかと不安を抱いている方もいらっしゃると思うのですが、今回の実写化は、かなり丁寧に制作されていると思います。山場となる1シーンを、半日かけて撮影したこともありました。出演者ほぼ総出で、同世代の役者たちでアイデアを出して作り上げたシーンなので印象に残っています。

■推しは目標にも夢にもなる“生きる活力”

――私も原作ファンなのですが、台本を拝読して、原作を大事に、そして丁寧に制作されている印象を受けました! では最後に、“推し”のいるすべての方へ、推す役を演じた2人からのメッセージをお願いします。

香音:ガチ恋をしている方たちの、熱量を持って愛を捧げている姿は尊いなと思わされました。自分のことを応援してくれているファンの子たちも、うちわを作ってくれたり、長文のメッセージを送ってくれたり、エネルギーを使って私に愛を届けてくれています。そんな推し活を何年も続けてくれているファンの子もいて、感謝してもしきれません。すごくうれしいし、その思いは私に伝わっているよと言いたいです。この作品を通して、推してくれている子たちの大切さを改めて実感できました。“推す”という愛はきっと相手に届いていると思うので、自分のメンタル面や体調面に配慮しながら、自分のペースで推し活を続けてください。

石井:琴乃を演じて気付いたのは、嫉妬も生きる活力の1つだなということ。行き過ぎたガチ恋で好きな人を傷つけるようなことは、絶対にしてはいけないですが、琴乃にとっては、いいことも悪いことも含めコスモくんを思うこと自体が生きる活力になっています。琴乃は、推しのコスモくんがいることで生かされています。この人のために生きよう、直接愛を伝えられるように頑張ろうなど、推しは目標にも夢にもなりますし、衣食住に加わるものにもなり得るので、すべての人が、自信を持って推しを好きでいていいと思います。生きるために、推してください!

■香音
2001年4月20日生まれ、東京都出身。2013年、「第1回ニコ☆プチモデルオーディション」でグランプリに選ばれ、同誌の専属モデルに。その後、『ニコラ』、『Popteen』の専属モデルを経て、2021年より『non-no』の専属モデルとなる。女優としても活躍の幅を広げ、近年の出演作に、ドラマ『高嶺のハナさん』(テレビ東京)、『何かおかしい』(テレビ東京)、 『Sister』(読売テレビ)、『スタンドUPスタート』(フジテレビ)など。2023年4月クールは『春は短し恋せよ男子。』(日本テレビ)にも出演する。
■ヘアメイク:サイオチアキ(Lila)、スタイリスト:志田舞、衣装:シアートップス/CAPRICIEUX LE'MAGE、ベスト/GANNI(ganni.com)、スカート/LA BELLE ETUDE、ミュール/CHARLES & KEITH
■石井杏奈
1998年7月11日生まれ、東京都出身。2012年に放送された飲料メーカーのCMに出演後、女優デビュー。映画『ソロモンの偽証:前編・事件/後編・裁判』(15年)、映画『ガールズ・ステップ』(15年)で第58回ブルーリボン賞新人賞を受賞。近年の出演作に、ドラマ『言霊荘』(テレビ朝日)、『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』(フジテレビ)、『金魚妻』(Netflix)、『プリズム』(NHK)、映画『砕け散るところを見せてあげる』、『破戒』など。2023年はドラマ『悪魔はそこに居る』(Paraviで配信中)、『ひとひらの初恋』(YouTube テレビ東京公式ドラマチャンネルで配信中)、『ああ、ラブホテル ~秘密~ 第3話「2人合わせて5万円」』(WOWOW、6月2日放送予定)に出演。
■ヘアメイク:尾曲いずみ、スタイリスト:道端亜未(Ami Michihata)