地球上で暮らす動植物の生命は、常に循環を繰り返しています。

……と言っても、人間社会で生活する私たちには、なかなかその事実を実感できる瞬間が訪れることはありません。

しかし、“確かに生命は循環しているのだ”と力強く示した写真が現在ツイッター上で話題となっています。

シカの亡骸
最初にこの亡骸を見つけたのは1月5日。
キツネにカケス、オジロワシ。厳しい冬を乗り越えるたくさんの生き物の糧となっていたその骸は、今日骨になって川辺に残っていた。
そしてその骨は、これから海へ旅立つサケ稚魚の隠れ場所になっていた。
一つの命がどれだけ多くの命を繋いでいるんだ
(@ITKsalmonより引用)

投稿主は標津サーモン科学館で飼育員をされている「仁科 斎/Nishina ITsuKi(@ITKsalmon)」さん。

仁科さんは1月5日に、北海道東部にある川でシカの亡骸を発見したそうです。その亡骸はキツネ、カケス、オジロワシなど、たくさんの生き物が北海道の厳しい冬を越えるための食料となっていたとのことでした。

  • (@ITKsalmonより引用)

そして3月29日、仁科さんが再び現地で確認したところ、亡骸はついに骨となって川辺に残っていたそうです。その骨は、今度は海への旅立ちを控えるサケの稚魚の隠れ家として使われていたのだとか。

  • (@ITKsalmonより引用)

仁科さんはこの出来事について、「一つの命がどれだけ多くの命を繋いでいるんだ」と実感を持って語られています。もしかしたら、シカの命は儚いものだったのかもしれませんが、その肉体は他の野生動物の糧となって、彼らの生命を温かく支えたのでした。

生命のサイクルについて考えさせられるこのツイートは大きな反響を呼び、6.1万件のいいねを獲得(4月5日時点)。数々のコメントも寄せられました。

「命が回ってますね。すごく壮大です」

「生命の循環はまさしくこのことですね」

「何一つ無駄な命なんてない たとえその命が果ててもまた別の命に受け継がれる 自然の神秘ですわ」

「以前、然別湖のガイドさんに、山は繋がっている、菌も草も木も林も森も、全部繋がっている、というお話を聞いて感銘を受けたのですが、動物も、そうなんですね。大きいな、この世界って、と思いました」

「生きていくことも 死ぬことも 意味のないことなんてないんですね」

「子供の頃は死んだ生物の肉を食らうカラスがとても邪悪なものに感じていましたが大人になって色々理解できる歳になってみたら命が回っているっていうことが理解できました」

ツイ主さんに聞いてみた

とても多くの気付きが凝縮したこの写真について、今回はツイ主の仁科さんに当時の話をさらに詳しくお聞きしました。

ーーこの時のエピソードやご感想など、改めてもう少し詳しくお話ししていただくことはできますでしょうか?

サケの仲間が好きなので、一年中河原を歩いたり川に潜って魚や自然を観察しています。 1月5日にいつものように川を訪れたところ、まだ新しいシカの亡骸がありました。観察しているとキツネや鳥たちが次々に訪れてシカの死体を食べています。-20℃にも達する厳しい冬を懸命に乗り越える生き物と、死後にこれほど多くの命を支えるシカの亡骸に命の循環する一部を見て感動しました。

その後も何度かこの場所に通い、季節が変わり春に訪れると白骨化したシカの亡骸が残っていました。

また春は海へ向かうサケの稚魚たちで川の中が賑やかになります。しかし、川の中にはサケの稚魚を狙う天敵も多数いるので、サケの稚魚たちは物陰に隠れながら成長します。そんなサケの稚魚たちは天敵から隠れ生き延びるのに、シカの骨を隠れ場所にしていました。

死後に、肉は冬を越える生き物たちに。骨は川の中で泳ぐ小さな魚が隠れるために。一つの命がこれほどまでにたくさんの命の糧になり支えていることに感動しました。

ーー今までもこのようなことを目撃することはあったのでしょうか?

シカに限らず似たような場を見ることは(頻繁ではありませんが)何度もありました。


たったひとつの亡骸がこれほど多くの動物たちの役に立ってるなんて、「命の尊さ」を改めて感じられますね。