「気をつかう」と漢字で書こうとすると、「気を遣う」「気を使う」のどちらが正しいか迷うことがあるかもしれません。この記事では「気を遣う」がもつ言葉の意味や「気を使う」との違い、類語・対義語を紹介します。
「気をつかう」は「使う」? 「遣う」?
「気を遣う(きをつかう)」は、「いろいろなことに注意を払う」「配慮する」という意味の言葉です。ここでは「つかう」の漢字部分に着目して、それぞれの意味の違いを解説します。
「気を遣う」にある「遣う」意味
「遣」は旧字であり、「派遣する」「与える」「(うさなどを)はらす」「追い払う」という意味があります。「時間を遣う」「気を遣う」「正しい言葉を遣う」「上目を遣う」のように、何かを工夫して使うことを表す表現です。
「気を使う」にある「使う」の意味
「使」は、「命令を受けて事に当たる人」という意味から生まれた漢字です。「使用」「他人の用のために働かせる」「扱い動かす」などの意味があり、人と物両方に対して使われます。
「道具を使う」「部下を使う」「居留守を使う」のように、実際に人や物を動かす際に使われる言葉です。
「気を遣う」「気を使う」どちらも正解
「使」も「遣」も「人に命じて仕事をさせる」という同じ意味の言葉です。そのため「気を遣う」「気を使う」どちらの表記も使えます。
ただし、「言葉遣い」のように、名詞と組み合わせる場合は「~遣い」と表記するため、「気づかい」は「気遣い」が一般的な表記です。「気をつかう」も「気を遣う」と書くのが一般的ではあります。
「気を遣う」の使い方・例文
- 上司に気を遣うあまり意見が出せない
- 周囲への騒音に気を遣う
- 最も気を遣う作業が無事に済んだ
- 気を遣う人が近くにいると楽しさが半減する
「気を遣う」の類語
ここでは、「気を遣う」の類語の意味と例文について解説します。
心遣い
「心遣い(こころづかい)」とは「あれこれと気を配ること」という意味です。また、ご祝儀のことを心遣いという場合もあります。
・皆様の温かいお心遣いに、心より感謝申し上げます
・過分なお心遣いをいただき、大変恐縮でございます
配慮
「配慮(はいりょ)」とは「心をくばること」という意味です。「周囲の状況などを踏まえてあれこれとよく考え思いをめぐらせる」という意味の「慮」と「配る」を組み合わせています。
・体調に配慮して業務のローテーションを行う
・やや配慮に欠ける対応がみられる
細心
「細心(さいしん)」とは、「細かい部分にまで心を配る」という意味です。「気がし遺作繊細な人」を指す場合もあります。「細心」は「注意」と組み合わせる用法が多くみられます。
・細心の注意を払って手早く対処する
・相手の攻撃に細心のケアをしながら攻めこむ
高配
「高配(こうはい)」は、心配りをしてくれる他人をうやまう際に使う表現です。「貰う」の謙譲語である「賜る(たまわる)」と組み合わせて、お礼をいう場合によく使われる表現です。
・この度はご高配を賜り、誠にありがとうございます
・平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます
注意
「注意(ちゅうい)」には、「気をつける」「気を配る」という意味があります。「よくないことが起こらないように用心する」という意味で使うことも多い表現です。
・冬期は結露による不具合発生に注意する
・細部まで注意して観察する
心配
「心配(しんぱい)」は、「心配り(こころくばり)」に漢字をあててできた言葉です。そのため「心を配る」という意味の心遣いと同じ意味があります。「先々のことを気にして心を悩ます」様子を示すこともあります。
・不安定な挙動で心配になる
・心配ばかりせずまず実行してみよう
気兼ね
「気兼ね(きがね)とは、「他人の考えなどに気を遣って遠慮をする様子」です。
・ブレーンストーミングでは、誰にも気兼ねせず自由に発言を行う
・一人でも気兼ねなく入れる焼肉店
行き届く
「行き届く(ゆきとどく)とは、「全体にまで行きわたっている」「細部まで注意が届いている」状態を表す言葉です。
・隅々まで掃除が行き届いた部屋
・連絡が行き届くように伝達方法を考える
心を砕く
「心を砕く(こころをくだく)」は、心が粉になってしまうほどに「心配して気をもむ」「苦心して気を配る」という意味があります。
・量産がスムーズに進められるよう準備に心を砕く
・感染症対策に心を砕く
目が届く
「目が届く(めがとどく)」とは、何かが実際に見えている様子を示す言葉です。そこから対象となる人や物に対して「注意や監視・監督が行き届いている」という意味で使われます。
・管理職の目が届く部下の人数には限界がある
・一人ひとりに目が届く体制づくり
「気を遣う」の対義語
「気を遣う」の意味や類語からすると、礼儀や相手への配慮を欠いた自分勝手な表現が「気を遣う」の対義語に近い言葉だといえます。
身勝手
「身勝手(みがって)」とは、他人のことを考えずに、自分の都合だけを優先してわがままに行動することです。
・身勝手な主張にがっかりした
・身勝手極まりなく誠実さとはほど多い
気まま
「気まま(きまま)」とは、相手に対して遠慮や気兼ねをせず、自由に自分がやりたい行動をとることです。またわがままなふるまいのことを「自由気まま」「勝手気まま」といいます。
・自由気ままな独身生活を楽しんでいる
・気ままな言い草に閉口する
傍若無人
「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)」とは、周囲の人の目を一切気にせずに、自分勝手にふるまうことです。
・傍若無人なふるまいに腹を立てる
・傍若無人なクレーマーを一喝する
配慮を欠く
「配慮を欠(か)く」は、「配慮に欠ける」「配慮に欠く」と表現することもあります。心遣いが足りない様子を表しています。
・配慮を欠いた一言にお詫びをする
・その仕様はユーザーへの配慮に欠けている
気が利かない
「気が利かない(きがきかない)」は気が利くの逆の意味の言葉で「機転が利かず、細部まで目が行き届いていないこと」を示す言葉です。
・気が利かない部下だと憤る前に、依頼法を見直してみよう
・感じはいいのに気が利かないので残念だ
気を遣う場合に使えるおすすめ表現
ここでは、ビジネスなどで使える「気遣いの言葉」を紹介します。
相手の体調を心配しているとき
体調が悪そうな相手を気遣って一言駆けたい場合には、以下の表現が便利です。
・何かお力になれることはありせんか
・無理なさらないでください
相手を慰めたいとき
相手がミスをした場合、黙って話を聞くだけでも構いません。また、きっと落ち込んでいるだろうと相手の様子を気遣う言葉も大切です。
・大変でしたね
・ここから切り替えていきましょう
・いっしょに解決策を考えよう
相手の気遣いにお礼をしたいとき
相手が気を遣ってくれることに感謝を伝える言葉も大切です。
・いつもお気遣いをいただき、本当にありがとうございます
・もしお困りのことがあれば、何なりとお申し付けください
「気を遣う」の英語表現
「気を遣う」の英語表現は「considerate(察しがよい)」「thoughtful(思いやりがある)」です。
・Thank you for your considerate.(ご配慮いただきありがとうございます。)
・He should be more thoughtful of his behavior.(彼は自分の行動にもっと気を配るべきだ。)
「気をつかう」で迷ったら「気を遣う」を使う!
「気をつかう」は「気を遣う」と表記することが多いです。迷ったらひらがなで書くのも一案ですが、正しい書き分けや相手を気遣う表現をたくさん知っているとビジネスシーンなどで役立ちます。