松本潤主演の大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で今川氏真役を熱演している溝端淳平。2006年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリに輝きデビューし、映画やドラマ、舞台でキャリアを積んできたが、溝端自身は10代、20代は「人徳もなければ才能もない」と葛藤してきたと言う。そして、数多くの現場を踏み、現在33歳となった溝端は、その頃とは違う境地に立っているようだ。

  • 『どうする家康』今川氏真役の溝端淳平

『どうする家康』は、『コンフィデンスマンJP』シリーズなどで知られる脚本家・古沢良太氏が新たな視点で、誰もが知る歴史上の有名武将・徳川家康の生涯を描く物語。溝端が演じているのは、今川義元を父に持つ氏真役で、溝端にとっては初の大河ドラマ出演となった。

徳川家康役の松本、家康の正妻・瀬名役の有村架純とは、フジテレビの月9ドラマ『失恋ショコラティエ』(14)での共演以来となった。

「松本さんとは『失恋ショコラティエ』以降も連絡を取らせていただいていて、僕の舞台を見に来てくださったり、一緒にお酒を飲みにいったりしています。松本さんや『鎌倉殿の13人』の小栗旬くんはすごくお世話になっている先輩なので、お二人が大河ドラマをやると聞いて、自分たちの1世代上で目標にしていた方々が大河の主演を張るということを勝手にうれしく思っていました。松本さんが『どうする家康』の主演に決定した時も『おめでとうございます』と連絡をしましたし、僕が氏真役に決まった時も『よろしくお願いします』と送ったら、ものの20秒ぐらいで電話をかけてくださいました」

有村とは、大河の撮影に入る前に、たまたま放送局でばったり居合わせたたそうだ。「『失恋ショコラティエ』で僕はオリヴィエという役でしたが、その時も有村さんは僕のことを『オリヴィエ』と10年前の役名で呼んでくれました。そんな有村さんにキュンときましたし、2人で『懐かしいね』と言い合いました」

また、松本について「あまり言葉にして多くを語らない方ですが、気遣いの方」と座長ぶりを心からリスペクト。第6回の「続・瀬名略奪作戦」の回で、松平元康(松本潤)勢と氏真ら今川勢とが、人質交換をするシーンについて「川を挟んで松平勢と今川勢を撮影する際に、今川家から撮っていくということで『松本さんは代役で大丈夫です』とスタッフさんがおっしゃったのですが、松本さんがそれは今川勢の方々に失礼だということで、朝5時頃からの撮影に来てくださいました」と明かした。

「何かあればご飯に行こうかと、チームワークをとても大事にしてくれているので、現場には一体感があります。僕は初めての大河出演でしたし、大河ドラマは次々にゲストが入る現場だと思いますが、そういう人たちに対しても演技がしやすいように、役者が困らないようにと、常に最善を尽くしてくれます」

そして大河ドラマに初出演したことについて溝端は「やはり見ている人が圧倒的に多いし、親戚や地元のおじいちゃん、おばあちゃんなど、年上の方々からの反響がすごく大きかったです」と笑顔を見せる。

続けて「体感としては、自由度がありつつ、ストイックにやらせていただけるという蜷川さんの舞台でのお芝居に近いなと思いました。台本があり、セットに用意されているものなら何を使ってもいいし、やっちゃいけないことなんてないといったやり方を、蜷川さんから教わりました。そういう点が大河のお芝居と似ていたので、すごく血が騒ぎました」と蜷川幸雄さんの舞台との共通点を語る。

溝端は蜷川演出による『ムサシ』や『ヴェローナの二紳士』など、精力的に舞台での経験を積んできた。

「大河ドラマをリアルにやるのは難しいんです。その時代に生きた人もいなければ、しゃべり言葉も違うし、氏真のように『明日そこに攻めいるぞ!』という感じも、今の日本人にはなかなか理解ができない感覚だと思います。でも、自分の日常生活に置き換えられないぐらいの熱量や世界観、集中力みたいなものは、蜷川演劇の『シェイクスピア』やギリシャ悲劇に近いものがあるなと。自分が20代の頃、苦しみつつも蜷川さんや吉田鋼太郎さんなどに食らいつき、鍛えていただいた経験はやはり大きかったと改めて思いましたし、舞台をやってきて良かったとも思いました」