Z世代を中心に注目される「タイパ」ことタイムパフォーマンス。ビジネスにおいて大変重要な要素ですが、そこに成果が伴わなければ元も子もありません。

そこで、『時間最短化、成果最大化の法則』(ダイヤモンド社)の著者で、北の達人コーポレーション 代表取締役社長の木下勝寿氏に、ビジネスパーソンが知っておくべき、本当の意味でのタイムパフォーマンス向上のポイントを教えていただきました。

  • Z世代を中心に注目される「タイパ」※画像はイメージ

成果は、スキルと思考アルゴリズムの掛け合わせで発揮される

手元資金1万円で、たった一人で創業した会社が、15年後に東証一部(現東証プライム)に上場。自身の会社がここまで成長した秘密は、短時間で成果を上げるための黄金法則、"成果=スキル×思考アルゴリズム"にあると木下氏は言います。

「人によって成果に10倍、100倍の差がつくのはなぜか。その理由を、"スキル不足"と考える人は少なくありません。でも、100倍の成果を出している人に100倍のスキルがあるわけではない。成果は、スキルと思考アルゴリズムの掛け算によって発揮されるのです」

思考アルゴリズムとは考え方のクセのことだと木下氏。

「困難に直面したとき、『やるだけムダ』と考える人と、『ムダかもしれないけれどやってみよう』と考える人とでは、後者の方が何%かの可能性があり、その積み重ねによって成果に大きく差が出ます。成果が上がらない人は目の前の仕事のスキルアップに必死になりがちですが、成果が上がる考え方のクセを身に付ける方が、短時間で成果を上げられるようになるのです」

最短で最大の成果を上げる"ピッパの法則"と"10回に1回の法則"

木下氏の会社では、定期的に、数々の成功者の教えや現場体験から法則化された"最短で最大の成果を上げる思考アルゴリズム"を学ぶ、社内研修を行っているそうです。

この研修で特に評判がよく、再現性の観点から有益なものをまとめたのが書籍『時間最短化、成果最大化の法則』。木下氏が特に重要だと考える法則を2つ挙げてもらいました。

行動量が10倍アップする"ピッパの法則"

ピッと思いついたらパッとやる。やるべきことが起こったとき、後でやろう、いつかやろうではなく、その場ですぐやるか、すぐできない場合はいつやるかをその場で決めることが大事。

「新卒入社したリクルートで営業をしていた時代、セールストークには自信があったものの、肝心な成績は、お世辞にも優秀とは言えませんでした。そこで、自分と成功している人たちとの違いを探ってみたのです。すると、成功する人はアイデアを10個思いついたら10個実行しているのに対し、私はせいぜい1個しか実行していないことに気付きました。セールストークを磨くためにビジネス書を読みあさるよりも、すぐに行動することの方が、成功するためには重要だったのです。短絡的な行動で一見、非効率にも思えるピッパの法則。私も最初はそう思いましたが、実際にやってみると、行動量は10倍になり、仕事のキャパは10倍に増え、結果、成果も出てきました。まずは3週間、実行してみてください。大半の人が、プラスの効果を実感するはずです」

成功する人は必ず知っている"10回に1回の法則"

10回本気でやれば、誰でも1回成功するようにできている。人の3倍成功している人は、人より成功確率が高いわけではなく、実行回数が3倍なのだ。

「この法則を知っていれば、失敗してもショックが少なく、心がラクになります。10回目は成功すると自分に言い聞かせて、失敗しても淡々と、10回続けることが重要です。経験値が浅い人からすると、この法則はタイパが悪く見えると思います。でも、『2、3回やって、うまくいかないからやめる』ということを何度も繰り返している方が、実は効率が悪い。うまくいっていないやり方を大量生産してしまうだけです。効率化とは、うまくできた人の正解をより省力化してやること。先にタイパを考えると、ものすごい勢いで全部失敗しますよ」

成長は変わること、上達は付け足すこと

スキルがあるのに成果が伴っていない人がやるべきは、さらなるスキルを身に付けることではなく、思考アルゴリズムを変えることだと木下氏。その時、成長と上達の違いを認識しておくことも、重要だと言います。

「成長とは、理想の自分と今の自分のギャップを埋めること。時には、今の自分が持っているものを潔く捨て去らなければなりません。一方で、今の自分にいろいろなものを付け足していくのは、成長ではなく上達です。上達は、今の自分の延長線上なので、あまり変わっていません。成長は変わること、上達は付け足すこと。成長に対して上達をイメージしている人は、『こういう風に仕事をしていけば成長するよ』と言われても、なかなか受け入れられないようです」

世の中には、"成功する人""成功しそうだけれどしない人""成功しない人"の3種類の人がいる。"成功する人"になりたいなら、"最短で最大の成果を上げる思考アルゴリズムの法則"を、とりあえず一度試してみてほしいと言います。

「"ピッパの法則"も、"10回に1回の法則"も、やってみて嫌だったら、ダメだったらやめたらいいのです。行動するのに決心なんていらない。軽い気持ちで、まずは動いてみることが大事だと、僕は思います」

取材協力:木下勝寿(きのした・かつひさ)

株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長
株式会社エフエム・ノースウエーブ取締役会長
1968年、神戸生まれ。大学在学中に学生企業を経験し、卒業後は株式会社リクルートで勤務。2002年、北の達人コーポレーションを設立。独自のWEBマーケティングと管理会計による経営手法で東証プライム上場。時価総額1000億円企業に。