政府は2月14日、4月に任期満了を迎える日銀の黒田総裁の後任として、植田和男氏を起用する人事案を国会に提出しました。日銀総裁の交代で、金融政策や住宅ローン金利への影響はあるのでしょうか。
住宅ローン比較サービス「モゲチェック」のチーフアナリスト 堀江勇介氏に話をうかがいました。
■日銀新総裁の植田和男氏とは
ーー日銀新総裁になる植田和男氏はどのような人でしょうか?
植田氏は現在71歳で、経済学者、東京大学名誉教授・共立女子大学教授です。
また、1998年から2005年にかけては、日銀審議委員(金融政策を決める9人のメンバーのうちの1人)を務めた経験があります。その際は、ゼロ金利や量的緩和といった金融緩和政策の導入を理論面で支えました。
■日銀総裁の交代による金融政策や住宅ローン金利への影響は
ーー植田氏の今後の金融政策に対するスタンスは?
まだ明らかにはなっていませんが、昨年7月には日本経済新聞に「物価上昇局面の金融政策(上) 日本、拙速な引き締め避けよ」というタイトルの記事を執筆しています。
そこでは、
・インフレ率の一時的な2%超えで金利引き上げを急ぐべきではない
・持続的な2%インフレ達成への道のりは長い
・現在の金融緩和は微調整が難しい仕組みになっている。出口(金融緩和の終了)に向けた戦略が必要である
などと述べています。
日銀は、「持続的な2%インフレを達成する」ことを金融緩和政策の目的に掲げています。植田氏は、将来的に金融緩和を終了し金融引き締めに向かう土台作りは必要としていますが、拙速な金融引き上げを急ぐべきではないと主張しています。
そのため、現行の金融緩和政策を当面は踏襲するとみられます。
ーー日銀総裁人事は住宅ローン金利にどう影響しますか?
仮に、植田氏が新総裁に就任した場合、当面は現行の金融緩和政策が維持されることが予想されます。ただし、そうした中でも金融緩和の枠組み、特に、長期金利を0%からプラスマイナス0.50%の範囲に留める長期金利操作について、メスを入れる検討を始める可能性はありそうです。
その場合、住宅ローンで影響を受けるのは変動金利ではなく固定金利です。固定金利はここ1年上昇が続いてきましたが、「将来的に日銀が政策修正し長期金利が上昇するかも」という思惑が金利市場でくすぶり続けることが想定され、当面固定金利は高止まりする可能性がありそうです。