• 「憮然」の意味とは

    「憮然」の誤用についてくわしく解説していきます

言葉のなかには、本来の意味とは違う誤用の意味が広く世間に知られているものもあります。「憮然」も本来の意味よりも誤用の意味の方が、世間に広まっている言葉の一つです。

この記事では、「憮然」の本来の意味、誤用の意味、なぜ誤用されるのかなどについて紹介します。

言葉の意味は時代とともに変化していく部分もあり、「憮然」の誤用としての意味が辞書に載っているケースもあります。「憮然」の誤用についての情報を幅広く紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。

「憮然」の本来の意味とは

  • 「憮然」の意味とは

    そもそも「憮然」とはどのような意味なのでしょうか

でははじめに、「憮然」の正しい意味について紹介します。

「憮然」とは、どうすることもできず失望や落胆してぼんやりしている様子のことです。また、意外なことに驚いてあきれているさまという意味もあります。

「憮然」の誤用

  • 「憮然」の誤用

    「憮然」の本来の意味とは、失望や落胆してぼんやりしている様子のことです

ここでは、「憮然」がどのように誤用されているのか、なぜ誤用されてしまうのかについて紹介します。

「憮然」の意味の誤用

「憮然」という言葉は、「腹を立てている様子」「怒っている様子」という意味で使用する人が多いですが、本来の意味から考えると誤用です。たとえば「憮然とした表情で」を、「腹を立てているような顔つきで」という意味で使用するのは本来誤りなのです。

「憮然とした表情で」は、正しくは「失望や落胆によってどうすることもできずぼんやりしている顔つきで」ということを表しています。

なぜ「憮然」は誤用されるのか

「憮然」の意味が多くの人に誤用されていることがわかる世論調査の結果もあります。

平成30年におこなわれた調査で、「憮然として立ち去った」を「失望してぼんやりとしている様子」と「腹を立てている様子」のどちらだと思うかをたずねた結果は以下のとおりです。

・失望してぼんやりとしている様子(本来の意味):28.1%

・腹を立てている様子(誤用としての意味):56.7%

半数以上の人が「憮然」の意味を「腹を立てている様子」という誤用の意味でとらえていました。なぜ「憮然」という言葉の意味は、誤用されてしまうのでしょうか。

理由の一つとして、「仏頂面」や「ぶうぶういう」など、「ぶ」の音に腹を立てている様子を表す言葉が多いことがあげられます。「憮然」も「ぶ」の音を含んでおり、怒っている様子や腹を立てている様子を連想させる可能性があります。

また、「憮然」の本来の意味である「失望や落胆してぼんやりしている様子」は、「呆然」などの表現の方が使われることが多いです。

そのため、「憮然」という言葉は「失望や落胆してぼんやりしている様子」というイメージがないため、誤用されることが多いと考えられています。

「憮然」の誤用は本当に誤用なのか

  • 「憮然」の誤用は本当に誤用なのか

    「憮然」は誤用されることも多い言葉ですが、言葉の意味は時代とともに変化しています

言葉の意味や使われ方は、時代の流れとともに変化することもあります。

「憮然」についても、使われ方や辞書に載っている意味に変化があります。ここからは「憮然」の意味の変化について紹介します。

時代とともに意味も変わる

「憮然」の意味を「腹を立てている様子」とするのは本来誤用です。しかし、近年「憮然」を誤用の意味で使用することも多くなってきています。

最近の辞書でも、「憮然」の意味について「思い通りにならなくて不満なさま」「不機嫌なさま」「不興なさま」といった意味を掲載している辞書もあるほどです。

時代の流れとともに、徐々に言葉の意味も変化しているのです。厳密にいえば、誤用となる使い方であっても、普段の会話のなかで使われることもあるでしょう。会話中に言葉の誤用を指摘すると、相手が不愉快に思うなどスムーズにコミュニケーションがとれなくなる可能性もあります。

時代の流れとともに、意味や使われ方が変化する言葉も存在しています。相手とスムーズにコミュニケーションをとることを優先して、細かい誤用について指摘しないというのも選択肢の一つです。

「憮然」の誤用に注意しつつ円滑なコミュニケーションを

「憮然」とは、本来失望したり落ち込んだりしてどうすることもできないでいる状態や、意外なことに驚いてあきれている状態を表す言葉です。しかし、世間一般的には「腹を立てている様子」という誤用の意味の方が広く浸透してしまっています。

ただし、近年の辞書では「憮然」の意味として「思い通りにならなくて不満なさま」「不機嫌なさま」「不興なさま」といった意味も載っています。

言葉を正しく使うことも重要ですが、細かい誤用を会話中にしつこく指摘されると、相手が不愉快になる可能性もあるでしょう。円滑にコミュニケーションをとることを目的とするならば、あえて言葉の誤用についての指摘はせずに、会話を楽しむという選択肢もあります。

日常会話やビジネスシーンでも、「憮然」をはじめとする言葉の誤用に注意しながらも円滑に相手とコミュニケーションがとれるように意識してみましょう。