ビジネスシーンでも友人との会話の中でも、「さわりだけ聞かせる」という言葉を聞くことがあります。「さわり」の意味は、「はじめの部分」や「冒頭部分」のことだと考えている人は多いですが、実は全く違った意味がある言葉です。
しかし、誤った意味が広まっているので、誤用に気づいていない人もたくさんいるのではないでしょうか。
そこで、今回は「さわりだけ聞かせる」の意味や「さわり」の正しい意味をわかりやすく解説していきます。さらに、「さわり」の正しい使い方や類義語、英語での表現についてもご紹介しますので、ぜひ参考にして「さわり」の意味や使い方をマスターしてください。
「さわりだけ聞かせる」の意味は?
「さわりだけ聞かせる」と言われたら、冒頭部分だけ聞かせればいいと考える人は多いのではないでしょうか。「さわり」は、意味を間違えて覚えている人が多い言葉の一つです。「さわり」の本来の意味を確認しておきましょう。
「さわりだけ聞かせる」の本来の意味
「さわりだけ聞かせる」の「さわり」は
・話などの要点
・肝心なところ
・見どころ、聞きどころ
・感動的、印象的な部分
という意味です。
そのため、「さわりだけ聞かせる」は
・話の要点だけ聞かせる
・肝心なところだけ聞かせる
・見どころ、聞かせどころだけ抜き出して聞かせる
といった意味になります。
「さわり」は浄瑠璃用語
「さわり」を漢字で書くと「触り」となります。「手触り」「肌触り」などと同じ漢字になるので、
・さわる、触れる
・触れた感じ
といった意味もあります。
「さわりだけ聞かせる」のように、「要点、肝心なところ」といった意味で使われるようになったのは、江戸時代に竹本義太夫(たけもとぎだゆう)が始めたとされる浄瑠璃の一つ「義太夫節」が関係しています。
「さわり」は義太夫節の曲の中で、1番の聞きどころとされる箇所を指す言葉でした。ここから派生して、「話の要点」「歌の聞かせどころ」のように、会話や物語の中の最も感動的な部分、要点といった一般的な言葉としても使われるようになったのです。
「さわり」は誤用されている?
文化庁が実施している「国語に関する世論調査」によると、「さわり」の意味を誤解している人が半数を超えているという結果が出ています。
半数以上の人が「さわり」の意味を
・(話などの)最初の部分
と考えていることがわかりました。年代別の結果でも、70歳以上を除く10代~60代の全ての世代において過半数が「最初の部分のこと」という意味だと答えています。
「さわり」という言葉が「軽く触れる」「少しだけ触れる」といった意味を連想させ「表面的に触れる」ことをイメージしてしまうため、正しく理解できていない人が多くなっているのかもしれません。
「さわり」の意味を勘違いしている人が多いということは、会話の中で「さわり」が登場した際も、相手が意味を間違えたまま使っている可能性があるということになります。
例えば、友達との会話の中で「あのドラマのさわりだけ教えてくれない?」と聞かれたとします。この場合、相手が「さわり」の意味をきちんと理解しないまま使っていたとすると、「ドラマのはじめのストーリーだけ聞きたがっている」可能性が高いのです。
本来の意味である「話の肝心な部分やオチ」を話してしまうと、相手が聞きたがっていることと内容がズレてしまい、話が噛み合わずにお互い気まずい雰囲気になってしまうでしょう。
会話の前後を考えながら、相手が「さわり」をどういった意味で使っているのかを推察し会話をする必要があります。「さわり」の意味を誤解している人が過半数もいるということはぜひ覚えておいてください。
「さわり」の使い方・例文
「さわりだけ聞かせる」の「さわり」の使い方をより深く理解していただけるよう、例文を紹介していきます。
・「会議に出席できず申し訳ありません。時間がないので結果のさわりだけ教えていただけますか?」
会議の「要点」や「大事なところ」の意味で使っています。
・「あの曲、さわりの部分はとくに素晴らしいよね。」
曲の中のサビ部分を指しています。
・「人気の映画だけど見に行く時間がないので、さわりを教えてもらったよ。」
映画の見せ場やオチ部分、クライマックス部分のことを言っています。
「さわり」の類義語・言い換え表現
「さわり」の類義語には
・要点
・見せ場
・ハイライト
・佳境
・山場
などがあります。
「さわり」の英語表現
「さわり」の英語表現をご紹介します。「さわり」を「(物語・話の)聞かせどころ」の意味として使う場合、「要点」の意味で使う場合でいくつかの表現がありますので、それぞれチェックしてみてください。
聞かせどころ、最高潮のところ
・climax
・most moving passage
・high point
要点
・point
・main point
・essential point
「さわり」の正しい意味を理解しよう
「さわりだけ聞かせる」の正しい意味は、「要点だけ聞かせる」です。「さわり」は漢字では「触り」と書き、「ハイライト」や「見せ所」などに言い換えることができます。
しかし、「さわり」という言葉に「少しだけ・ちょっとだけ触れる」といったイメージがあるので、「最初の部分」や「冒頭」という意味に勘違いしている人がとても多いのが現状です。
「さわり」の正しい意味を理解しないままだと会話も成り立ちませんし、重要なビジネスシーンでは恥をかくことも考えられます。ぜひ本記事を参考にして、しっかりと正しい意味を理解し、使い方までマスターしておきましょう。