レイデルリサーチ研究所は2月3日、「中年期女性を対象とした、運動習慣による『善玉コレステロール』の量的・質的変化」の論文(2023年1月6日)について発表した。

  • レイデルリサーチ研究所と発表論文

昨今、コロナ禍によりテレワークが進み、運動不足が社会的な課題となっている。家やコワーキングスペースで仕事をする人が増え、職場までの移動のような日常的な有酸素運動の機会は、社会全体として大きく減少したと言われている。

中でも東京在住の女性は、「職場への移動時間が減少したにも関わらず、家事・育児の負担が増えた(東京都「令和3年度男性の家事・育児参画状況実態調査報告書(令和3年11月)」による)データもあり、自主的に運動に費やす時間を確保することが難しい。結果として習慣的に運動ができない環境下にあることが想定される。

今回の研究は、このようなコロナ禍で社会課題となっている運動不足と「善玉コレステロール(以下、HDL)」の関係を解き明かすことを目的として実施した。

コレステロールは、「悪玉コレステロール(以下、LDL)」が注目される傾向にあるが、重要なのは「HDLの質」と「LDLとHDLの比率」であるという研究結果が発表されている。

今回、同研究所は、体の健康に大切な善玉コレステロールと運動不足の関係を検証。代謝の低下・運動量減少・更年期障害などで高血圧による健康リスクが急増する中年期女性(50歳前後)を、運動強度・頻度・時間により3グループに分けて比較し、善玉コレステロールの差を分析した。定期的・習慣的な運動によりHDLの質が改善される有意データを示した世界で初めての報告となる。

同研究の対象となったのは、中年期女性(50歳前後)57人。運動強度・頻度・時間によって、座りがちなグループ(グループ1)、中強度のグループ(グループ2)、高強度のグループ(グループ3)に分類し、HDLを構成したり影響したりする複数の成分について、量、質、サイズを比較分析した。

その結果、習慣的な運動が、HDL量の向上・機能性・抗酸化性・コレステロール排出能力を高めるという有意データが得られたという。

HDLの抗酸化作用に重要な役割を果たすと考えられている抗酸化酵素「パラオキソナーゼ(PON)」の抗酸化力を測定したところ、運動強度・頻度・時間が「高強度のグループ(グループ3)」の平均値は「座りがちなグループ(グループ1)」の1.3倍の結果となった。これにより、運動を高強度することにより、抗酸化力が1.3倍向上することがわかった。

  • パラオキソナーゼ(PON)の抗酸化力

60万倍まで拡大可能な世界最新モデルのTEM顕微鏡を使用し、HDLの質を測るサイズを比較したところ、高強度運動をしているグループ3の平均値は、グループ1の約2倍となった。

  • HDL2のサイズを示す透過型電子顕微鏡(TEM)像と面積分析