全国的な人気を誇る木彫り彫刻家・はしもとみおさんの個展「はしもとみお 木彫展‐時をかけるケモノたち‐」が、ギンザタナカ銀座本店で始まりました。等身大サイズの秋田犬「わさお」や子猫の「ウニちゃん」などの動物彫刻24体をはじめ、オーナメントやスケッチなど愛らしい表情を見せる“ケモノ”たち42体が集結しています。

この個展は、貴金属の老舗であるギンザタナカが展開する「純金オブジェコレクション」の“動物オブジェシリーズ”の木彫り原型を、はしもとみおさんが手がけていることから企画されたもの。三重県北部の古民家にアトリエを構え、動物たちの“そのままの姿形”を木彫りにする肖像彫刻家、はしもとさん。個展初日のオープン前にはご本人が登場し、作品のケモノたちがうまれた制作過程や、見どころを語りました。

  • 秋田犬「わさお」と、はしもとさんの飼い犬「月」

会場でひときわ存在感をはなっている秋田犬「わさお」は、飼い主さんへのヒアリングから始まり、完成するまで約半年かかったそう。「耳がぶ厚かった、しっぽは竜巻みたいだった、といったいろんな表現や、膨大な写真や映像を自分の中にとりこんで、“人間3Dプリンタ”みたいになって、いろんな破片をつなぎあわせながら作りました。取材から実制作の期間は2ヵ月くらいです」。

  • 木彫り彫刻家・はしもとみおさん

「実際にはもう生きていない子を現世にもう一度再現する『復元彫刻』は、自分が持っている技術を全部出してもまだ間に合わないくらい、複雑でむずかしい」と語るはしもとさん。「わさお」の隣であおむけになってお腹を見せている「月」くんは、はしもとさんが実際に飼っていた犬です。

「生きている子の形をそのまま写し取る『肖像彫刻』は、作り方がだいぶ違います。月くんの場合は、隣に月くんがこの姿でいて、その現象をそのまま追えばいいので、すごく作りやすいんです」。

  • 実在する飼い猫や、“半”野生の通い猫も

  • しっぽやお尻がキュートな後ろ姿

ここにいる“ケモノ”たちは、美術館やギャラリーのような台座に乗ってはおらず、ガラスケースにも入っておらず、作品キャプションもついていません。間近で見て、一部の作品は直に触れることもできるのです。

  • ひときわ目を引く大きな猫は、野良猫で9キロくらいあったそう

一番奥に設けられた木のステージには、愛らしい子羊や、でーんと貫禄のある猫。よく見ると表面に光沢が。

「テカッとしているのはお客さまの手の脂で、自然のツヤが出ています。触ると彫刻がテカテカになるので、子どもたちにもどんどん触ってもらって、撮影も楽しんでいただけたら」。

  • 触ってみて、硬さで「あ、木彫り」と思い出すほど“生きてる”感が強い

もうひとつの見どころが、古民家のアトリエを再現したミニチュア『はしもとみお氏のアトリエであそぶ純金オブジェたち』。ギンザタナカが展開している“動物オブジェシリーズ”の原型が生まれたアトリエの制作現場を忠実に再現し、ふだんは木彫りの彫刻たちがいる場所に、純金オブジェたち11体を配しています。その原型となった木彫り彫刻と見比べて楽しむことができます。

  • ミニチュアのアトリエは、「薪ストーブがあったりギターがあったり、私の暮らしそのものが再現されています。純金オブジェがいるところに、ふだんは木彫りの彫刻たちがいます」

  • 純金オブジェシリーズの「子ねこ」と「子いぬ」

開催にあたって、はしもとさんは「木はとても長く生きる生命で、動物は短く鋭く生きる生命。そして彫刻になったケモノたちは、ここで金という素材と出会い、長い長い永遠とも言える時を手に入れて、小さな美しい姿になりました。金のケモノたちは何千年後の未来まで駆け抜けて、それでもなお輝きを失わないでしょう。それぞれの生命や素材の持つ時に想いを馳せて、時を手に入れたケモノたちの姿を、ぜひご覧ください」とコメントしています。

生命力にあふれた愛らしい表情を見せるケモノたちに会いに、ぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

■information
「はしもとみお 木彫展 -時をかけるケモノたち-」
期間:2月3日~3月19日10:30~18:00
場所:ギンザタナカ 銀座本店(5階ホール)
入場無料