「気まずい」と「気まづい」は、表記こそ違えどどちらも同じ発音をします。日本語には、「ず」と「づ」、「じ」と「ぢ」のように、同じ発音なのに2つのひらがなで表現ができるものがあります。状況に合わせてなんとなく使い分けていたとしても、自信を持って「どちらが正しい」と言える人は案外少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では、「気まずい」と「気まづい」はどちらを使うべきなのか、「ず」と「づ」、「じ」と「ぢ」の使い分けをくわしく解説していきます。さらに「気まずい」の意味や類語、使い方も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
「気まづい」は誤り、「気まずい」が正しい
「ず」と「づ」は同じ発音ですが、基本的に「気まずい」を表現するシーンでは、「ず」の方を使用するのが正しい仮名遣いになります。まずは「気まずい」の意味や類語など、言葉の意味を理解しておきましょう。
「気まずい」の意味
「気まずい」の言葉の意味は
- お互いの気持ちがしっくりこないさま
- 打ち解けず気詰まりなさま
- (置かれた状況に)違和感を覚える
などがあります。
誰かと一緒にいるときにミスを犯してしまったり、失言をしてしまったりが原因となり、なんとなく居心地が悪くなってしまうこと、またはいつもと違う状況に違和感を覚えるような状況をいいます。
「気まずい」の類語
「気まずい」の類語をご紹介します。
「気まずい」を「その場にいるのが気まずい」という意味で使う場合は
- 居心地が悪い
- ソワソワする
- 身の置き場のない
- 息が詰まる
などの言葉で言い換えることができます。
「気まずい」を「今の状況に違和感を抱く心理状態」として使用するなら
- 場違いな感じ
- 妙な空気を感じる
- ばつの悪い思いをする
などと表現することができます。
「気まずい」の使い方、例文
「気まずい」の意味をしっかりと理解するなら、使い方、例文もチェックしておきたいです。いくつか使い方、例文をご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
・前回、大失敗をしてしまったので、久しぶりの再会で気まずい思いをした。
・彼女とのデート中に元彼女に偶然会ってしまい、3人ともなんとも気まずい空気になってしまったよ。
・意見が衝突してしまい、とても気まずい沈黙が続いた。
・誤解に気づいてくれたのはよかったけど、気まずい思いをさせてしまったな。
・きつく注意してしまったので、私が行ったら気まずい雰囲気に変わった。
「ず」と「づ」はどう使い分ける?
「気まずい」は「気まづい」とは書かないことを理解していただいたところで、「ず」と「づ」の使い分けについても知っておくと、さらに知識が深まります。
原則は「ず」を使用する
「ず」と「づ」の使い分けですが、文部科学省が「現代仮名遣い」として定めたルールがあり、原則は「ず」を使用することを覚えておきましょう。「ず」を使用するのが現代仮名遣い、対して「づ」は、歴史的仮名遣い(昔使われていた仮名遣い)として扱われています。
例えば、現代仮名遣いでは下記のようなルールで書くことになります。
・「いづれ」ではなく「いずれ」
・「ひとりづつ」ではなく「ひとりずつ」
・「いなづま」ではなく「いなずま」
・「おとづれる」ではなく「おとずれる」
・「つまづく」ではなく「つまずく」
しかし、いくつかの例外があり、「づ」を使用することもあります。どういった場合に「づ」を使用するのかといったルールも、ぜひ一緒に覚えておいてください。
同音が続く場合は「づ」
同じ音が続く場合は、「ず」ではなく「づ」を使用するといったルールです。
例えば
- 鼓は「つずみ」ではなく「つづみ」
- 続くは「つずく」ではなく「つづく」
- 綴るは「つずる」ではなく「つづる」
といった表記になります。
二語がつながり生じた言葉は「づ」
2つで構成される言葉がにごる場合は、「づ」を使うことがあります。少しわかりにくいですが、分解できる言葉なのかどうかを判断基準にするといいでしょう。
例えば、
- 三日月は「三日+月」となるので「みかずき」ではなく「みかづき」
- 竹筒は「竹+筒」となるので「たけずつ」ではなく「たけづつ」
- 小包は「小+包」となるので「こずつみ」ではなく「こづつみ」
- 箱詰めは「箱+詰め」となるので「はこずめ」ではなく「はこづめ」
- 常々は「常+々」となるので「つねずね」ではなく「つねづね」
二語に分解しにくいものは原則「ず」を使用するが「づ」もOK
二語で構成される場合は「づ」を使うとご紹介しました。さらに現代仮名遣いでは「ず」が原則ですが、二語に分解しにくい言葉には例外が適用されます。
二語に分解しにくい言葉の場合、原則は「ず」を使いますが、歴史的仮名遣いの「づ」を使うこともできるとされていますので注意しましょう。 例えば、
- 稲妻は「いなずま」が原則、「いなづま」もOK
- 固唾は「かたず」が原則、「かたづ」もOK
- 躓くは「つまずく」が原則、「つまづく」もOK
- 絆は「きずな」が原則、「きづな」もOK
- 訪れるは「おとずれる」が原則、「おとづれる」もOK
などをあげることができます。
音読みで濁っている場合は「ず」を使用する
さらに例外として、
- 図画「ずが」
- 略図「りゃくず」
などのように、音読みでにごる言葉は「ず」を使用します。
「じ」と「ぢ」も同じルールがある
「ず」と「づ」にルールがあるように、「じ」と「ぢ」にも同様のルールが定められています。理解しておくと、今よりも自信を持って文章を書くことができるようになりますので、ぜひ目を通しておいてください。
原則は「じ」
現代仮名遣いの原則は「じ」を使用します。「じ」と「ぢ」の使い分けに関しても、「ず」と「づ」同様のルールが適用されます。
同音が続く場合は「ぢ」
同じ音が続く言葉では「ぢ」を使用します。
例えば
- 縮むは「ちじむ」ではなく「ちぢむ」
- 縮れるは「ちじれる」ではなく「ちぢれる」
といった仮名遣いをします。
二語がつながり生じた言葉は「ぢ」
2つの言葉で成されている言葉は「ぢ」を使用します。
例えば
- 鼻血は「鼻+血」で「はなじ」ではなく「はなぢ」
- 底力は「底+力」で「そこじから」ではなく「そこぢから」
- 入れ知恵は「入れ+知恵」で「いれじえ」ではなく「いれぢえ」
- 間近は「間+近」で「まじか」ではなく「まぢか」
- 近々は「近+々」で「ちかじか」ではなく「ちかぢか」
と書くルールが定められています。
二語に分解しにくいものは原則「じ」だが「ぢ」もOK
二語に分解しにくい言葉については、「じ」と「ぢ」の使い方にも例外が定められています。
- 世界中は「せかいじゅう」が原則、「せかいぢゅう」でもOK
となります。
音読みで濁っている場合は「じ」を使用
例外として、二語がつながり生じた言葉であっても、音読みがにごるケースでは「じ」を使用します。
例えば
- 地面は「ぢめん」ではなく「じめん」
- 布地は「ぬのぢ」ではなく「ぬのじ」
となります。
「気まずい」と「気まづい」を混同しないよう注意
「気まずい」と書く場合、「気まづい」は間違いとなり、正しくは「気まずい」です。どちらも「ず」と発音するので「づ」と混同してしまいますが、「ず」を使うのか、「づ」を使うのかには、文部科学省が定めたルールがあります。
また、「じ」と「ぢ」にも、同じようにルールが定められていますので、こちらも正しく使い分けるようにしたいです。
使い分けがわからなくなってしまったときは、「分解できる言葉かどうか」「音読みで読んだときにもともと濁っている言葉なのか」などで判断してみてください。うまく使い分けができるようになれば、自信を持って文章をつくることができます。しっかりと理解をして、今後に役立ててみてくださいね。