あっという間に2023年がやってきました。年末年始はみなさんどのように過ごされましたか? この時期は、美味しいものをたくさん食べたという人も多いはず。ただ、そのおかげで、「胃もたれしてしまった」「胃がムカムカする」なんて悩みも抱えてはいないでしょうか。今回は医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センターの中路 幸之助先生に、胃もたれの原因や改善策を伺います。

■胃もたれの原因

――誘惑が多い年末年始ですが、どうして胃もたれはおこってしまうのでしょうか?

胃もたれは口から食べた食物が胃にとどまり、次の小腸に移行しにくいことでおこります。その原因として、

①許容量を超える胃内への食事の流入
②胃の蠕動(ぜんどう)運動の低下
③胃の病気

などがあります。

①としてあげられるのが、いわゆる「食べ過ぎ」です。食べ過ぎると胃に食べ物が長くとどまり胃もたれの原因となります。②としてあげられるものが、加齢による胃粘膜の血流低下や、ストレスや基礎疾患(糖尿病など)による自律神経のバランス不調などがあげられます。

③はピロリ菌による萎縮性胃炎、胃がん、逆流性食道炎。これに加え、内視鏡検査では異常が認められないにもかかわらず上腹部症状が認められる「機能性ディスペプシア」といった病気などがあげられます。

■覚えておきたい! 胃もたれ防止法

――なるほど、大きく分けると胃もたれは3つのタイプに分けられるのですね。では、そんな「胃もたれ」を防ぐ方法や、食事の際に注意するべきポイントを教えてください。

・予防法1: 肉類や油ものを控える

食物は種類によって、胃内にとどまる時間に差があることが知られています。例えば、白米が30分程度しか胃にとどまることがないのに対して、ビーフステーキや天ぷらなどの油物は4時間近く胃内にとどまります。このように、肉類や油っこいものを食べることで胃内に長時間食物がとどまり胃の負担が増加。その結果、胃もたれをおこしてしまいます。これらの食事はなるべく控えるようにしましょう。

・予防法2: 早食いをせず、よく噛んで食べる

早食いをすると、脳が「おなかがいっばい」と満腹感を得る前に食べ過ぎてしまうため、胃に許容量をこえた食物が停留し、胃もたれをおこしてしまいます。ゆっくりと時間をかけて食べることが重要です。また、よく噛んで食べることによって満腹中枢が刺激され、適量でもおなかいっぱいになった感じになり、食べ過ぎを予防してくれます。消化を助けることにもつながり、胃もたれの解消の一助となります。

・予防法3: 刺激物はできるだけ避ける

アルコールや炭酸飲料、カフェイン飲料、極端に冷たすぎたり熱すぎたりするもの、からいものは、胃の粘膜に刺激を与え、胃もたれの原因になります。アルコールなどにより粘膜に炎症をきたすと、胃の運動機能が低下します。特に寝る前のアルコールやカフェイン飲料の摂取は、中途覚醒や入眠障害によるストレスを引き起こし、胃もたれの原因となりうるため注意が必要です。

■簡単にできる対処法5つ

――それでも食べ過ぎで「胃もたれ」になってしまったときは、どうすればよいのでしょうか。

対処法1: 消化によいものを食べる

消化されやすいものには、

①脂質が少ないもの
②食物繊維が少ないもの
③加熱調理したもの
④やわらかいもの

などがあげられます。これらの食物は胃の滞在時間が短く、胃もたれがおこりにくいとされています。具体例をあげるなら、脂質が少ないものとしては、白身の魚や鳥のササミが、食物繊維が少ないものとしては、乳製品や豆腐などがあげられます。これらの食品を、なるべく多くとるように心がけましょう。

対処法2: 胃に負担をかけない飲み物を飲む

牛乳や乳酸菌飲料には、胃粘膜を保護する成分が含まれます。加えて、牛乳に多く含まれるカルシウムは、ストレスの緩和にも役立ちます。コーヒーを飲むときはミルクを加え、カフェオレにして飲むようにしてみてください。また、ノンカフェイン飲料も最近増えてきており有用です。スポーツドリンクも胃もたれで食欲のないときの水分補給にいいでしょう。

対処法3: 市販の胃腸薬を服用する

胃もたれに効果がある市販の胃薬には、主にリパーゼなどの消化剤や炭酸水素ナトリウムなどの制酸剤が含まれています。そのほか、胃もたれ以外に伴う症状で胃痛や胸やけがある場合は、胃粘膜保護剤や胃酸を抑えるH2ブロッカーがあります。

大切なのは、これらの市販薬を飲んでも改善しない場合は(おおむね1カ月)、胃や食道、十二指腸、他の臓器(胆のう・膵臓など)に悪性疾患などの器質的疾患がひそんでいる場合があります。改善がみられない場合は、消化器科を受診し、腹部エコー検査・腹部CT検査・内視鏡検査などを受けるようにしてください。

対処法4: 規則正しい生活を送る

遅い時間に夕食を食べると、食べたものを十分に消化せずに寝てしまい、朝の胃もたれの原因になります。少なくとも寝る2時間前までには食事を終わらせましょう。また、夕食後にネットやゲームなどの刺激が強いものを行うと、胃腸の働きが低下するばかりか不眠によるストレスの原因にもなりえます。普段から規則正しい生活をこころがけるようにしましょう。

対処法5: ストレスをためない

大変つらいことがあったとき「断腸の思い」といわれるように、「脳」と「胃腸」は互いに影響しあっています。ストレスは、胃の働きを低下させ、胃もたれを引き起こし、急性胃粘膜障害や胃潰瘍の原因にもなりえます。難しい場合もありますが、できる範囲で趣味やストレッチ、散歩など適度な運動を日常生活に取り入れ、自分にあったストレス解消法を身につけましょう。


すぐにでも取り入れられる手軽で簡単な予防法や対処法を紹介しました。日々の生活にこれらを取り入れ、つらい胃もたれと早めにおさらばしましょう。そして、間もなくやってくる日常生活に備えてくださいね。

監修者 : 中路 幸之助先生


中路 幸之助

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター/米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医/日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医

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