国立科学博物館が実施している皇居の生物相調査(第Ⅲ期)において、鳥類調査班は、今春皇居と赤坂御用地で大型猛禽類であるオオタカとフクロウ両種が同時期に繁殖したことを初めて確認した。これは都心部の緑地における数十年におよぶ鳥類多様化の流れの一環と考えられ、都心部に生息するハシブトガラスの個体数減少が大きく関わっていると思われる。

  • 6月12日 赤坂のオオタカの巣の雛と雌親(撮影:黒田、安藤)

皇居の鳥類調査は、国立科学博物館による調査以外にも山階鳥類研究所により1965年以降、ほぼ継続的に行われてきた。皇居と並んで都心に位置する大規模緑地である赤坂御用地でも、皇居同様に長年の鳥類調査が行われてきた。その結果、皇居や赤坂では繁殖する陸鳥の種が次第に増加してきたことが分かっている。

皇居でオオタカの繁殖(営巣)が確認されたのは2001年、2013年、2015~17年、2019年、2021年で、フクロウの巣立ち雛(またはその声)が確認されたのは2016年と2019年。赤坂御用地ではオオタカの繁殖は2013年、2015~18年、2020年に確認され、フクロウの繁殖はこれまで確認されていなかった。また、オオタカの繁殖行動は国立科学博物館附属自然教育園(港区白金台)でも2017年以降継続して確認され、明治神宮でも2007年以降度々確認されるなど、都心部の緑地での大型猛禽類の繁殖が増えてきている。

第Ⅲ期調査の鳥類調査班は特に繁殖鳥について詳しく調査するため、夜間も含めた調査を行った。5月から6月に行った日中の調査で、皇居と赤坂御用地でオオタカの巣と雛を確認し、両所で2羽ずつ巣内雛の成長を確認した。その後、巣立ち雛の声から4羽すべてが巣立ったと推定された。

また6月から7月に行った21時までの夜間を含む調査で、フクロウの巣立ち雛の声や姿が両所で確認された。観察の結果、それぞれ巣立った雛は1羽のみと推定された。

【鳥類調査班】
西海功(班長)、樋口亜紀(以上、国立科学博物館)、黒田清子、小林さやか、齋藤武馬(以上、山階鳥類研究所)、協力:安藤達彦、安西幸栄

  • 6月12日 赤坂のオオタカの巣の雛と雌親(撮影:黒田、安藤)

ハシブトガラスの都心部での生息数は2000年頃をピークに減少しており、その減少に合わせるように大型猛禽類の生息や繁殖頻度が増加してきた。

ハシブトガラスが減少した理由は、生ゴミを食べられないようゴミの夜間回収やカラス除けネットの徹底をおこなったり、東京都などの行政機関が罠による捕獲駆除や巣の卵や雛の捕獲駆除をおこなったり、公園での鳥への給餌の抑制や自粛がおこなわれたりしてきたためだという。

  • 7月2日 皇居吹上御苑のイチョウの巨木に作られたオオタカの巣(撮影:樋口)

鳥の卵や雛を食べるハシブトガラスの減少が都市緑地での繁殖鳥種の増加にもつながり、近年では大型猛禽類の繁殖の増加にもつながっていると考えられる。

これら大型猛禽類が都市緑地に長期に定着できるのか、あるいは一時的な繁殖に留まってやがて消失するのかは、ハシブトガラスの個体数の今後の動向にも影響されるが、これら猛禽類がどのくらいの広さの行動圏でどのような餌資源に依存して生活しているのかも関係しており、猛禽類の行動圏と餌資源について引き続き調査をしていく必要があるとのこと。