まもなく放送開始53年を迎える日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント』(毎週日曜24:55~)が、『Nドキュポケット』と題して過去の名作の短尺版を制作し、今年3月からYouTubeで配信をスタートした。12月10日現在で117本を公開し、1,000万再生を超える動画も出てくるなど、人気コンテンツとなっている。

一方、放送27年を数えるフジテレビ『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)でも、これまでの話題作をダイジェストにし、11月30日からYouTubeで10タイトルの配信を開始。日本語ナレーション版と英語ナレーション版を制作し、多言語字幕を付けて世界配信を意識している。

市井の人々が主役となるドキュメンタリー番組の場合、ドラマやバラエティに比べて、YouTube配信の権利処理がしやすいという背景もあるが、長寿ドキュメンタリー番組の二大巨頭はどのような狙いでYouTubeに進出したのか。両番組の担当者に、それぞれ話を聞いた――。

  • 『Nドキュポケット』『ザ・ノンフィクション 3mn』 (C)NTV (C)フジテレビ

    『Nドキュポケット』『ザ・ノンフィクション 3mn』 (C)NTV (C)フジテレビ

■高い完走率と若い世代へのリーチ

“ポケットの中に入るNNNドキュメント”という意味を込めて名付けられた『Nドキュポケット』は、YouTubeの『日テレNEWS』公式チャンネルで配信され、再生回数の稼ぎ頭だ。中でも、生まれながらに高IgD症候群という難病と闘う男性の20年を追った『拝啓 連也様 ~マスク越しの闘病20年~』(福井放送制作)は、最多の1,120万再生にのぼり、3,300件以上のコメントが書き込まれている(※12月10日現在)。

動画を最後まで視聴する“完走率”も非常に高いそうで、日本テレビの今村忠プロデューサー(以下同)は「ネットの動画というのは、いわゆる衝撃映像みたいなものが好まれると思っていたのですが、ドキュメンタリーがこれだけ見られるというのは驚きました。しかも、F1(女性20~34歳)・M1(男性20~34歳)という若い世代にも刺さっているので、これはかなり自信になりました」と手応えを語る。

  • 『拝啓 連也様 ~マスク越しの闘病20年~』より

■放送53年も危機感「いつ終わってもおかしくない」

こうした新たな取り組みを進める背景には、老舗番組でありながらも抱く、時代の変化に伴う番組終了への危機感があった。

「『キユーピー3分クッキング』『笑点』に次ぐ日本テレビで3番目の長寿番組なのですが、テレビ報道のスタイルがどんどん変わって、インターネットが普及していく中で、1本のドキュメンタリーを長期間かけて作るというのは、費用対効果を考えると、あまり効率は良くないんです。社内でも『Nドキュって、いつ終わってもおかしくないよね』という話を聞くことがあって、このままではいつかその時が来ると思っています」

だが、「『NNNドキュメント』の放送をきっかけに、これまで一部の人しか知られてなかった問題が全国的に知られるようになり、それが大きな社会問題として日本中で考えられるようになって、国や行政などが動き、解決の道に進んでいく……そんなケースがいくつもあります。取材を受けた難病患者の家族の方は『池に投げた小石くらいの小さな波紋も、みんなの力が加われば大きな波となって山をも動かす力を持つんですね』と話してくれたことがあります」と明かし、「テレビには社会を変える力がまだまだあるので、この番組を終わらせてはいけないんです」と力説。

そのためにも、『Nドキュポケット』で爆発的な再生回数が続出するパワーを持つコンテンツであることを社内にも示し、短尺版の視聴をきっかけに、『NNNドキュメント』本編の放送を見るという流れを作ることを目指している。

そして、これまで放送された2,600本を超えるアーカイブは、その時代の社会や風景を記録した資料的価値も大きいため、「権利関係でクリアできるものがあれば、アーカイブも順次配信していければと思っています」と構想を明かしてくれた。