クルマを買って所有するのではなく、月額料金を支払って使用するサブスクリプションサービス「KINTO」が契約件数を伸ばしているようだ。同社の小寺信也社長は、オンライン説明会でKINTOの現状についての報告を行った。サブスクの重要性は今後、ますます高まる?

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今でも「クルマは買うもの」なのか

KINTOの契約件数は、2022年11月末時点で累計5.2万件に到達。2021年末の3万件から、この11カ月で2.2万件の上積みを果たしたことになる。

小寺さんはKINTOの現状について、「申し込みは着実に増加」しており、この9月、10月は過去最高の件数を達成したものの、当初はもう少し早いスピードでクルマのサブスクが普及すると想定していたため「思ったよりも難しかった」と話す。普及スピードが想定通りに上がらなかった理由としては、「クルマは買うもの」という価値観がなかなか切り替わっていかなかったことを挙げた。

着実に増えてはいるKINTOの利用者だが、トヨタが日本国内で年間140万台弱(2021年度の実績、軽自動車を含む)のクルマを売る企業だと考えると、5.2万件というのは多いとはいえない数字だ。

トヨタの販売面にとって、KINTOの意義とは何か。小寺社長はKINTOユーザーの半分以上が20~30代の若年層であり、初めてのクルマとしてKINTOを使う客や、中古車でクルマデビューを果たして間もなくKINTOに乗り換える客も多いことを指摘しつつ、「これまで販売店とは全く接点がなかった」新規客をウェブで集客し、販売店に送客できている点を説明した。

KINTOでは新型「プリウス」をラインアップに加えるタイミングで新サービス「KINTO Unlimited」の提供を始める。サブスクで提供した後もクルマにアップデートを実施し、利用者に付加価値を提供していく取り組みだ。アップデートというアイデアが生まれた背景として、KINTOは以下の3つのデータを示した。

  • 世界にはトヨタのクルマが約1.5億台ある→全ての顧客と接点を持てているわけではない。

  • 日本の新車保有期間は過去10年で3割伸長して8年に→最新の技術を全ての顧客に提供できていない。

  • クルマの価格は先進安全装備の標準化などを背景とし、過去10年で3割上昇→クルマを買うことがさらに難しくなっていく。

こうした状況を踏まえ、KINTOでは「クルマを届けた後、いかに付加価値を提供していくか」を考え、アップデートというアイデアにたどり着いたという。クルマのアップグレードにより価値の下落を食い止め、KINTOでの利用期間終了後の中古車としての価値を上げることができれば、KINTOの月額料金も従来より安く抑えられる。実際、新型プリウスの月額料金は、従来のプランでの試算より10%程度安くできるらしい。

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クルマの価格上昇について小寺さんは、「クルマの価格そのものが今後、ずいぶん高くなりそうだと思っています。背景としてはCO2削減のための電動化、安全装備の規制の厳格化、自動運転関係の技術開発が進むからです。お客様にとって、いつか、クルマが手が届かないものになるのではないかと心配しています」と懸念を示す。サブスクの月額料金を低減できる新サービスにかける期待も大きいようだ。