今年の冬は、今夏を上回る新型コロナウイルス感染拡大が生じる可能性があることに加え、季節性インフルエンザも流行し、より多数の患者が同時に生じる可能性があると厚生労働省が発表しています。

同時流行に備え、注意点や対策ついて医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センターの中路 幸之助先生に教えていただきました。

―同時流行した際の注意点について教えていただけないでしょうか

南半球のオーストラリアでのインフルエンザの流行を見てみると、2022年4月後半から報告数が増加し、前年を超えるレベルの患者数となり、医療のひっぱくが問題となっています。日本でも今年の秋から冬には、オーストラリアと同様の流行が起こる可能性があります。さらに、懸念される点はこの2年間は日本国内でのインフルエンザ流行がなかったために、日本の社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していると考えられ、一旦感染がおこると、いっきに大きな流行となる可能性があることです。

ウイルスについては、日本でもオーストラリアと同様のA(H3N2)香港型の流行が主体となるとされています。同時流行した場合は、今まさに始まろうとしている新型コロナウイルスの第8波と重なり、医療現場では感染症患者があふれ、医療のひっぱくは避けれないと考えられます。

―同時流行に備え、準備しておくべきことを教えていただけますでしょうか

同時流行に備えてするべきことは、まず従来株とオミクロン株派生型のBA.5などに対応する2価ワクチンの接種と考えます。従来型ワクチンの4回目接種を受けた高齢者の方も、年内にオミクロン株対応ワクチンの接種を受けることが可能です。年末年始は帰省やなど人の移動が多くなる時期であり、感染のリスクがいっきに高まります。よって、年内のできるだけ早い時期のワクチン接種をしておくことが重要です。そして、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能ですので、早めのインフルエンザワクチン接種が重要です。

また同時流行時は、医療のひっぱくを緩和するため、政府主導で発熱外来の受診制限がおこなわれる可能性があります。つまり、発熱外来の受診対象となる患者は、新型コロナウイルスの重症化リスクが高い高齢者・基礎疾患のある人・妊婦・小学生以下の子どもに限られます。

基礎疾患のない重症化リスクが低い人などは、新型コロナ抗原検査キットを使って自分で感染の有無を確認します。陰性であれば、電話やオンライン診療などを利用します。インフルエンザであろうと診断されれば自宅療養となります。新型コロナ抗原検査キットで陽性だった場合は、都道府県の健康管理センターに登録し、自宅療養を行います。厚労相は「重症化リスクの高い人に適切な医療を提供するため、皆さんの外来受診への協力が不可欠です」と発言しています。そのため、同時流行に備えて自分で検査キットを確保しておく必要があると考えます。

―のどの痛みや発熱などの症状が出たら、まずやるべきことは何でしょうか

まず医療機関に電話連絡をし、新型コロナウイルス感染症に対する抗原検査・PCR検査を行うことが重要です。

高熱・関節痛や周囲にインフルエンザの人がいた場合、同時にインフルエンザの抗原検査も必要と考えます。その他、両方陰性であっても高齢者などでは肺炎などの重症な疾患の可能性もあり、状況に応じて胸部レントゲン検査や胸部CT検査が必要となる場合があります。

東京都医師会は同時流行時において「自宅で抗原検査キットを使ってコロナでないという可能性が極めて高いと分かった場合、従来通り医療機関を受診していただいてください」と発言しています。これは、実際に診察して検査をしないと、インフルエンザか他の肺炎などの感染症かが分からないためです。

監修ドクター:中路 幸之助先生

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター/米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医/日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医


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