――話を今シーズンに戻して、ご自分のなかでベストと思っているプレーをひとつあげるとすれば何になるでしょうか。

僕のなかでは、清水エスパルス戦でレオ・セアラ選手のゴールをアシストしたパスが、今シーズンのプレーのなかで今年一番かなと思っています。レオ・セアラ選手の1点も3点目も、両方とも僕のなかではすごくいいアシストでしたね。ゴールもそうですけど、自分のイメージ通りにボールが入っていくとアシストはめちゃくちゃ気持ちがいい。その意味でエスパルス戦は確かに印象には残っています。

――レオ・セアラの1点目のアシストはしびれました。右サイドから相手選手の合間を縫う高速の低空クロスを、飛び込んできたレオ・セアラの左足にピタリと合わせましたからね。しかもF・マリノスの通算500勝を、1勝目をあげた国立競技場でマークしました。

あの試合は5-3で勝利しましたけど、今シーズンのF・マリノスを象徴していたと思っています。何点取られようが僕たちは何点でも取るんだ、という姿勢を示せた試合でもあったので。当時は連勝中で、最終的に6連勝まで伸ばしましたけど、改めて振り返ってみればあの連勝がF・マリノスにとってすごく大きかった。日本独特の蒸し暑い夏に差しかかったときにどれだけ勝ち点を伸ばせるか、と思っていたので。

――以前に「真夏の試合で大きな声を出すと倒れそうになる」とうかがいました。

その通りです。特に国立の清水戦はあまり風通りがよくなくて、蒸し暑くてピッチ上がモワッとしていたので「きつかった」という印象もあります。夏場は本当に倒れそうになりますが、自分が声かけることによって失点が防げるとか、点が入るといったことに繋がるのだったら、倒れても声を出し続けたいし、それが自分の特徴でもある。チームのためなら何でもしたいという気持ちが強いです。

――フォア・ザ・チームの気持ちは、33歳で迎える来シーズンにも。

それが自分らしさ、というのもあるし、それがなかったら自分のプレーに対して後悔すると思うので。2連覇への挑戦権を得たのは僕たちだけですし、もちろん2連覇は絶対にしたいところですけど、ひとつタイトルを取るとどんどんタイトルに対しての欲が出てくるんです。取れるタイトルは全部取りたいし、そのなかでACLもまだ僕らが取っていないタイトルなので、アジアのチャンピオンになる、アジアに自分たちのサッカーを見せつけることができれば。そのなかでチームのために戦い続けるのが自分らしさにつながるので、声を張りあげることを含めて、僕はやり続けます。

――F・マリノスは岡田武史監督に率いられた03、04年に連覇しています。

僕がF・マリノスのジュニアユースの2年と3年のときですね。あの頃はJリーグの試合を見にいく機会が多かったので、余計に自分が優勝したときはうれしかったです。

――当時のF・マリノスの主力で、2011年8月に急死された松田直樹さんの背番号「3」が記されたユニフォームを、優勝した後にファン・サポーターへ掲げていました。

チームが僕に渡してくれたんです。僕としては誰が掲げてもいいかなと思っていましたけど、キー坊(キャプテンの喜田拓也)が「宏太くんが持つことが大事だ」と言ってくれて、F・マリノスにはいまでもマツさんの魂がありますし、一緒にプレーした人が少なくなっているときに、マツさんってこういう人だったんだよっていうのを教えたいと思うし、それを体現できるのはもう僕しかいないので。簡単にできることじゃないですけど、似たようなことだったらもしかしたらできるかもしれない。マツさんがこういうことをやっていた、というのを伝えていきたい気持ちはあります。

――今シーズンだと、松田さんと一緒にプレーされたのは水沼さんだけでした。

僕しかいないですね。その意味でも、マツさんの魂はF・マリノスにずっと残し続けたい。F・マリノスを出て栃木へ行くときも、マツさんからは「お前は試合に出た方が絶対にいいよ」と言ってくれて。当時の僕はまだ若かったし、相談するどころか、話しかけるのも緊張するぐらいだったんですけど、確かにその言葉もあって決断しました。どこにでもマツさんは見に来てくれると思うし、きっと神戸にも来てくれていたと思うので。みんなが優勝を喜んでいる姿をマツさんに見てもらえていたらうれしいです。