NTT東日本、北海道電力、北海道銀行、パーソル ホールディングスは、10月1日に「北海道 地域応援プラットフォーム」を開設。道内企業のさらなる事業活性化を目指すための新規事業とのことですが、全く異業種の4社がどのような経緯で手を取り合うことになったのか、どのような仕組みで道内企業を応援しようとしているのか、各社担当者に話を伺える機会がありました。

本プラットフォームの仕組みやサービス内容をはじめ、開設に至るまでのプロセスを説明いただくうちに、自然にあふれ出てきたのは各担当者の北海道に対する思いや今後の展開への期待。そして、メンバー同士のお互いへの信頼感。本プラットフォームが生まれた背景や会社の枠を超えての"つながり"を紹介します。

  • 10月1日に開設した「北海道 地域応援プラットフォーム」 提供:NTT東日本

「北海道 地域応援プラットフォーム」とは?

本プラットフォームは、コミュニティオーナーである4社がもつICT、エネルギー、金融、人材という各領域でのノウハウやサービスを提供しながら「北海道の企業が抱える課題解決をサポートする」ためのオンライン上のコミュニティサイトということです。

  • 「北海道 地域応援プラットフォーム」の取り組み全体像 提供:NTT東日本

「現在は、ウクライナ情勢などで世界経済が多大な影響を受ける中、環境問題など地球規模での課題も顕在化しています。物価高や情報社会によるニーズの多様化など、道内の事業者さまは経営の舵取りが大変難しくなっていると考えています。今回私たちは、地方創生・地産地消を目指して地元の事業者さまが主役になれる経済をつくっていきたいとこのプロジェクトに向き合っています」(NTT東日本-北海道 取締役企画部長 古野啓介さん)

  • NTT東日本-北海道 取締役企画部長 古野啓介さん

「例えば税務のこと、インターネットのこと、人材のことなど、課題を抱えている道内企業は多いと思います。北海道で頑張っている企業の真なる悩みや相談ごとを真摯に受け止め、答えられるようになりたいという、4社共通の思いから構想し、体現したのが本プラットフォームです」(NTT東日本-北海道 パートナービジネス部 ディーラーアカウント部門 コラボレーション推進担当 担当課長 河井潤さん)

  • NTT東日本-北海道 パートナービジネス部 ディーラーアカウント部門 コラボレーション推進担当 担当課長 河井潤さん

一般的には、新規事業を立ち上げる際、その事業の採算性を考えますが、「この事業は、短期的な視点で何かを得ようとするものではなく、北海道が持続的に発展できるサイクルをつくれるかどうかという中長期的・本質的な視点でスタートしています。道内企業が循環し合えるサイクルをつくれなければ、北海道に根ざして事業をしている私たちも生きていけません」とNTT東日本の古野さんの説明に、他の皆さんも大きくうなずきます。

本プラットフォームの仕組みは?

本プラットフォームの参加費は無料。道内に事業所がある企業の経営者・従業員であれば誰でもコミュニティメンバーとして加入できます。

参加申請して会員登録したコミュニティメンバーは、本プラットフォームにアクセスし、現時点では主に以下のような機能・サービスが利用可能。コミュニティメンバーが自由に悩みごとを投稿してコミュニティオーナーからアドバイスなどを受けられる「相談機能」、メンバー同士のコミュニケーションの場となる「トーク機能」、時流を捉えたウェビナーなどを実施する「イベント機能」、コミュニティオーナーが記事を発信する「マガジン機能」です。

そして、投稿された課題やニーズに対して、コミュニティオーナーが中心となって解決に向けたサポートをしたり、ビジネスイベントを実施したり、解決策を具体的に提示していくという仕組みなのです。

  • 「北海道 地域応援プラットフォーム」の仕組み 提供:NTT東日本

本プラットフォーム開設までの経緯は?

今回の取り組みの発端は、2021年12月1日、ほくでんグループとNTT東日本が「地域の発展に向けて連携協定」を締結したことがきっかけだといいます。

「本州に比べてインフラ設備が多く、コストがかかる構造を何とかできないかなど設備のシェアリングビジネスを検討してきた中で、北海道のために新しいビジネスを考えたいという思いが自然に高まっていきました」(河井さん)

ところが、こうして各自が期待を持ち寄って議論を始めたものの、論点を当初は絞り切れず、「広大な大地での輸送コスト効率化に貢献できないか」「エコツーリズムの観点から企業をつなぎ活性化できないか」など、ありとあらゆるアイデアが登場。

そこに意見を出し合い、さまざまな切り口で検討を重ねた結果、「まずは地元の企業の声を聞き、コミュニケーションをとること」がすべての出発点と認識し、「北海道がつながる」というコンセプトで施策内容をブラッシュアップしていったとのことです。

「そして、仲間は多い方がいいよねと、以前からさまざまな場面で交流があった北海道銀行さん、パーソル ホールディングスさんに声をかけさせていただいたんです」(北海道電力 経営企画室 新領域創造グループリーダー 吉本岳史さん)

  • 北海道電力 経営企画室 新領域創造グループリーダー 吉本岳史さん

北海道銀行の盛さん、パーソル ホールディングスの中野さんもすぐに賛同したそうです。

「これまでの銀行は、1対1の対応が主体ですが、新しいことにチャレンジしたいと考えておりました。コミュニティとデジタルを通して何か新しい事業を生み出し、北海道に貢献する取り組みが必要と思っていたんです。4社が結びつくことで大きな可能性が生まれるのではないかと参加しました」(北海道銀行 コンサルティング営業部 次長 兼 シニアマネージャー 兼 特命担当部長 盛英二さん)

  • 北海道銀行 コンサルティング営業部 次長 兼 シニアマネージャー 兼 特命担当部長 盛英二さん

「私たちパーソルホールディングスでも北海道など地域の活性化は大きなテーマと考えていますが、人材事業者だけでは解決できない問題があります。ですから、声がけしていただいて大変ありがたいです。特に人材不足など『顕在化したニーズ』はわかりやすいのですが、経営課題と結びつくなど潜在的な人材課題が眠っている可能性もあります。そこで4社それぞれの強みを生かし、北海道の企業に安心感や期待をもっていただける取り組みにしたいと思っています」(パーソル ホールディングス グループ営業本部 事業開発統括部 担当部長 中野裕介さん)

  • パーソル ホールディングス グループ営業本部 事業開発統括部 担当部長 中野裕介さん

「このメンバー全員で前向きに議論し、忌憚のない意見を交換できたからこそ、本プラットフォームを世に送り出せました。北海道に貢献したいという共通の強い思いがあったからだと思います」(古野さん)

今後想定される展開や期待していることは?

「正直、どのような悩みが寄せられるか想定しきれていない」と皆さん声をそろえつつ、まずは、実際の経営課題や問題を知りたい、しっかり向き合っていきたいとのことです。そして、早期にスモールサクセスとなる解決事例をできるだけ多く発信し、地域の方たちから「何だか便利そうだな」「地域のためにひと肌脱ごうとしているのかな」という印象を持ってもらえるように頑張りたいと意欲的です。

「本プラットフォームの事務局としてお客さま視点に立ってどうすればいいか一緒に悩み、向き合っていきます」と河井さん。

「NTT東日本で解決できるアセットをフル活用して最適な解決案をご案内し、継続的にお客さまに寄り添っていきます。具体的には電子帳簿保存法とかインボイス制度への対応など北海道ならではの時節に合わせた最新情報などを発信して入っていただいた方に実利のある内容をお届けしたいです」

本プラットフォームはゴールではなくスタート。そのため参加者の意見を取り入れて提供内容やサイト構成を柔軟にブラッシュアップしていくそうです。

道内出身である吉本さんは「地元で父が事業を営んでいることもあり、周辺から直接的に人材不足とか事業承継とかいろいろな悩みを聞きます」とのこと。「同じように課題を抱えている北海道の企業は多いと思いますので、今後より多くの企業にご参加いただき解決のお手伝いをしていきたいです」と抱負を語ります。

「パーソルでは、経営課題の相談などを通して潜在的な人材課題が浮かび上がり、北海道ならではの具体的事例を提示できたらと考えています。対象企業さまと議論、対話が長く続いていくことを期待しています」(中野さん)

「4社によるこの取り組みが"渦"となってどんどん広がれば、いずれ北海道全体の活性化に"うねり"をもたらすのではないかと楽しみです」(盛さん)

本プラットフォームが開設され、コミュニティオーナーの思いに共感したという方たちから「ぜひ入りたい!」「応援するので頑張りましょう!」といううれしい声がすでに届いているようです。今後はさらに口コミが発生するレベルまで認知が広がり、「参加者を加速度的に増やしていきたい」「北海道を盛り上げたい!」と期待はさらにふくらんでいます。

企業の垣根を超えて「チーム」に

メンバー同士の議論は前向きにぐんぐん進んだようですが、各社の社内での反応はどうだったのでしょう。

「私がこの議論に参画した当初は、自分たちに対してどんなリターンがあるの? という社内の声は確かにありました。でも、構想が具現化するほどに賛同者が増えたんです。さらに、日本の他地域でも同様の展開ができるのではという前向きな意見も出るなど弊社内の活性化という観点でも意義深い、価値ある取り組みとして今では認識されています」(中野さん)

「最初から100点を求めたら、従来のままの弊社ならばやめるかという結論になっていたかもしれません。でも、まずはやってみようとチャレンジできる風土になっている!それを感じられたことの意義はでかい! です」(吉本さん)

皆さん社内ではポジティブな反応が多く、会社として応援したいというムーブメントが起きていると感じているそうです。

北海道出身で生粋の道産子である吉本さん、北海道銀行の盛さん。また、NTT東日本の古野さんと河井さん、パーソル ホールディングスの中野さんは出身地ではないものの、北海道のことを知るほどに「大好きになった」と北海道愛を語ります。

「今回の取り組みは、北海道で生きていくとはどういうことかを真剣に考え、学ぶ、とてもいい機会になりました。本当に魅力のある土地だと感じています」(河井さん)

「道民が北海道を大事に思う気持ち、地元への誇りは、他府県と比べても大変強いと感じています。私たちはそんな北海道を応援したい。私たちメンバーがこうしてつながり、手を取り合って取り組むことになったのは必然的な流れだったのではないかと思うほどです」(古野さん)


企業の垣根を超えて「チーム」となった皆さん。お互いへの強い信頼感、北海道愛を感じる座談会となりました。生まれたばかりの「北海道 地域応援プラットフォーム」が継続し、今後どのような成長をたどるのか。とても楽しみです。