今年6月、フジテレビの社長に就任した港浩一氏。『とんねるずのみなさんのおかげです』初代総合演出で、木梨憲武のキャラクター「小港さん」のモデルとしても知られるだけに、就任のニュースが報じられると大きな反響があがった。グループの共同テレビ社長から復帰するという異例の起用となったが、驚きとともに「再びフジテレビを強くしていく使命感というのも感じました」と強い決意を語る。
フジから7年間離れ、「だんだん元気がなくなってきているように見えていた」というが、それをどのように取り戻そうとしているのか。さらに、1月改編という異例のタイミングでお昼の生バラエティを復活させる決断の背景や期待なども含め、たっぷりと語ってもらった――。
■とんねるずら多くのタレントから応援・祝福
――共同テレビから、再びフジテレビに戻って社長就任というのは異例のことだと思いますが、就任の要請を聞いたときの心境は、いかがでしたか?
それはもう、とても驚きました(笑)。ただ、フジテレビがこれまで2回(視聴率)三冠を取ったときに、自分は制作現場でそれを経験しているから、再びフジテレビを強くしていく使命感というのも感じました。
――内定が発表されると各媒体でニュースとして取り上げられましたし、反響も大きかったのではないでしょうか。
5月15日で古希(70歳)になったので、みんなでそのお祝いを予定してくれていましたが、5月16日に内定が発表されて、皆さん、ものすごく喜んでくれて、応援の声をたくさん頂きました。
――とんねるずさんをはじめ、タレントさんからの反応はいかがでしたか?
長いお付き合いの(石橋)貴明さん、(木梨)憲武さんも、秋元(康)さん、ヒロミさん、(藤井)フミヤさんとか、ネプチューンの皆さん、THE ALFEEの皆さん、竹内まりやさん、森高千里さん、松田聖子さん、和田アキ子さんもすごく喜んでくれました。さだまさしさんと水谷豊さんは同じ古希なので、一緒に頑張ろうと、応援してもらいました。
それから最近、レギュラーと特番含めて全番組に「陣中見舞い行脚」をやっていて、お世話になっているタレントさんにご挨拶していますが、応援や祝福の言葉をいっぱい頂き、ありがたく感じています。
――久しぶりにフジテレビの現場を訪れていかがですか?……と聞こうと思いましたが、共テレ社長時代もたびたびいらっしゃっていましたもんね。
よくフジテレビにも来ていたから、久しぶりという感じではないのですが、やっぱりみんな盛り上がってくれるし、そのへんの元気さは変わらないなと思いましたね。
■クリエイターをリスペクトする会社だった
――共テレに7年間いらっしゃったわけですが、その立場からフジテレビをどのようにご覧になっていましたか?
以前よりだんだん元気がなくなってきているように見えていましたね。決定に時間がかかったり、ノリの良さやおおらかさみたいなものが、少しずつなくなってきたりしているのではと感じていました。
それと、制作現場が少し窮屈になっているのではないかとも思いました。番組の最後にスタッフロールが流れますが、今はものすごい人数になっているじゃないですか。情報量が多くなって作り方も変わってきているとは思いますが、分業制でやっていくより、誰かが中心になって思い切りやったほうが番組作りとしてはいいと考えています。
――それこそ港さんは、『みなさん(とんねるずのみなさんのおかげです)』の立ち上げからディレクター1人体制でやってらっしゃいました。
ある時期までですけどね。もちろん1人ではできませんので、自分が中心となってグイグイ引っ張っていく形でやっていたのですが、やっぱり番組って誰かが本気になって、夢中になって、そこにみんなが付いていくような形のほうがいいと思っています。
――共テレさんでは他局ともお付き合いをしていたわけですが、そこを見て参考になる部分はありましたか?
NHKさんには『チコちゃんに叱られる!』や長時間の中継番組を発注していただきしましたが、我々フジテレビの匂いを持っている制作会社を、すごくリスペクトしてくれると感じました。スタジオの仕切り方とか作り方とかも含めて、NHKさんにない風を吹かせてくれたと、褒めてくださいました。
TBSさんには日曜劇場の発注をいただきまして(『危険なビーナス』)、すごいなと思ったのは、収録で緑山(スタジオ)に差し入れに行くと、TBSの方が誰も来ていないのですよ。企画を決める際のやり取りはもちろんありますが、決まったらもうあとはほぼ任される。これは責任重大だなと感じましたし、思いっきり頑張らなきゃと思いますよね。
局としてこういうやり方もあるのだな、と思って比較しながら、どのやり方がいいのだろうかということを考えていましたね。
――そしてフジテレビに戻られて、この7年で感じたことをどのように生かしていこうと考えているのでしょうか。
窮屈になっているところは、そうではなくしていこうと。例えば、企画の決定が遅くなっているところはスピードアップすればいいわけで、制作現場の誰かが「これを作りたい!」という強い思いを持っていれば、それに対して編成が「いや、もっとよく考えよう」となるのではなくて、面白そうだと思ったら乗っておだててくれと。そうしたら現場が力を発揮するはずだから。これは編成だけの話ではなくて、僕も含めて上に立つ者が「よし、面白そうだからやろう!」とGOを出して実現していく環境を作ることが大事だと思います。クリエイターをリスペクトするということ。フジテレビはもともとそういう会社だったのですから、少し忘れそうになっていたところを元に戻そうと思います。
――就任挨拶で、「明るく楽しく元気なフジテレビのDNAを蘇らせる『フジテレビ ルネサンス』」を掲げられました。
何かきっかけがあれば、「そうだよな」って思い出すはずです。就任から3カ月で、徐々にそういう雰囲気になってきていると感じています。