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演劇的なアプローチからコントを見せるダウ90000が頭角を現す一方で、近年は演技力の高い芸人が増え、演劇とコントのボーダーラインがなくなってきている印象がある。『有吉の壁』『笑う心臓』といったお笑い番組や、『寝ないの?小山内三兄弟』『でっけぇ風呂場で待ってます』などのドラマと、ジャンルを超えて手がける橋本氏は、どのように見ているのか。

「芸人さんの演技力がすごくなっているのは、今、学生お笑いがすごく盛り上がっているのもあると思います。僕が学生時代に作った『コント集団ナナペーハー』には、当時8人くらいしかいなかったのに、今のチラシを見たら30~40人いて、コントをやる裾野が広がってるんですよね。また、かが屋とかハナコとか、すごく分析して計算したセリフのコント作るタイプの芸人さんも増えてきてるし、彼らは作劇もできる。ダウも、『キングオブコント』にも『M-1』にも『ネタパレ』にも出るし、カテゴリーを超えている存在はカッコいいですよね。だから、面白いものを作るということに、もう境ってないのかもしれないです」

出来の悪いドラマを揶揄するのに「コントじゃないんだから」という言い方もあったが、コントがドラマより劣る作品という認識も、もはや過去のものだ。

「東京03さんのコント番組で、ゲストの俳優さんが『こんなにプレッシャーを感じる番組はないです』と言ってくださって、全部セリフを入れてきて、本番で真剣勝負されるんですよ。実はコントって、笑いを取らないとその芝居は意味がないというすごくシビアなステージなんですよね。そこに対して、俳優の皆さんがリスペクトしてくださるというのをすごく感じました」

  • 東京03

■世代を超えて取り組むことの意義

これまで様々な番組を手がけてきたが、「残りの人生はコントを盛り上げていきたい」という橋本氏。その真意を聞くと、「南原(清隆)さんが『結局、学生の頃にやってたことが一番やりたかったことなんだよね』と言ってたのに『なるほど』と思って、だから自分も最後はコントに戻るんだろうなと。だけど1人で戻るのも寂しいから、ダウ90000を巻き込んで一緒にやらせてもらってるんです(笑)」と答え、「今後、第2弾、第3弾とやれたら最高ですね」と構想を語る。

また、世代を超えて一緒に取り組むことによって、「クリアできる問題もあるし、もっと豊かになってくるし、もっと大きなことができると思うんです」と意義も強調。

さらに、「メディアやプラットフォームがいっぱいできて、“推し文化”と言われるように、好きなものをより楽しんで生きていける時代になってきた中で、『お笑いが好き』『コントが好き』という人が生まれて、それがずっと続いていくって、文化の継承として本当に素敵なことじゃないですか。僕はシティボーイズやジョビジョバを見て憧れて『コントって最高だな』と思ったので、ダウを見てまたグループを組んでコントをやる人たちが出てくるだろうと思うと、楽しみですよね」と期待を述べた。

●橋本和明
1978年生まれ、大分県出身。東京大学で落語研究会に所属し、現在も続く「コント集団ナナペーハー」を立ち上げる。同大大学院修了後、03年に日本テレビ放送網入社。『不可思議探偵団』『ニノさん』『マツコとマツコ』『卒業バカメンタリー』『Sexy Zoneのたった3日間で人生は変わるのか!?』などで企画・演出、18年・21年の『24時間テレビ』で総合演出を担当。現在は『有吉の壁』『有吉ゼミ』『マツコ会議』といったバラエティ番組のほか、『寝ないの?小山内三兄弟』『ナゾドキシアター「アシタを忘れないで」』『あいつが上手で下手が僕で』などドラマ・舞台の演出も手がける。