もしも時間が目に見えたら、どんな形や大きさで、どんな重さをしているのでしょうか。Twitterでは、廃墟で撮影された1台のピアノが「退廃の美」だと話題になっています。

時間の重みに耐え切れずに、沈んでしまったピアノの写真です。
(@JIYUKENKYU_jp)より引用

  • 提供:toshibo|廃墟と写真

廃墟に佇むピアノ。鍵盤を支える棚板が外れてしまっています。支えを失った鍵盤は、なんとか形を保っているものの、今にもガラガラと音を立てて崩れ落ちてしまいそう。まるで、廃墟で静止していた時間たちが、重みを帯びてピアノに寄りかかっているようです。

写真を見た読者からは「異次元です。これは超絶すごい!」「美しい朽ち方……」「なんか安心するのなぜだ」などの声があがっています。

また「FF7の神羅屋敷にありそうなピアノ」「芥川龍之介思い出した」「次の油絵の題材候補」などゲームや芸術作品を連想したという声も。

廃墟の魅力を聞く

――この写真はいつ、どこで撮影されたものでしょうか?

4年ほど前に山奥で見つけた廃校で撮りました。

――「時間の重み」という例えは、どういった経緯で浮かびましたか?

見たままがそうなのでそのように書いているのですが、気に入ってるので何度かツイートしています。

経年変化で崩れかけているのは「時間」、重力で落ちてきているので「重み」と、簡潔に言い換えているような感じです。

――廃墟の魅力を教えてください。

「廃墟には想像の余白」があると、よく言っています。良くも悪くも、廃墟はその場所の写真を見た人が様々な想像を思い巡らせる事ができます。

例えば、誰かには綺麗に見えても、他の誰かには恐ろしく見える人もいる。当時の面影を懐かしく感じる人もいれば、現状に憤る人もいる。と言った感じでしょうか。

それをひっくるめて「想像の余白」と言っているのですが、それが魅力かと思っています。

――この投稿が注目を集めたことに対して、素直な感想をお聞かせください。

このピアノはもう完全に崩れてしまっているのですが、その点を踏まえてみると、とても芸術作品のような雰囲気と哀愁を感じます。そういった部分が一目で分かるので、評価されたのだと思います。色々なコメントを見て、そう感じました。

あと、11月3日に「廃墟景観シンポジウム」がデザイン・クリエイティブセンター神戸KITOホールで開催され、私もトークセッションで登壇します。廃墟景観が持つ価値や可能性について考えるディスカッションを行うので、廃墟の魅力に興味があればのぞいてみてください。


このピアノがどんな音楽を奏で、どんな人々を魅了してきたのか。できることなら時間を戻して、その音色を聞いてみたいものです。