俳優の大浦龍宇一が、東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『個人差あります』(毎週土曜 23:40~)での撮影のエピソードや共演者の印象を語った。

  • 大浦龍宇一=東海テレビ提供

同作は、日暮キノコ氏が『モーニング』(講談社)で連載した『個人差あり〼』を原作に、妻の苑子と暮らすサラリーマン・磯森晶の身体的性別が変わってしまう「異性化」を通して、夫婦や恋愛の多様なあり様を描くラブストーリー。主人公・晶役は、異性化前の男性を白洲迅が、異性化した女性を夏菜が2人で1役を演じ、晶を支える妻・苑子を新川優愛が演じている。

苑子とのセックスで再び「異性化」して女性の姿に戻った晶。第5話では、晶が男性に戻ったきっかけが“浮気”だったことに気づき、苑子が家出してしまう。悩む苑子に編集者の菊原(鶴田真由)は、スミレ(大浦)を紹介、2人は意気投合していく。女装した男性・スミレの正体は、晶の頼れる上司「澤俊之」だった。

■大浦龍宇一 コメント

――晶の上司・澤を演じながら、女装する「スミレ」という別人格を演じてみて、いかがですか?

とても楽しく演じさせていただいています。個人的には、シングルファーザーで息子を引き取ってから、連ドラは基本的には引き受けられなかったという状況の中で、今回8年ぶりぐらいにレギュラーのお仕事をさせていただいて、しかもこんなにやりがいのある役をいただけたのが本当にうれしいです。

――「澤」と「スミレ」、演じ分けのプランなどは?

最初に監督とお話した時に、「第5話まで、澤とスミレが同一人物と視聴者にバレないで欲しい」という話がありました。その区別ではないですが、まずは澤の声を低く話すことから始めました。ただ、声のトーンを下げると(人物が)固い感じになってしまうので、その辺は彼のキャラにはないので苦しかったです。ただ、スミレになってから結構喋るようにもなりましたし、第5話を乗り越えた時に、女装をしたスミレではないですが、僕にも解放感はありました(笑)。

――スミレを演じるうえで、気を付けたことは?

こういう役は、見えたものにとらわれがちなので、“見た目を演じるのではなくて、心を演じなくてはいけない”と思います。そして僕は、女性を演じているのではないというところですね。澤は40歳を過ぎてから、ある日突然、女装で解放感を感じました。なぜ突然そうなったのか? やはりかなりのストレスがあったのだろうと、気持ちを考えました。そして澤が抱えている劣等感や閉塞感から解放されるには、少女のような素直な感性で、感じたことをそのまま発言できるような女性・スミレになることだと思いました。

元々、澤は感性豊かな人。そこが解放されたような気もします。ただ、スミレでいるために周りからは変な目で見られ、それは仕方がないと思っていることや、そんな自分を認めて欲しいと思う気持ちもある。サトミ(苑子)と出会うことによって、新たな気持ちが芽生えて葛藤してしまう。とても素直な人だと思います。

――最初にスミレになった時の心境は?

スタッフさんが「かわいい、かわいい」と言ってくれたのでうれしかったです。被り物は似合うかなという自信はありましたが(笑)、時間をかけてスミレを作ってくれるメイクさんのおかげです。

実は原作の澤部長は眼鏡をかけているのですが、僕が眼鏡をかけると、なんだか昭和の男性っぼくて「眼鏡は外しだね」と監督に提案しました。でも眼鏡を外すということは顔が全部見えてしまうということですからハードルは高い。その部分は僕の挑戦でした。

――改めてストーリーの感想をお聞かせください。

僕は原作の『個人差あり〼』がとても面白いと思っていて、ぜひ、(原作者の)日暮キノコさんにお会いしたいと思っていました。そうしたら日暮さんが撮影現場に来てくださる機会があり、とてもうれしかった。台本にサインもいただきましたしね(笑)。

この原作が素敵だと思ったのは、あまりない切り口で、いろんな人間の弱さに光を当てながらも、ちゃんと全部を包んでいるところ。普通に見えてみんな傷ついていて、誰もが闇を持っている。雪平(馬場徹)なども普通っぽい人ですが、実は一番闇を持っていそうな気がします。

一般的には、吐き出せるところがなくて人は苦しんでいるものですが、この物語にはどこかに吐き出せる要素がたくさんあり、とても面白いと思いました。ちなみにスミレのセリフは、ほとんど原作のセリフを活かしているんですよ。

――澤の“個人差”から生まれたスミレ。澤に共感は……?

できます。今回スミレになるために胸も入れて下着もつけて、スカートにヒールも履いて……ちなみに腕の毛も剃ったんですけど(笑)、そうするうちに足を閉じて綺麗に見せたいなど、女性らしい意識が芽生えてくるのが、とても新鮮でワクワクしました。「かわいい」と言われるのも悪い気はしませんしね。ただ……、今僕が30歳だったらもっと良かったのにな、とは思いました(笑)。

――視聴者の皆様にメッセージをお願いします。

物語はとても刺激的ですが、人の弱さを包み込んでいるドラマだと思います。キャッチーな言葉というより、温かさの中にメッセージがあって、「あなたが今、こうだったらどうするの?」と、作品の役がそれぞれ問いかけているような気がします。

そしてそのメッセージを問いかけているのが、皆さんよりきっと弱い立場の登場人物、スミレであったり、晶、雪平であったり……。だからきっと受け入れていただけるのではと思います。