私たちが当たり前のように日頃耳にしているさまざまな音。しかし、それが「聞こえない」とすると、世界は一変するはずです。

耳が不自由なうささ(@usasa21)さんが初めて知った「音の世界」に、「泣いた」「知らない世界を知った」と大きな反響が集まっています。

“正解の音たち”

耳がきこえない私がホームで出会った、
正解の音たち。(@usasa21より引用)

  • (@usasa21より引用)

聴覚障がいのあるうさささんは、普段補聴器を通じて音を聞いていますが、それが何の音でどこからの音なのか、何と言っているのかまでは知ることができません。漫画で街中にあふれるアナウンスや自動車の走行音といった「環境音」の存在を知り、聞こえてきた音と照らし合わせながら“予測”しているそうです。

  • (@usasa21より引用)

あくまでも“予測”なので“正解”を知らないうさささん。駅では看板を見ると最低限必要な情報はわかるものの、「すべての音を知るなんて夢物語のよう」だと感じていました。

ところがある日、JR上野駅で駅に流れる音を視覚化する装置「エキマトペ」に出会って世界が一変。

  • (@usasa21より引用)

  • (@usasa21より引用)

「エキマトペ」は、ホームに流れるアナウンスや電車の発着音、ドアの開閉音などをAI分析でリアルタイムに文字や手話、擬音語、擬声語といったオノマトペに変換して、ホーム上に設置された専用ディスプレイに表示する装置です。

  • 「エキマトペ」リリースより

  • 「エキマトペ」リリースより

「エキマトペ」によって音が「視覚化」されたことにより、耳が不自由なうさささんは、駅のホームで「1番線に快速列車がまいります」「点字ブロックの後ろまでお下がりください」といったアナウンスが流れていることを初めて知ることに。さらに、電車が入線してくるときの音が「ヒューン」と聞こえるなど、“正解の音”に次々と触れることになったのです。

  • (@usasa21より引用)

そんなうさささんに湧き上がってきたのは、決して知ることのなかった音を視覚化し、“正解”を教えてくれた「エキマトペ」への「感謝」の気持ち。「いつか、聞こえなくてもすべての音をその場で知ることができる日がやってくるかもしれない」と、未来への期待に胸をふくらませたのでした。

この「エキマトペ」との出会いを描いた漫画は、前・後編を合わせて14.7万件もの「いいね」を獲得。

リプライや引用リツイートでは、「僕も耳が聞こえないので、よくわかります」「感動して涙出た」といった声に加え、「目が覚めたように読みました。聞こえない方からみた世界はこんな風なのですね」「知らないことを知るってこういうことなんだ」など、「勉強になった」「考えさせられた」というコメントが続出しました。

「どんどん広まってほしい」「これが当たり前に見られるようになると良いですね!!」と、「エキマトペ」の今後の普及に期待する人も目立ちます。

このツイートをしたうさささんに、漫画にしたきっかけや反響への感想などをうかがいました。

「正解の音たち」、投稿者に聞いてみた

――こちらの漫画を描かれたきっかけは?

音に関するものは全て予測だらけの世界で生きている私にとって、正しい音を知るってとても大事なことなんです。

正しい音をエキマトペは教えてくれ、ホームでの世界が一気に変わりました。予測しなくていい、とても自然な形でホームに溢れる音を知れる、私は聴者にとても近い形であの場に立てたんです。「この感動を聴者に伝えたい、できれば開発者にも伝わってほしい」と思い漫画を描きました。

――大きな反響が寄せられていますね。

聴者にとってあまり必要のない装置かもしれません。なので批判も少なからず起こるのではと不安だったんです。

でも「もっと広まるべき」「全ての駅に」といった声が非常に多く驚いています。とても優しい言葉で溢れており涙ぐんでしまいました。

――漫画で描かれていますが、補聴器を付けていても「どこから出ている音か分からない」ことを知らずハッとしました。

やはり同じように気付きに繋がる聴者がとても多かったです。コロナ禍前の話なのですが、耳元で大声で話す聴者がおりとても困惑したことがあります(笑)。高齢者の“耳が遠い”と聴覚障害者の“耳が聞こえない”は全く別物であることをいつか漫画にできたらいいなぁと思っています。


ちなみに、うさささんが遭遇した「エキマトペ」は、2022年6月15日~12月14日の期間中、JR上野駅の1・2番線(京浜東北線と山手線)ホームで実証実験として行われているもの。当面の間は平日10時から17時の時間帯に放映しているそうです。今回の反響が、今後の本格展開につながることを期待したいですね。