大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で、梶原善の名前がオープニングでクレジットされると「また誰かが殺される!」と、視聴者の間で戦慄が走るとか。梶原が演じるのは暗殺者の善児役で、その名の通り、脚本の三谷幸喜氏が梶原にあてがきして描いたキャラクターだが、登場する回では毎回SNSを賑わわせていて、三谷氏自身も予想外の反響に驚いているという。

  • 『鎌倉殿の13人』善児役の梶原善

もともと出る杭は容赦なく打たれるという鎌倉時代、善児は淡々とミッションを全うするアサシンとして重宝されてきたが、三谷氏は「善児は自分の意図を超えて成長したキャラクターです。もちろん、善児が注目されるのは計算のうち。でもここまで視聴者の皆さんを震撼させる存在になるとは思ってもいませんでした」と注目度の高さにびっくりしたと言う。

善児はもともと伊東祐親(浅野和之)の下人で、頼朝(大泉洋)と八重(新垣結衣)の息子・千鶴丸や、北条義時(小栗旬)の兄・宗時(片岡愛之助)らを暗殺。伊東家の離散後は梶原景時(中村獅童)に拾われ、元主である祐親と祐清(竹財輝之助)父子や、頼朝の異母弟である源範頼(迫田孝也)を手にかけてきた。情に流されることはなく、かつ感情を一切表に出さずに人を殺害していく善児は、まさに殺人マシンのようで、登場するたびに強烈な爪痕を残してきた。

梶原といえば、三谷作品に欠かせない名バイプレイヤーだ。もともと三谷が主宰する東京サンシャインボーイズの劇団員だし、その実績や信頼関係の厚さは言うまでもない。「善児がこんなにみなさんから愛される、いや、嫌われるというか、みなさんの心に残るキャラクターになったのは、僕の脚本というよりも、梶原善さんと演出の力だと思っています。あそこまでのキャラクターに成長するとは、僕自身も思ってもなかったので。だからこそ、それを踏まえて、善児にこんなことをさせようと、さらに膨らんでいきました」

  • 善児に育てられた孤児・トウ役の山本千尋

もしかしてその結果、生まれたのが善児とトウの物語なのだろうか? 善児は範頼殺害時に、居合わせた農民夫婦も迷いなく殺害したが、その場にいた娘のトウは殺さなかった。そして孤児となった彼女を、なんと善児自身が育てていったようだ。これは映画『レオン』(95)のジャン・レノ演じる殺し屋レオンとナタリー・ポートマン演じる少女マチルダの構図を彷彿させるが、成長したトウ役で山本千尋が大河ドラマ初出演を果たした。

トウは7月31日放送の第29回で初登場し、華麗な身のこなしと見事な剣捌きが話題に。8月21日放送の第32回では、頼家(金子大地)の長男・一幡(相澤壮太)を殺すように義時に言われた善児が涙を見せるという、善児の変化も描かれた。

三谷氏は「善児はもともと最終回までいさせようとは思ってなかったのですが、じゃあ彼にはどんな幕引きがあるのだろうか? と考えるようになりました。ここまで成長した善児だから、どんな退場のさせ方をすればみなさんに満足してもらえるだろうかということを踏まえ、退場シーンを描きました」と、ますます善児から目を離せない展開となりそう。