スペイン文学を代表する劇作家で詩人のロルカによる“愛の悲劇”『血の婚礼』がこのほど上演される(9月15日〜10月2日 Bunkamura シアターコクーン、10月15日~16日 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ)。1人の女性をめぐり、2人の男が命をかけて闘う、愚かしいほどの愛と衝動を描いた作品で、演劇界で最も熱い注目を集める演出家の1人、杉原邦生氏が演出を務めることでも話題を呼んでいる。

今回主役のレオナルドを演じる木村達成と、ヒロインである花嫁(早見あかり)を巡って対立することになる花婿を演じる須賀健太にインタビュー。2人は2015年から2017年までハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』シリーズでタッグを組んでいたが、今回は全く違った役どころとなる。当時の思い出や、改めて共演することに至ったことについて話を聞いた。

  • 左から須賀健太、木村達成 撮影:島本絵梨佳

    左から須賀健太、木村達成 撮影:島本絵梨佳

■成長した姿をしっかり見せなければ

――まずは久しぶりの共演ということで、ぜひ心境を教えていただければ。

須賀:いや、まあ嬉しかったですね。

木村:淡白!

須賀:嬉しかったよ!(笑) 達成と作品をやる、それも一緒に真ん中に立たせていただけるというところに特別感がありますし、僕らに作品を任せてくださるのかと思うとすごくうれしくて。成長した姿をしっかり見せなければと気が引き締まる部分もありますし、頑張らないといけないと思いました。

木村:僕も健太と同じ気持ちはありますし、改めて取材を受けさせてもらうと、本当にやるんだと……。2人で取材を受けるというのは、ちょっと照れます。

須賀:何照れなの、それ?

――『ハイキュー!!』上演時は2人でいっぱい取材を受けてたんじゃないですか?

須賀:当時はもう会わない週がなかったんです。一緒にいるのが当たり前みたいな感じで。

木村:だから、今は元カノに会ってるみたいな感じかな?

2人:(爆笑)

須賀:だとしたら、今カノは誰なの?

木村:そういうことじゃない(笑)。でもこれめちゃめちゃ正しい表現だと思うよ! あんまりこういう表現使わないと思うけど、ずっとタッグを組んでやってた分、ベストだと思う。今回は元カノという表現でいかせてください!

須賀:僕は達成の元カノみたいです(笑)

――実際、互いに大人になったなと思うところはありますか?

木村:それはまだ、もっと稽古を重ねないとわからないじゃないですか。もしかしたらまた戻りたいなという気持ちが湧いてくるかもしれないし。「あいつのああいうところがよかったな」とか……。

須賀:いや、元カノの例えの方を広げるなよ!(笑)

木村:この作品でよりを戻すから(笑)。でも本当によりを戻すの? みたいな気持ちもある。たぶん、当時の写真を見て改めて思い出すんだと思います。楽しい時、つらい時もあったし、いろんなことを話したり言い合ったり……。

須賀:これ何の取材!? 復縁の記事?

■2人ともなかなか報われない役

――逆に「あの時は若かったな」などと思うことはあるんですか?

木村:当時出せる限界は出していたと思います。人生であんなにキネシオテープ使ったことないもん!

須賀:肉体的な限界はあったよね。きっとこれからもないぐらいにやっていて、その時のベストだったと思う。20歳くらいだったから、今20代後半になって、年齢を重ねている感覚はあります。当時の取材の時とか、僕たち私服だったんですよ。そしたらこの人(木村)ラフすぎる格好でしょっちゅう怒られてて(笑)。僕はシャツとか着てるから全然合わないんですよ! でも、もうそれしかないから、そのまま撮ってました。

木村:言い訳すると、シャツとかジャケットとか「身の丈に合っていない」と思ってたんです(笑)。今回はちょっと大人の色気というか、28歳になった自分の色気を存分に出せればとは思っています。

――変化を感じられる部分はありそうですか?

須賀:場当たりや通しになって、達成に対して「知らない間にこんなことに!」となるのかも。戯曲的にもそうだから、今の達成の演技を感じるのは稽古でも後半になるかもしれないです。

木村:健太には最大限幸福を演じていただいて、僕は絶望に突き落とすという役を担います。幸福のオーラを持っている俳優さんの1人だから、突き落としがいはあります。僕はどちらかというと絶望を感じさせられる役をずっとやってるので……(笑)。今回はある意味死神的なポジションではあるのかな?

須賀:色気は楽しみですね。僕に持ってない部分というか、男らしさみたいな……。

木村:色気、あるでしょう?

須賀:色気キャラではないよ! 対局にいるからこそ、一緒に芝居できることがすごく楽しいし、気が楽かもしれないです。

木村:でも当時も今も変わらないのは、舞台上では絶対上手と下手に分かれる2人なんですよ。今回は決闘の場面もあるかもとか、ちょっと歌ったりもするかもということもあって、どこまで実現するかもわからないのですが、劇場でお客さん一人ひとりに刺さるようなセリフをぶつけなければいけないし、きっと稽古場から2人で本当に(早見)あかりさんを取り合わなきゃいけないんだろうなと。

――須賀さんは映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』のインタビューで「永遠の恋人未満」と言われ、報われないのが似合うというお話だったんですが、今回もちょっとそういうところがある役ですね。

須賀:報われないですね。まだまだ春が訪れないです(笑)

木村:春、訪れたいの?

須賀:もういいかなと思ってきちゃった。報われないポジションを欲してる部分がある(笑)

木村:でも、僕も報われてないよね!? 最終的に彼女とハッピーエンドみたいな役がない。

須賀:ハッピーエンド顔じゃないもん!

木村:どんな顔!?(笑)

須賀:なんか、過酷であってほしい(笑)

木村:そういう作品、好きな方も多いしね(笑)

須賀:役者はみんな、どMなんです。つらい環境に置かれないことないじゃん。僕の役もずっと報われないと思います(笑)