アイドルグループ・King & Princeの永瀬廉が主演する読売テレビ・日本テレビドラマ『新・信長公記 ~クラスメイトは戦国武将~』(毎週日曜22:30~)が放送されることで、歴史教養バラエティ『戦国鍋TV ~なんとなく歴史が学べる映像~』(2010~12年、tvkほか)が再注目されるという異例の事態が起こっている。

共通点は「戦国時代」がテーマで、戦国武将らを現代風のイケメン俳優陣などが演じていること。『新・信長公記』の初回放送時にはTwitterトレンドに「戦国鍋」、また同番組のユニットの楽曲「敦盛2011」などが入る珍事もあった。

この状況に驚がくしたという『戦国鍋TV』のスタッフ陣は、『新・信長公記』をどのように見ているのか。『戦国鍋TV』で演出を務めた住田崇氏に、話を聞いた――。

  • 『戦国鍋TV』演出の住田崇氏

    『戦国鍋TV』演出の住田崇氏

■「なんか『戦国鍋』が話題になっているぞ」

『新・信長公記』は、『LIAR GAME』などの人気漫画家・甲斐谷忍氏原作による、青春あり、戦ありの学園天下獲りエンタテインメント。未来を舞台に、武将ばかりが集まったクラスで、織田信長のクローンを永瀬が演じるほか、豊臣秀吉(なにわ男子・西畑大吾)、明智光秀(萩原利久)、上杉謙信(犬飼貴丈)、伊達政宗(三浦翔平)、武田信玄(満島真之介)、黒田官兵衛(濱田岳)、徳川家康(小澤征悦)ら戦国武将のクローンが、学園の天下統一に奔走を目指す熱い人間ドラマだ。

一方の『戦国鍋TV』は、戦国武将に人気舞台俳優を当ててアイドルユニットを組ませたり、キャバクラに戦国武将が訪れるという独特なアプローチをして、一部で熱狂的なファンを作った伝説的なバラエティ。住田氏は「『戦国鍋』のプロデューサーや作曲家から“なんか『戦国鍋』が話題になっているぞ”と連絡が来て、さらにバラエティ番組で芸人さんが言及していたという話も聞き、10年経った今でも、“『戦国鍋』を彷ふつとさせる”とか、そんなことを言ってくれる人たちがいるんだ…という不思議な感じがしました」と心境を打ち明ける。

『戦国鍋TV』では、織田信長(村井良大)と蘭丸(鈴木拡樹)のアイドルユニット「信長と蘭丸」が大人気で、鈴木拡樹の出世作になったとも言われている。

「ドラマを拝見させていただいたのですが、似ている点はありますね。まず、史実をうまくキャラクターに落とし込んでいるところ。ナレーションで史実とのリンクを語るところ。信長(永瀬)だと好物の干し柿を取り入れたり、マント風に学生服を羽織ったり。秀吉(西畑)だと口八丁手八丁のお調子者でちょっと小ざかしいとか、制服の裏に“わらじ”の刺しゅうがあるなど、うまくフィードバックしているな、と興味深く見ました」(住田氏、以下同)

  • 『新・信長公記 ~クラスメイトは戦国武将~』(左から)小澤征悦、満島真之介、西畑大吾、永瀬廉、山田杏奈、三浦翔平、濱田岳 (C)ytv

■“自由”を許す上層部と、若手の“遊び”満載で人気番組に

実は、裏方の面でも共通点がある。それは、『新・信長公記』の企画を立ち上げたプロデューサー陣が、30代の若いスタッフであることだ。

「私も『戦国鍋』を演出したときは32歳ぐらいだったんですよ。だから若いスタッフが、セオリー通りに作ってないなという印象を『新・信長公記』にも感じました。ドラマはこうじゃなきゃいけないというのを吹っ飛ばしている感があるじゃないですか。“桜”の使い方や、あと僕が一番好きなシーンですが、ヒロイン(山田杏奈)が敦盛を歌い、それを永瀬くんがさすがのアイドルスキルで踊る場面など、昨今のドラマで劇中で女優が歌うってシーンあまり見ませんよね(笑)。素晴らしいと思いました」

『戦国鍋TV』のコンセプトは“ごった煮”、いわゆるオルタナティブだ。元々、tvk、千葉テレビ、テレビ埼玉、サンテレビという独立局でスタートしたこともあり、「相当、おかしなことをやらないとダメだろう」との考えから、ある意味「めちゃくちゃでいいじゃん!」とスタートした。

武将をアイドルにしたのは、戦国武将という固いイメージとアイドルという存在が最も遠い距離にあったからだといい、とにかく「振り切った発想、振り切った面白さ」を追求。同番組のエグゼクティブプロデューサー・大月俊倫氏が「面白ければ何をやってもいい」と、制作陣を自由にしてくれたことも功を奏した。

ちなみに住田氏は、戦国武将にもイケメン俳優にも最初はそれほど興味がなかったという。そこで、一部では人気があるイケメン俳優たちを番組内で完全プロデュース。80年代アイドル風にパーマをかけてもらったり、伊達政宗の眼帯を、当時女子高生の間で流行っていた“デコ”で飾るなどやりたい放題し、さらには完全台本でアドリブ禁止令も。

ちょうど当時、“歴女”という言葉が流行り始めたこともあり、武将を取り上げることになったが、そこから必死に戦国時代について調べ、そのいい意味での“専門家のようなこだわりのなさ”と、上層部から“自由”にさせてもらえたことで、「七本槍とか天正遣欧少年使節って名前、アイドルっぽいよね」という“遊び”を生み、それらを番組で展開していった。

自分たちでは非常にニッチなことをやっているつもりだったため、公開収録が行われることになっても「そんなの誰も来ないですよ」と思っていたところ、フタを開けると大入りの満員。「あれ? ウケてるの?」と逆に驚いたという。時代的には、いわゆる2.5次元の元祖的存在とも言える。