アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、あす21日に放送される『彼女が旅に出る理由 ~すれ違う母と娘の行方~』。お金に縛られず自由に生きたいと旅を続ける娘と、その行動が理解できない母親のすれ違いを追った作品だ。

自身も母親に反発し、夢に向かって進んでいったというきゃりー。娘に感情移入する一方、母親にも共感したといい、「他人(ひと)事じゃない感じで見ることができました」と語る――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当したきゃりーぱみゅぱみゅ

    『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当したきゃりーぱみゅぱみゅ

■自由な暮らしに憧れる娘と心配な母

都会の生活に疲れ、お金に縛られない自由な暮らしに憧れるミサトさん(28)は、軽バンに乗って気の向くままに全国を旅して回っている。しかし、その生き方が全く理解できず、旅をやめて働くべきだと言う堅実な母。心配ばかりする母に強く反発し、ミサトさんはまた旅に出る…。

そんなミサトさんの考えについて、「結構“あるある”な気がしました」というきゃりー。「理想と現実がかけ離れているけど、漠然と夢を持っているというのは、今の若者たちにすごく多いんじゃないかと思うんです。それを心配する母親と自由な娘という組み合わせも、全国にたくさんいると思います」といい、共感できる人が多いのではと想像する。

ミサトさんとは境遇が近いこともあって、強く感情移入したのだそう。

「私も両親が私立の高校に入れてくれて、そこから普通に大学に通わせて就職させたいというタイプだったんですけど、高校生で急にファッションに興味を持ってぶっ飛んだ世界に行っちゃったんで、母親に『まともでいろ』ってめちゃめちゃ言われてたんです。結構言い合いになったこともあって、家の近所では派手な格好をしないというルールを作って、自宅の最寄り駅のトイレでいつも着替えて出かけたりして。だから、お母さんとの距離感や、意見がぶつかるというのは、他人事じゃない感じで見ることができました」

「私も高校生の頃、学校にそこまで仲の良い友達が特にいなくて、居場所がないという感じだったんです。でも、原宿という街で、ここが自分の居場所で、これが仲間なんだというものに出会えて、そこから今の道に進むことができたので、ミサトさんが自分の居場所を見つけて気持ちが楽になるのであれば、彼女の意見を尊重したいなと思いますね」

  • 口論になってしまうミサトさん(左)と母親 (C)フジテレビ

■娘の気持ちに寄り添うも「まずは資金を集めてから…」

一方で、「やっぱり大切に育ててきた娘が、違うレールを走っていくと、親は心配しますよね。ミサトさんが自由な道を進むのに対して心配するお母さんの気持ちも分かります」と理解し、「本当にどっちの気持ちも分かるので、すごく面白い回だなと思いました」と、強く興味を持って語りを吹き込んだ。

それだけに、ナレーションの収録では、思わず感情があふれてしまう場面も。

「ミサトさんが久しぶりにちゃんとしたご飯を食べたところで、『よかったねー!』と思って、ちょっとテンションが上がりすぎちゃって(笑)。ポップに行きすぎちゃったところもあったのですが、ミサトさんとお母さんの人間模様を自分なりにどういうふうに伝えていったらいいかというのを考えながら収録したので、すごく勉強になりました」

この母娘が意見をぶつけ合う姿から、人間にとって“幸せ”“お金”とは何かということについても考えさせられる今回の番組だが、「やっぱりきちんとお金があると満足のいく生活と夢をかなえられていくというのは間違いなくあると思うので、まずは資金を集めてから夢に向かうというやり方がいいのかな…」との考えを持ったそうだ。

  • 軽バンで旅するミサトさん (C)フジテレビ

■「三角公園の歌姫」坂田佳子が気になる

全国を巡るミサトさんは、大阪・西成で「三角公園の歌姫」と呼ばれる坂田佳子さんに出会う。きゃりーは元々、坂田さんの存在を知っていたといい、「TikTokとかで回ってきて興味を持っていたのですが、ジャズシンガーだったこととか、公園にみんなが集まってライブみたいなことをしているのは初めて知りました。あそこのがどういう場所なのか、西成の三角公園という場所も謎で気になったので、今後は佳子さんを主役にした『ザ・ノンフィクション』を見たいなと思いました(笑)」と要望した。

そんな『ザ・ノンフィクション』ファンのきゃりー。最近のお気に入り回を聞くと、「婚活のミナミさんの回は面白かったですね。ご結婚されたとTwitterで回ってきて、幸せをつかんだんだ!と思って。ほかにも、(お金がないのに前向きな言葉が次々に飛び出す)何もしない旦那さんがYouTuberをやってる話とか、(ありのままを受け入れる介護施設の)『いしいさん家』も良かったですし、最近の回は片方が悪者になるのではなく、どちらも思いがあってのぶつかりがあって、解決に向かっていく話とか、そういうのが見てて面白いなと思いますね」と、その愛が止まらない。

今回のナレーションに、「大好きな番組に携われるのは、めちゃめちゃうれしいです」と歓喜する一方で、「『ザ・ノンフィクション』が好きすぎて、最近はフィクションの映画が見れなくなってきちゃってます(笑)」と悩ましい状況にもなっているようだ。

●きゃりーぱみゅぱみゅ
1993年生まれ、東京都出身。11年夏、中田ヤスタカ(CAPSULE)プロデュースによるミニアルバム『もしもし原宿』でメジャーデビュー。その後、『NHK紅白歌合戦』に3回出場し、13年に初めてのワールドツアー(8つの国と地域、13都市)を成功させ、これまでに4回のワールドツアーを行うなど国際的に活動する。デビュー10周年イヤーとなる21年、世界中を巻き込んだ新たな企みの発信地として新レーベル「KRK LAB」を発足し、22年に過去最大規模の全国ツアー『きゃりーぱみゅぱみゅ10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022』を開催。4月には米国最大級の野外音楽フェス『コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル』に出演した。音楽活動にとどまらず、現在は『世界の何だコレ!?ミステリー』(フジテレビ)でMC、『u&i』(NHK Eテレ)で声優も担当する。10月23日には『桃太郎フェス2022』に出演予定。“何にも縛られることのない表現に挑戦し続ける「HARAJUKU」、そして「JAPANESE POP」アイコン”。