70代は年金で生活をしている人がほとんどだと思います。公的年金では不足する場合、貯蓄に頼ることになりますが、誰しも充分な貯蓄があるわけではありません。現役時代に貯蓄ができていた人とできなかった人では70代の貯蓄額に大きな差が生まれていることが予想できます。

そこで、70代の貯蓄額と割合をグラフにしてご紹介します。また、70代の生活費はどのくらいかかるのか、収支を把握して老後の生活イメージも掴んでおきましょう。

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■70代の貯蓄額

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」から、70代の貯蓄額を見てみます。

*貯蓄額の平均

最初に70代の貯蓄額の平均を見てみましょう。

70代の二人以上世帯の貯蓄額の平均は2209万円、中央値は1000万円となっています。単身世帯では平均値1786万円、中央値800万円となっています。平均値は一部の富裕層の貯蓄額に引っ張られて高めに出やすいものです。貯蓄額が低い世帯から順に並べてちょうど真ん中にくる世帯の貯蓄額を表した中央値がより実態を表すと言われていますが、果たしてそうなのか、貯蓄額を金額の幅で区切って割合をグラフにしたものを見てみましょう。

*貯蓄額の金額別割合

二人以上世帯も単身世帯も、両端の割合が多い二極化したグラフになっています。金融資産非保有者は金融資産を保有していない世帯、つまり貯金ゼロの世帯ということです。二人以上世帯で18.3%、単身世帯では一番多い25.1%となっています。一方、貯蓄が3000万円以上ある世帯は、二人以上世帯では一番多い22.1%、単身世帯でも20.2%と割合が高くなっています。このようにして見ると、中央値も実態を表しているとはいえないようです。

■高齢者の貯蓄格差

貯金ゼロの世帯が2割ほどある一方で、3000万円以上貯蓄がある世帯も2割程度を占める現状は貯蓄格差が広がっている表れといえるでしょう。特に高齢世帯は貯蓄額が多い傾向があります。

世帯全体の貯蓄額の平均が1563万円であるのに対し、世帯主が60代の世帯の平均貯蓄額は2427万円、70代の世帯の平均貯蓄額は2209万円と、高齢者の貯蓄額の多さが平均値の高さに表れています。持つ者と持たざる者の格差が時間の経過とともに増幅された結果が高齢者の顕著な貯蓄格差となっているようです。

■老後の生活をイメージする

老後の生活は年金収入がメインとなります。日本年金機構によると、平均的な収入(平均標準報酬43.9万円)で40年間就業した場合に受け取ることができる年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の令和4年度の給付水準は月額21万9,593円となっています。この金額は高齢夫婦世帯の年金収入の目安になります。

生活イメージを掴むために、高齢夫婦世帯の家計収支をみてみましょう。総務省の「家計調査/家計収支編(2021年)」を参考にします。70歳から74歳までの無職の二人以上世帯の 実収入は24万8556円(うち公的年金給付は20万2429円)、75歳から79歳までは23万2485円(うち公的年金給付は19万3972円)となっています。

これに対し、支出はどうでしょうか。70歳から74歳までの無職の二人以上世帯の消費支出は23万9704円(非消費支出は3万3982円)、75歳から79歳までの消費支出は21万8456円(非消費支出は2万8943円)となっています。

※非消費支出とは、社会保険料や税金など自由にならない支出のことです。

実収入から消費支出と非消費支出を足した実支出を引いてプラスになれば黒字、マイナスになると赤字になります。70歳から74歳の収支をみると、2万5,131円赤字となっているため、毎月約2万5千円が不足することになります。1年間では30万円の不足となります。75歳から79歳の収支では、1万4,915円の赤字となり、毎月約1万5千円が不足することになり、1年間では、18万円の不足となります。

この家計調査の結果では、公的年金以外の収入があるため、70歳から74歳の収支の不足額は約2万5,000円となっていますが、公的年金以外の収入がない場合には、およそ7万円不足することになります。1年間では84万円の不足です。老後の消費支出は年齢が上がるに従って減っていきますが、代わりに医療費や介護費用などが増えてくることが考えられます。公的年金で不足する分は、それ以外の収入を得るか、貯蓄に頼るしかありません。

「貯蓄がどのくらいあれば安心なのか」はその人の年金受給額や生活スタイル、健康状態などによって異なります。今回は二人以上世帯の平均的な年金額、生活費をご紹介しましたが、自分が受給できる正確な年金額を知るには、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」、もしくは日本年金機構のサイト「ねんきんネット」で確認することをおすすめします。

貯蓄はたくさんあるに越したことはありませんが、やみくもに貯めても安心はできないでしょう。まずは老後の生活基盤となる年金でどのくらい賄えるか、そして毎月どのくらい不足するのかが把握できれば、貯蓄額の目安が見えてくることで意識的に貯めることができるでしょう。