日常会話や書籍・メディアなどでも見聞きすることがある「灯台下暗し」。正しい意味や使い方を理解できているでしょうか。
本記事では、「灯台下暗し」の意味や使い方を解説。また、「灯台下暗し」の類義語や英語表現もご紹介します。
「灯台下(もと)暗し」の意味・読み方
「灯台下暗し」は「とうだいもとくらし」と読み、近くにあるものには意外と気がつきにくいという意味のことわざです。
灯台の真下は周辺よりも暗いことが転じ、世間のことをよく知っている人でも身近な事情にうといことや、追い求めてきた答えが実は目の前にあったことなどを意味する言葉となりました。
なお、「灯台元暗し」と記載するのは間違いとなります。「元」は「はじめ」や「根本」などを意味する漢字ですので、「灯台の下」を表す「灯台下暗し」とは意味が合いません。
誤用することのないよう、表記には注意するようにしましょう。
「灯台下(もと)暗し」の由来
ここでは「灯台下暗し」の由来を解説します。
「灯台」は岬にある「灯台」が由来ではない
「灯台下暗し」を使う上でよくある間違いとして挙げられるのが、「灯台」を岬にある「灯台」だと思っているケースです。
このことわざの「灯台」は、燭台に似た形をしている昔の室内照明具のこと。
高い台の上に置かれた皿に菜種油などが入っており、室内全体を明るくするものの真下は皿の陰になって暗かったことから、「灯台下暗し」ということわざができたとされています。
岬の「灯台」は別の名前で呼ばれていた
そもそも、岬の「灯台」はその昔別の名前で呼ばれていました。明治時代に西洋式の灯台ができるまでは、「灯明台」と呼ばれていたようです。
「灯台下暗し」ということわざは16世紀から使われていたとされており、江戸時代には式亭三馬(しきていさんば)という人が、代表作の『浮世床(うきよどこ)』で「灯台下暗し」の例を挙げています。
一方、初の西洋式灯台である「観音崎灯台」は明治2年(1869年)にできあがっています。時系列を考えると、「灯台下暗し」の「灯台」が岬の灯台を指しているわけではないことを理解できるでしょう。
「灯台下(もと)暗し」の類義語
「灯台下暗し」には、似た意味を持つ類義語がいくつかあります。知っておくと日常生活などで役に立つこともありますので、代表的なものを確認しておきましょう。
傍目八目(おかめはちもく)
「傍目八目(おかめはちもく)」は、第三者のほうが、物事の真相や利害得失を当事者より的確に判断できることをたとえた四字熟語です。
別表記である「岡目八目(おかめはちもく)」も同義で、物事の当事者は感情的になってしまうものですが、他人は冷静に状況を見極められることを指しています。
この言葉はもともと囲碁用語であり、「傍目」は傍観すること、「八目」は囲碁の手数のことです。客観的に囲碁の対局を見ている観戦者のほうが対局者より冷静なので、8手先まで見通すことができるということに由来します。
例えば、「第三者のアドバイスがこんなに的を射ているなんて、まさに傍目八目だといえる」とか「岡目八目であることは重々承知だが、自分の意見はなかなか変えられない」などのように使用します。
「身近な事情や出来事には気づかない」という意味の「灯台下暗し」とニュアンスが似ているため、文脈や状況によっては言い換え表現として使えるでしょう。
秘事は睫(ひじはまつげ)
「秘事は睫(ひじはまつげ)」は、「秘事や秘伝はまつげのようなもので、案外手近なところにあるものの近すぎて気づかない」という意味のことわざです。
目の上にあるまつげは自分の目では見えないため、「近くにあるがなかなか容易には気づけないこと」を表す表現として、「秘事は睫」が使われるようになったとされています。
「灯台下暗し」と同じような意味を持っているため、類義語だといえるでしょう。
例えば、「同じマンションに住む人が有名な作家だとは知らなかった。まさに秘事は睫だ」とか「大事な書類を家中探していたが、秘事は睫で自分のデスクの中に入っていた」などのように使います。
「灯台下(もと)暗し」の使い方と例文
「身近にある物事に気づかなかった」と感じる場面は、日常生活において意外と多いものです。
言い方を間違えなければビジネスシーンでも使える表現のため、使い方や使用シーンなどを確認しておくといいでしょう。
ここからは、「灯台下暗し」の例文をご紹介していきます。
例文
こんなに美味しいお店が自宅からすぐのところにあったなんて、灯台下暗しだ
財布をなくしたと思って、会社や駅、昼休憩で行ったレストランなどを訪れたが、灯台下暗しで結局かばんの奥底から見つかった
灯台下暗しというように、海外を含めさまざまな場所に住んで初めて地元のよさに気づいた
新しいプロジェクトのリーダーに相応しい人を探してさまざまな部署を訪れたが、隣の席に適任者がいることに気づき、灯台下暗しだったなと思う
目の前にあるマニュアルを見ればすぐにわかることに気づけず、時間をかなり使ってしまい灯台下暗しだった
「灯台下(もと)暗し」の英語表現
仕事で英語を使ったり海外の方とコミュニケーションをとる機会が多かったりする場合、「灯台下暗し」の英語表現も気になるでしょう。
「灯台下暗し」は日本のことわざのためまったく同じ表現はありませんが、同じようなニュアンスを持つ英語表現がいくつかあります。
It's hard to see what is under your nose
1つは「It's hard to see what is under your nose」で、直訳すると「自分の鼻の下にあるものは見えにくい」です。
「秘事は睫」のように、顔のパーツを使って近すぎて見えにくいことを表したフレーズで、「灯台下暗し」のニュアンスで使えるでしょう。
Go abroad to hear of home
また、「Go abroad to hear of home」なども「灯台下暗し」の意味で使えるフレーズとして知られています。
意味は「外国へ行けば自国の噂が聞こえる」で、自分の国にいると気づかない物事に外国では気づける(身近すぎて見えなかったことが見えるようになる)ことを表した英語のことわざです。
それぞれのフレーズを覚えておき、英語でもスムーズに「灯台下暗し」を使えるようにしておきましょう。
「灯台下(もと)暗し」の本当の意味を理解しておこう
「灯台下暗し」とは「近くにあるものには意外と気づきにくいこと」のたとえで、日常生活でもよく見聞きすることわざです。
「灯台」を岬にある「灯台」だと思っている人は少なくありませんが、実は昔の室内証明具が由来となっており、海の「灯台」を意味しているわけではありません。
「灯台下暗し」の例文や類義語・英語表現などもあわせて確認しておき、正しく理解しておきましょう。