社会生活を営むうえで大切な行動や思考に影響するとされる「テストステロン」。昨今、「男性更年期障害」(LOH症候群)とともに注目される機会が増え、30代~50代の3人に1人が低テストステロンのおそれがあるとも言われている。

今回は都内で開催された「“テストステロン”の正しい知識」に関するプレスセミナーに参加。日比谷国際クリニックのメンズヘルス外来担当医・堀江重郎氏が登壇し、テストステロンが心身へ与える影響などについて語られた。

  • 堀江医師による「テストステロンの正しい知識」に関するプレスセミナーより

■心身に影響するテストステロンの基本的なはたらき

「テストステロンは男性ホルモンの一種で確かに男性に多いんですが、女性にもあります。量としてはエストロゲンという女性ホルモンの10倍ぐらい、男性はさらにその10倍ほどあり、人の体にとって非常に基本的なホルモンです」という堀江氏。

  • 日比谷国際クリニックのメンズヘルス外来担当医・堀江重郎氏

テストステロンは骨や筋肉の形成、造血、性機能、動脈硬化の防止、脂質代謝、認知機能など、身体機能に幅広く作用していると紹介する。

「テストステロンの分泌量は小学生くらいまでは男女同程度で、女子のほうが早く思春期が来るため、テストステロンは小学校6年ぐらいだと男子より女子のほうが高い傾向にあります。小学5~6年だと女子でも薄い髭が生えたり、学級委員なども女子のほうが多かったりしますが、テストステロンの影響とも考えられます」

テストステロンは「冒険のホルモン」「社会性のホルモン」「競争のホルモン」とも呼ばれ、心理面にも大きく作用し、社会活動にも深く関わる点も大きな特徴だという。

「テストステロンは身長のように個人差があり、高い人と低い人がいます。高い人は新しいことにチャレンジする意欲が高いほか、会社やクラブ、家庭など自分が属する組織を大事にする傾向があります。この延長に縄張り意識があり、動物のマーキングもテストストロンのはたらきとされています。そして、何かしら競争して、自分が比較・評価されて褒められると、テストステロンは大きく増えます」

  • 堀江医師による「テストステロンの正しい知識」に関するプレスセミナーより

日比谷国際クリニックでは30〜60代男性を対象に、テストステロンが心身に及ぼす影響に関して調査を実施。低テストステロンの要因としては「目標ややりたいことがない」ことが多いこと、テストステロンが高い人には「高収入」「イノベーション志向が高い」「仕事を通じて社会に貢献したい」などの特徴が挙げられるという。

「傾向としてテストステロンが高い人は失敗を恐れず、楽天的で粘り強い。同時に計画的で緻密ということも言えます。テストステロンの特徴である“男らしさ”とは何かというと、究極的には外に出かけて獲物を獲り、帰ってくるということに尽きると言えるかもしれません。社会生活は完全な単独行動で成り立つわけではなく、仲間や組織の中でのリーダーシップや協調性とも関係するわけです」

■「30代〜50代男性の3人に1人が低い」

“男らしさ”というと暴力性など弊害とも結び付けられがちだが、近年の研究でテストステロンと攻撃性は必ずしも関係ないと言われているそうで、現代では職業的な傾向もあるらしい。

「むしろテストステロンが高い人は我慢強く、社会貢献に積極的で、ボランティアや寄付をするとテストステロンは上がります。また、あくまで傾向の話ですが、職業的な傾向として会社組織に属さない人のほうが基本的にテストステロンは高い傾向にあり、例えばフリーのカメラマンは非常に高いです。あとは芸術家など自己表現する職業や政治家、我々の調査では日記を書く(書いていた)人も高い傾向にあります」

ちなみにテストステロンが高い人はブランド品を買いやすいといったデータもあるようだ。

「逆に教師・牧師・医師はテストステロンが低い職業として有名です。共通点として子供や病人などの弱者を守る仕事ですが、聖書や教科書などガイドラインに沿って仕事をするという意味では、あまりチャレンジが必要とされない職業とも言えるかもしれません(笑)」

テストステロンの分泌量は一般的に20代〜30代でピークを迎え、加齢とともに緩やかに低下するが、急激に減少することで男性更年期障害になる可能性も指摘されている。

  • 堀江医師による「テストステロンの正しい知識」に関するプレスセミナーより

今年3月に厚生労働省が発表した男性更年期の全国調査「更年期症状・障害に関する意識調査」によると、男性の更年期症状の状況を示す国際的な指標のひとつであるAMSスコアで、軽度〜重度にあたる人は30〜39歳で28.6%、50〜59歳で42.2%という結果に。

30代~50代男性の3人に1人が何らかの自覚症状を感じ、意欲・決断力・集中力の低下、うつなどの症状が重度の人も全体の8%という数字になっている。

「テストステロンの値はメンズヘルス外来など医療機関を受診し、採血して測定できます。現在は自宅などで唾液をとり、郵送して測定する方法もあります。唾液による測定法は診断のための臨床検査ではありませんが、同世代の中で自分がどのぐらいに位置するかといった結果やアドバイスが届くという商品です」

■テストステロンを上げるには?

「実際にテストステロンの値が低く、お困りの方にはテストステロン補充療法があります。世界では注射や塗り薬、軟膏のようなゲル剤、飲み薬などの薬剤が普及しています。とくにアメリカでは年間7000億円ほど消費されていますが、欧米だけでなく南米や他のアジア諸国と比べても、日本は非常に限られたテストステロン製剤しかないのが現状です」

このほど本セミナーの共催者である1UP学会は、世界標準のテストステロン製剤として「1UP FORMULA」を開発。医師によって処方され、自費診療となるが費用は概ね月1万円と、輸入した製剤を用いるより1/3~1/6ほどに抑えられる。ゲルタイプなので吸収力と使い心地に優れ、副作用も少ないという。

  • 堀江医師による「テストステロンの正しい知識」に関するプレスセミナーより

もちろん、テストステロンアップには日々の生活習慣の見直しやバランスの良い食事といったアプローチも大切だ。

「最も効果的なのは人から評価されて褒められること。あとは筋肉を使うこと、毎日のストレスを減らすためのアクティビティや十分な睡眠も重要になります。女性と接することもテストステロンを上げるには有効です。必ずしも女性の年齢や容姿などは関係なく、初対面の女性と会うと男性のテストステロンは上がります」

  • 堀江医師による「テストステロンの正しい知識」に関するプレスセミナーより

また、ゲームをするとドーパミンが活発化してテストステロンも上がるため、疲れているときにゲームをすることも理に適っているそうだ。食事ではタンパク質・糖質・ビタミンD・亜鉛を摂ることがポイント。

「肉や魚介類、野菜・果物など、けっこういろんな食べ物がテストステロンに関係します。炭水化物も大事ですし、とくに亜鉛は50歳以上の日本人男性の7割ほどが足りていません。亜鉛は牡蠣が有名ですが、貝類を食べることが大切です。お肉なら羊肉、ニンニクやセロリ、玉ねぎなどの野菜も効果的です」

  • セミナーではテストステロンをアップするメニューの試食も

女性とテストステロンの関わりについて、「現在、欧米では閉経後の女性にテストステロンを補充することが、徐々に一般的になってきていますが、まだ医学的な学会としての推奨などはされていません。唾液中のテストステロンを測る検査は、50歳前後の女性エグゼクティブが強い興味を持っていることもわかっています」とも語っていた堀江氏。

日比谷国際クリニックは1UP学会監修のもと、低テストステロンの要因を抱える男性などを「L世代」と名付け、チェック項目で簡単に診断できる「L世代診断サイト」を開設している。