「第59回ギャラクシー賞」テレビ部門選奨、「第48回放送文化基金賞」番組部門奨励賞&企画賞と、2021年度のテレビ賞に相次いで輝いたカンテレのバラエティ番組『千原ジュニアの座王』(毎週金曜24:55~ ※関西ローカル/受賞対象は今年1月2日放送の全国ネット特番、企画賞は千原ジュニア)。

イス取りゲームで座れなかった芸人が対戦相手を指名し、「大喜利」や「モノボケ」といったお題で勝負を繰り広げる内容で、「お題の工夫によって、即興芸の新しい魅力とお笑い芸人たちの豊かな才能を引き出すことに成功した」(放送文化基金賞)と高く評価された。

東西の芸人たちが毎週一堂に会し、“笑いの総合格闘技”を繰り広げるこの番組は、どのように生まれたのか。演出・プロデューサーを務めるカンテレの池田和彦氏に話を聞くと、笑いが生まれるための環境づくりに汗をかくスタッフたちと、それに応えて力を発揮する芸人たちの姿が見えてきた――。

  • 『千原ジュニアの座王』MCの千原ジュニア (C)カンテレ

    『千原ジュニアの座王』MCの千原ジュニア (C)カンテレ

■真っ白な空間が生まれた理由は…

イス取りゲームとお笑いを組み合わせたこのシステムは、十数年前に番組MC・千原ジュニアのライブで生まれたもの。近年は行われていなかったが、池田Pと18年来の付き合いという放送作家が「あれをテレビでできたら面白くなりそう」と提案し、カンテレの企画募集に出したところ、番組化が決まった。

しかし、与えられた枠は、深夜の関西ローカル。「東京のゴールデンの全国ネットの番組と比べたら10分の1くらいかもしれませんね」(池田P、以下同)という予算のため、最も費用のかかるスタジオセットを簡素化させ、真っ白な空間を作った。

「芸人さんに『なんで白いんですか?』と聞かれたときに、『真っ白な状態で新しい面白いことをやってほしいというイメージです』と説明するんですが、そういう思いもあるのは間違いないんですけど、大元は中途半端なお金でセットを建てるよりは、割り切って白の世界で行こうと考えた結果です(笑)」と実情を明かす。

  • (C)カンテレ

■想定外だった“机ドンドン”

ライブ発祥の企画ということで、「なるべく劇場でやっているような空間を作りたい」と、コロナ以前は30人の観覧客を配置。また、ライブ当時のジュニアは、イス取りゲームの輪についていきながら、自ら進行・審査するというスタイルだったが、番組化にあたってMC席を設け、別途、進行役のアナウンサーと審査委員長の芸人を置くことで、より自由にリアクションできる形になった。

これによって生まれたのが、ジュニアの“机ドンドン”。芸人たちの即興芸に、MC卓を両手で叩きながら爆笑するものだが、「もっとスマートな仕切りをされるイメージだったので、あんなに机をバンバン叩かれるなんて思わなかったですね。自分の番組なので、こう言うのはおこがましいんですけど、ジュニアさんが一番いい表情をされるのが『座王』なんじゃないかなと思っています」

机を叩くたびに設置されたCCDカメラが揺れに揺れまくるため、「視聴者から『見づらい』といったご意見もいただくのですが、あれだけ画面が揺れるくらいウケてるんだという1つのバロメーターになっているので、僕としては良いのかなと思っています」と、すっかり番組の名物に。総集編を作るときに集計したところ、1つのネタで最高30回以上叩いたこともあったという。

  • 7月29日・8月5日放送の審査委員長・くっきー!(左)と千原ジュニア (C)カンテレ

イス取りゲームというポップな遊びがベースにあるため、『IPPONグランプリ』(フジテレビ)や『人志松本のすべらない話』(同)といった番組に比べ、一見緊張感はなさそうに見えるが、「芸人さん同士のヒリつきというのは、やっぱりすごいものがありますね。収録直前の楽屋で全然会話がなかったというのをオープニングトークで話されるときもありますし、本番が終わってやっと一息つけるんじゃないですかね」と、その雰囲気を明かした。