JR東海は、東海道新幹線の夜間保守作業における保守用車同士の衝突を回避するための新幹線保守用車接近警報装置に関して、老朽化に伴う取替えに合わせて改良を行い、保守用車同士を近接させた状況で運転する際の安全性を向上させたと発表した。

牽引用車両軌道モータカー。保守用車は軌道モータカーなどの自走車両と、鉄製トロなどの動力を持たない運搬用車両を連結し、組成される

新幹線保守用車接近警報装置は、GPS機能により衝突の危険を検知し、ブレーキと警報を自動的に作動させ、保守用車を停止させる事故防止装置。保守用車は、作業内容に応じて、軌道モータカーなど動力を持つ自走車両と、材料等を運ぶ鉄製トロなど動力を持たない運搬用車両を連結して組成される。

改良前の装置は、自走車両の位置情報のみ把握し、保守用車の編成長についての情報は持っていなかった。編成同士の衝突を回避するため、自走車両の前後に一定の長さの運搬用車両が連結されていると仮定し、自走車両同士の間隔が安全上十分な距離である150mを下回ることのないように、自動的にブレーキが作動して停止するようにしていた。作業の都合上、複数の自走車両を150m未満に近接させることが必要な場合、運転者は装置の自動ブレーキ機能を解除した上で、目視などで前方の車両との距離や速度に注意を払いつつ、追突しないように保守用車を運転していたという。

今回の改良により、保守用車の実際の編成長を測定する機能を導入し、保守用車の編成同士の間隔を正確に測れるようにするとともに、保守用車のブレーキ制御システムを改良し、前方の編成との間隔および相対速度に応じて自動的かつ段階的にブレーキが作動して速度を制御することで、衝突を回避できるようにした。ブレーキ制御システムの改良の結果、編成同士の間隔を最小で10mまで近づけられるようになったとのこと。

複数の保守用車が150m未満の距離に近接して運転を行う場合も、運転者の注意力とブレーキ制御システムの両方で事故が防止されるようになった。運転者は前方や周囲により多くの注意を向けられるようになり、保守作業における安全性が一段と向上したという。2022年4月から装置の使用を開始しており、設備投資額は約1.9億円とされている。