藤井聡太竜王への挑戦権を争う第35期竜王戦(主催:読売新聞社)の決勝トーナメント準決勝、永瀬拓矢王座―山崎隆之八段戦が8月1日(月)に東京・将棋会館で行われました。結果は108手で山崎八段が勝利し、挑戦者決定戦へ進出しました。

第35期竜王戦決勝トーナメント

本局は永瀬王座の先手から、力戦調の相居飛車に進むと思われました。しかし4三銀・5三銀の二枚銀を作ってから△2二飛と向かい飛車に振るのが自由奔放な山崎八段ならではの驚きの構想でした。

■自由奔放に指し回す山崎八段

銀2枚を中央に配置した以上、玉を堅く囲うことは難しく、自ずと中央志向のバランス型の駒組みになります。さらに右金を6三に進めて、ますます中央を手厚くしました。その代償として玉は薄く、またのんびりしていると端に戦力を集中されて突破されてしまいそうです。

勝てば挑戦者決定三番勝負に進出というこの大事な大一番でこの大胆さ。山崎八段の真骨頂と言えるでしょう。

山崎八段は中盤で飛車を8筋に戻して、6~8筋での攻勢をみせます。対して永瀬王座は2、3筋に狙いを付けます。どちらの攻めが速いのか。68手目、夕食休憩の時点ではやや先手良しという評判でした。

■好判断から一気の寄せに

再開後、永瀬王座は持ち駒の桂を使って後手の銀に狙いを付けます。対して駒損を辞さず、銀桂交換を断行した山崎八段の順が好判断でした。取った桂を使う76手目の△5五桂が勝負手です。対して永瀬王座は当たりになっていた6七金を▲5六金とかわしましたが、これは山崎八段の意図が通りました。金の守りがなくなった地点へ突き出す△7六歩の桂取りが見た目以上に厳しかったのです。

ここからは山崎八段の流れるような攻めが決まりました。94手目に△8七飛成と敵陣に竜を作って後手よしです。先手は自玉が危ないだけでなく、後手陣を攻めるはずの飛角銀桂の働きがいずれも弱いのです。

最後は、序盤に築いた中央の勢力が敵玉を仕留めるトドメの駒となり、山崎八段が挑戦者決定戦進出を決めました。

山崎八段の竜王戦挑決進出は第25期以来10年ぶり2度目となります。この時は丸山忠久九段に1勝2敗で惜敗しましたが、今回はどうか。挑決の相手を決める佐藤天彦九段―広瀬章人八段戦は8月5日に東京の将棋会館で行われます。

相崎修司(将棋情報局)

らしさ全開で大一番を制した山崎八段
らしさ全開で大一番を制した山崎八段