長引くコロナ禍で、自治体は感染対策に苦慮している。マリンスポーツで知られる神奈川県茅ヶ崎市もそのひとつだ。そんな同市の観光協会に感染対策機材・装置を用意し、さらに「シナモロール」コラボを実現したのは、実はNTT東日本だったという。
湘南の海のイメージそのままの海の街、茅ヶ崎
神奈川県の湘南地域に位置する人口約24万人の茅ヶ崎市。海水浴場「サザンビーチちがさき」は夏になると多くの観光客で賑わうほか、一年を通してサーフィンやマリンスポーツも盛んに行われている。海岸沿いの道路にはサイクリングロードも設けられており、サイクリングやジョギングを楽しむ人も多い。
海の幸が豊富で、アジやしらすが名産。近年はわかめの養殖も進められており、同市のシンボルである"えぼし岩"にちなんだ「えぼしわかめ」として、1月~3月に生のまま販売されている。毎年2月に行われる「生わかめまつり」では30分ほどで売り切れることもあるという。オススメの食べ方は"わかめのしゃぶしゃぶ"だ。
また、国民的ロックバンド「サザンオールスターズ」のバンドマスターである桑田佳祐氏の出身地としても知られ、茅ヶ崎駅の発車メロディには「希望の轍」が流れる。多くの方がイメージする茅ヶ崎は、やはりサザンオールスターズの曲で歌われる情景だろう。
そんな茅ヶ崎市が2003年から行っているのが、クールビズに端を発する「アロハ事業」。職場において、ポロシャツならぬアロハシャツを着用することを推奨するものだ。観光協会では毎年「アロハシャツCHIGASAKI」を販売しているが、これは姉妹都市であるホノルルを参考に、地元業者に作ってもらっているボタンダウンタイプのものだという。
まさに"湘南の海の街"の代表格といえる茅ヶ崎市だが、そんな同市にも新型コロナウイルスは容赦なく襲いかかる。コロナ禍における茅ヶ崎市観光協会の対策について、事務局長の新谷雅之氏に伺ってみよう。
実は感染対策機材・装置も取り扱うNTT東日本
茅ヶ崎市観光協会は、市内に事務局、JR東日本の茅ヶ崎駅に観光案内所を構えており、セレクトショップとしても活用されている。だが駅ビルの一角ということもあり、人の往来が多い上に風通しも悪かった。
「観光協会は、市の補助金で活動してる団体です。2020年4月当時、まだ私は事務局長になったばかりでしたが、そのころはコロナ禍だからといってまだ感染対策に補助金が出る段階に至っていませんでした。政府からはもう観光案内所を閉めることも視野に入れるよう言われていました」(新谷氏)。
新谷氏は、2020年12月にネット環境の改善に着手。観光案内所は駅構内にあるため、Wi-Fiが電車の運行に影響を与えないように整備するのが通常より難しいのだとか。それでも整備にあたったNTT東日本が綿密な調査を進め、電車の運行が終わった時間を見計らってWi-Fiの敷設を進めたそうだ。そんななかで、NTT東日本から次のような提案を受けたという。
「Wi-Fi整備も補助金を受けて行っていたんですけど、そのときにNTT東日本さんから『こんなのがあるんですけど』と、感染対策機材・装置を紹介いただきましてね。しかも80%は補助金で賄うことができるときいて、お客さまに安心を感じていただけるのであれば、ぜひやりたいなと」(新谷氏)。
こうして2022年2月、事務局と観光案内所の2箇所に、サーマルカメラ、オゾン発生器、空気清浄機という3種類の感染対策機材・装置が設置される運びとなった。
「打ち手がない状況だったので、それはそれはありがたかったですよ。ネットで売っているなら自分たちで買おうかなと思っていたくらいです。むしろ、NTT東日本さんでこんなの取り扱っているんだ、という驚きがありました」(新谷氏)。
とはいえ、コロナ禍を経てすでに感染対策が当たり前の世の中になっており、際立った反響はないという。新谷氏は「当たり前のことを当たり前にやっただけ」と取り組みについて冷静に話す。
「オゾン発生器や空気清浄機なんて、目に見えないから効果なんてわからないんですよ。虫除けをつけたら虫が寄ってこなくなるんじゃないかと感じるのと同じで、お客さまの心配が少しでも減るならそれで良い。そういう認識ですね」(新谷氏)。
「シナモロール」コラボグッズ誕生の秘話
NTT東日本の提案で実現したもうひとつの取り組みが、サンリオの人気キャラクター「シナモロール」と茅ヶ崎の観光・撮影スポット「茅ヶ崎サザンC」のコラボグッズだ。
「もともと茅ヶ崎では10年くらい前からハローキティとコラボを続けていまして、『ガングロキティちゃん』を展開していました。今回もそうしようと思っていたら、NTT東日本の営業の方がね、『今はシナモロールが人気です、出してくれたら私も絶対買います!』と言うものだから、この年代の女性が欲しいというなら売れるんじゃないかと思いました」(新谷氏)。
あくまで観光協会の方の感想だが、このNTT東日本の担当者はサンリオのバッグを持ち、服装も「おねがいマイメロディ」の人気キャラクター「クロミ」のように見えたため、説得力を感じたという。
「発売したらちゃんとお休みの日に買いに来てくれました(笑)。我々のイメージだと小さいお子さんが対象かなと思ってましたけど、20~30代の女性が購入されるんですね。実際、茅ヶ崎でもすごく評判がいいんですよ」(新谷氏)。
自粛ムードを乗り越え夏の茅ヶ崎が復活
2025年度には新たに道の駅もオープンするという茅ヶ崎市。東西へ移動する通過地点となるであろう施設で、どれだけ情報を発信していくかが、これからの大きな課題となりそうだ。
また新谷氏は「茅ヶ崎のFMラジオ局を作りたいんですよ」とその展望を述べる。同じ湘南海岸に面する近隣の平塚市、藤沢市、鎌倉市にはコミュニティFMがあるため、音楽のイメージが強い茅ヶ崎をさらにアピールしたいという狙いだ。
「茅ヶ崎は都内の子育て世代の移住先としても人気が高く、人口もどんどん増えているんです。東京23区まで1時間程度で行けますし、いまは仕事もネットでできるでしょう。たまにしか出社しないなら、海のあるこの街が良いという人も多いみたいですね」(新谷氏)。
7月2日には海開きも行われ、この夏休みには再び多くの観光客が訪れると期待されている茅ヶ崎市。新型コロナウイルスの感染状況にも左右されるものの、長引くコロナ禍疲れを海で発散させる人は多そうだ。
「茅ヶ崎は、一万人が一回来る街ではなく、一人が一万回くる街を目指しています。9月4日には『サザンビーチちがさき花火大会』を開催予定です。今年もNTT東日本さんの協力のもと、万全の感染対策でお待ちしておりますので、ぜひ湘南の海においでください」(新谷氏)。