時代劇などを見ていると「よきにはからえ」という言葉を聞くこともあるでしょう。現代でも、日常会話の中で冗談交じりに「よきにはからえ」という言葉を使うこともあります。
しかし、「よきにはからえ」のそもそもの意味をよく分かっていないという人もいるのではないでしょうか。
この記事では「よきにはからえ」の言葉の意味や使い方・例文、さらには類語や敬語表現、英語表現についてもわかりやすく紹介します。
「よきにはからえ」の意味
「よきにはからえ」とは、任せるという意味の表現で命令形にあたります。もともとは武士が昔に使っていた表現で、時代劇などでよく聞かれる表現です。
現代でも親しい間柄などで、あえて「よきにはからえ」という表現を使うこともあります。
漢字では「良きに計らえ」
「よきにはからえ」は漢字で書くと「良きに計らえ」と書きます。「良き」とは、「いい」という意味です。文語で使われる「良し」の連体形です。
「計らう」は、「適切に処置する」「相手の事情を考えながら柔軟に対処する」「計画する」といった意味です。
したがって「良き」に「計らえ」で「いいように適切に対処しろ」といった意味になります。
「よきにはからえ」の由来
「よきにはからえ」は武士が使っていた言葉が由来です。日本で武士が活躍していた時代に使われていました。
当時も現在と同じく、適切に対処することや柔軟に物事を進めてほしいときに「任せる」という意味で使われていました。
「よきにはからえ」の使い方・例文【ビジネスシーンや日常会話】
「よきにはからえ」は昔の言葉なので、現代ではあまり一般的な言葉ではありません。しかし気心知れた間柄であれば、冗談交じりに用いられることもあるでしょう。具体的にどのように「よきにはからえ」が使用されるのか、例文を交えながら紹介します。
友達や同僚に使う時の使い方・例文
友達や同僚など、仲の良い相手との普段の会話ならば、「よきにはからえ」を気軽に使うことができるでしょう。
友人A : 今度の飲み会のお店、こっちで適当に決めておいていい?
友人B : うむ、よきにはからえ
上記の例文では、「よきにはからえ」と返事をすることで、飲み会のお店選びを友人Aに適切に処理してほしい、任せるという意味で使われています。
同僚A : この飲み屋、よく来るんだけど、焼き鳥の種類が多くてどれもおいしいんだよ。なに注文する?
同僚B : よきにはからえ
上記の例文における「よきにはからえ」では同僚Aに対して、焼き鳥の種類の選択を口出ししないので、好きなものを注文していい、という意味合いで使われています。
上司が部下に使う時の使い方・例文
ビジネスシーンの会話においても、上司と部下の仲が良い場合に、上司から部下に対して「よきにはからえ」が使われることも考えられるでしょう。
部下A : 次回のうちの部署の企画発表会、発表の順番や段取りはこの資料の流れでいこうと考えているのですが、いかがでしょうか?
上司B : いいと思うよ。この件については○○さんに任せてるから、よきにはからえ
上記の例文では、企画発表会について上司Bが部下Aに一任しているため、部下Aの考えに従って、最善を尽くすよう伝えている意味合いがあります。
上司C : 来月に東京でやる展覧会の出展、申し込みとかの事務手続きをお願いできる?
部下D : わかりました
上司C : 頼むね。よきにはからえ
上記の例文は、展覧会の事務手続き全般について上司Cが部下Dに対して適切に対処するよう任せているやり取りです。
「よきにはからえ」は命令の意味合いを含みます。仮に仲がよかったとしても、部下から上司に対して「よきにはからえ」と使うと、上司が不快に思う可能性もあります。部下から上司へは使用を避けるのが無難でしょう。
また、上司から部下に使用する場合も、過度なプレッシャーを与えることにならないよう、相手との関係性をしっかりと考慮する必要があります。
「よきにはからえ」の類語や言い換え表現
相手や状況に応じて最適な表現ができるよう、「よきにはからえ」と同様の意味を持つ表現についても、ぜひ覚えておきましょう。
「よきにはからえ」は、「任せる」という意味を持つため、そのまま「任せる」も言い換えの表現として使用可能です。
例えば「この書類の決裁、よきにはからえ」ならば「この書類の決裁は任せる」などと言い換えができるでしょう。同様に、「適切に処理して」も、「よきにはからえ」と同様の意味合いとして使えます。
状況や文脈の流れから、その場にもっともふさわしい形の表現を選んで使うようにしましょう。
「よきにはからえ」の敬語での言い換え表現
続いて「よきにはからえ」の敬語表現についても紹介します。
簡潔に表現する場合は、「お任せいたします」や「お願いいたします」などで言い換えが可能です。
場合によっては、「お取り計らいのほど、よろしくお願いいたします」「お取り計らいいただけますか」といった表現もあります。お願いをする印象がより強くなる表現です。
「よきにはからえ」は仲の良い友人や同僚同士、また上司から部下へ冗談交じりに使うことができるでしょう。しかし、命令形の表現でもあるため、目上の相手に対して使用したり、シリアスなシーンで使用したりするのは避けたいところです。
目上の相手にも、何かを任せたいことを適切に伝えられるよう、敬語表現もぜひ覚えておきましょう。
「よきにはからえ」に対する返事
「よきにはからえ」と言われたらなんと返せばいいのかもご紹介します。
御意
「御意」も「よきにはからえ」と同様に武士がよく使用していた言葉であり、主に主君から命令が下されたときに「あなたの言う通りにします」という意味で用いられていました。こちらも現代ではあまり一般的ではない言葉なので、仲のいい友人同士などの返しとして使うといいでしょう。
承知いたしました
依頼や要求などを聞き入れる「承知」を丁寧に表現した言葉です。目下の人から目上の人に対しても使えます。現代でもビジネスシーンで多用される言葉なので、無難に使用することができるでしょう。
「よきにはからえ」の英語表現
「よきにはからえ」という言葉は日本語としても独特の表現ですが、「任せる」「適切に処理してほしい」という意味の英語表現を覚えておくことには意味があるでしょう。
これは、「leave it to one」「leave it up to one」を用いて表現することができます。
A : This restaurant has 35 kinds of pizzas and they are all very good. Which one do you want?
(このお店はピザが35種類もあってどれもすごくおいしいんだよ。君はどれが食べたい?)
B : Any of them. I'll leave it to you.
(どれでもいいよ。君に任せるよ)
As for the documentation for the upcoming meeting, I'll leave it entirely up to Edward.
(今度の会議の資料づくりに関しては、エドワードに全面的に任せるから、よろしく頼むよ)
「よきにはからえ」の意味を正しく理解しよう
「よきにはからえ」は「任せる」という意味の言葉で、もともとは武士語の一つでした。現代でも日常会話の中で、なにかを任せるときに使われることもあります。
使うシーンや相手を選ぶので、「よきにはからえ」の意味や使い方をしっかり理解した上で、相手に対し失礼にならないように使いこなしましょう。