アウトドア総合メーカーのスノーピークは、キャンプフィールドを併設している新潟本社(新潟県三条市)で、総合展示会&カンファレンスイベント「Snow Peak LIFE EXPO 2022」を開催。スノーピークが展開する「衣食住働遊」に関する各事業や、他の企業・団体との取り組みが展示された。

  • 「Snow Peak LIFE EXPO 2022」の会場となったスノーピーク本社(新潟県三条市)は、約5万坪に直営のストアとキャンプフィールドなどを有する

7月9日~7月10日の一般向けの開催に先立ち、7月6日~7日に実施されたプレスツアーに参加。今回は同社の山井梨沙社長のコメントなどから、同社の取り組みなどを紹介する。

新たなコンソーシアム構想で協業を加速

「Snow Peak LIFE EXPO」は、人間性の回復を目指して「自然と人、人と人とのつながり」を提供してきたスノーピークが、キャンプ領域に留まらない各事業の取り組みなどに関する展示を通じ、同社が目指す未来を体験できるイベント。

新潟県三条市中野原の小高い丘陵地帯に立地するスノーピーク本社と、そこに併設する「Snow Peak HEADQUARTERS」を会場に、2021年7月、初めて開催された。

持続可能な社会へ向けた"つながり"を生み出していくことを掲げるイベントで、2回目の開催となった今年は「社会人 地球人として、つながりたい。」をコンセプトに据えた。

山井社長は新たな企業アライアンスの構想となる「ライフ・ビオトープ・コンソーシアム」について発表。グローバル企業とのアライアンスや未開拓業種とのアライアンスを推進するとした。その後行われた囲み取材では、イベント開幕にあたって次のようにコメントした。

「未来に向けた新たなアクションが生まれた昨年のEXPOの大きな成果を踏まえ、パートナーの皆様とスノーピークのつながりが、よりいっそう深まる展示になっています。社会人として目先の利益や目標だけを追い求めるのではなく、地球人という視点に立ち、さらに遠い未来まで考えることで、新しいアイデアが出てくる。コンソーシアムの取り組みが、我々が直面している環境や社会の課題を可視化し、解決していく一歩になれば嬉しく思います」(山井社長)

  • スノーピークの山井梨沙社長

これまでも協業を推進してきたスノーピークだが、同コンソーシアムでは地球目線の事業や活動を軸に、参画企業・団体の活動事例を共有する情報交換の場として、セミナーなどを定期的に開催。プロダクトやサービス、ソリューションなどの共同開発を行う。2023年春の立ち上げに向け、今年9月頃からテストモデルを始動させる予定だという。

  • 「社会人の壁を越えた地球人としてつながり、地球と共生する未来を目指す」というメッセージのもと、パートナー各社が屋外展示ブースを展開した

スノーピークがハブとなり、参画企業や団体同士のつながりをさらに深め、協業やマッチングを推進。1社では困難な領域でも「自然と人、人と人をつなぐ」というビジョンの実現に向けた取り組みを進めることが、同コンソーシアムのねらいだ。

「日本のキャンプ人口わずか7%と言われていて、本来この地球上に生きる全ての人たちが自然との関わりが必要で大切なこと。『ライフ・ビオトープ・コンソーシアム』は主に企業を対象とするアライアンスですが、個人や自治体の方も社会的な取り組みに参加できる仕組みをいま考えています」(山井社長)

  • 屋外ブースでパートナー企業との活動を紹介

キャンプフィールドを使って展開された屋外ブースでは、現在すでに進んでいる各パートナー企業との活動を紹介。日本製鉄とのリサイクルチタンの取り組みを紹介するブースでは、再生チタンを使った「オーロラボトル」を展示していた。

通常、チタン製品の製造では鉱石をインゴットなど中間製品にする過程で莫大な電力を消費するが、リサイクルチタンを活用すると、製造過程のCO2排出量を50〜80%ほど削減できるという。

再生チタンを使った新色の「オーロラボトル」は、既存のチタンボトル商品と機能面や販売価格は変えず、2023年に販売する予定とのことだ。

  • 日本製鉄とのリサイクルチタンの取り組み、再生チタンを使った「オーロラボトル」

スノーピークのキャンプイベントには「焚火トーク」という名物コンテンツがあり、この取り組みは昨年の本EXPOで催された「焚き火トーク」で両社の担当者が話したことがきっかけで始まったという。

注目を集める環境ベンチャーのトークイベントも

囲み取材で「スノーピークという会社で実現したいこと」について聞かれ、「便利さや快適さと引き換えにどんどん離れていく人と自然との距離、人と人との距離をつなぎ直すことが私たちの使命だと思っています」とも語っていた山井社長。

本イベントでは各界の専門家が登壇するトークイベントが実施され、JEPLANの岩元美智彦会長とのトークステージにも登壇した。

  • 専門家たちが登壇するトークイベントも

今年で創業16年目を迎えるJEPLAN(ジェプラン)は、衣料品やペットボトルなどのリサイクル事業を展開する企業。

北九州市に携帯電話リサイクルの世界最大規模の工場を構え、東京五輪メダルなどの素材を提供したほか、マクドナルドの「ハッピーセット」に付属するおもちゃのリサイクルを仕掛けたことで知られる。今年7月に日本環境設計から現在の社名に変更した。

「岩元会長との出会いはスノーピークにとって大きかったです。地球目線で未来を考えるという意味では、岩元会長から大きな影響を受けています」(山井社長)とのことで、岩元会長は自社のリサイクル事業の特徴について、次のように紹介した。

「従来のプラスチックのリサイクル手法では色などの添加物を実際には取り除けず、削って使うため、回収したプラスチックのうち世界平均で半分ほどしか使えません。我々のケミカルリサイクルは、"モノ"を循環させる通常の物理的リサイクルと違い、元素で考えます。くっついた元素を1回解いて添加物を取り除いた後、もう一回くっつける。すると、石油から同じものを作るよりCO2排出を半分に減らせて、劣化させずに約98.5%、ほぼ1:1で変換できるんです」(岩元会長)

  • 衣料品やペットボトルなどのリサイクル事業を展開するJEPLANの岩元美智彦会長

スノーピークとの出会いは回収ボックスの設置に取り組み始めた10年ほど前に遡るそうだ。

「資本金120万円で創業した会社ですが、最初にお会いした時からスノーピークさんは疑わないんです。『ずっとリサイクルし続けられて無限に循環する理想のリサイクル技術の研究を続けて、ケミカルの力で成し遂げました』と言っても、普通の企業は疑います。『実績は?』と言われてもベンチャーにはないので。でも、今の山井太会長と梨沙社長は『いいじゃないか、やろう』と。逆に『この会社、大丈夫かな?』って思ったくらいですけど(笑)。本当に感謝しています」(岩元会長)

もともとユーザーの環境意識も高いスノーピークとは親和性もあり、スノーピークの直営店などではJEPLANの回収ボックスが設置されている。

「リサイクルが当たり前の時代が来ている」

「弊社の川崎工場は世界最大のペットボトルリサイクの工場で、年間10億本をリサイクルしています。地下資源に対して"地上資源"という言葉を私は使うんですが、劣化しないのでずっと石油を再生しているようなものです。価格も見合ってきたので、今すごく売れています」(岩元会長)

現在は携帯電話、おもちゃ、文具やメガネなど含めて約380社、全国約2万拠点で同社の回収ボックスが置かれ、年間1,000万人がリサイクルに参加するという。

「いろいろイベントもしていますが、いくら環境が大事と言っても参加してくれません。でも、楽しかったら平気で1時間待ちで、環境意識も自分ごとになっていく。『正しいを、楽しいに』と私は言っているんですが、子どもたちからスタートすることが重要ですね」(岩元会長)

  • 山井社長「地球が豊かになっていくような取り組みを実践していきたい」

山井社長は「子どもの頃からリサイクルに参加することが当たり前という世代の時代が来ると思うと、本当に希望が湧いてきます。スノーピークもJEPLANさんに学びながら、地球が豊かになっていくような取り組みを実践していきたい」と語っていた。