ヒトクセもフタクセもあるキャラクターたちがさまざまにぶつかりあい、あるいはすれ違いながら、人々の平和を乱す邪悪なものたちを退治するためヒーローへと「アバターチェンジ」する『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が、いま人気を集めている。基本的にドンブラザーズはチェンジしたヒーローの状態でしか集まらず、普段はそれぞれバラバラで生活し、お互いの素性がはっきりわからないメンバーも存在するのが、今までの「スーパー戦隊」では見られなかった斬新な部分だといえよう。
単独インタビューの今回は、サルブラザー/猿原真一を演じる別府由来が登場。几帳面で博学、気まぐれに俳句を詠んでマイペースに日々を過ごす「風流人」という一風変わった人物の猿原だが、アクの強いドンブラザーズメンバーの中ではいやおうなく「ツッコミ担当」の役回りを務めることも少なくない。スラリとして長身と知的なルックスが魅力の別府から、猿原真一を演じる上で重要なポイントや、普段のドンブラザーズの仲間たちの様子、そして2022年7月22日から公開される映画『暴太郎戦隊ドンブラザーズTHE MOVIE 新・初恋ヒーロー』の見どころを尋ねてみた。
――かつてない濃厚かつ極端なキャラクターがうごめくスーパー戦隊となった『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の放送が始まって約4か月がたちました。番組をご覧になったかたからの反響を聞く機会はありますか?
真一が初登場したドン2話「おおもも、こもも」を友人が観てくれて、「子どもたちだけじゃなくて、同世代でも楽しく観られるね」と言われたことがあります。僕はいまラジオの仕事もさせていただいているのですが、番組に来てくださった音楽系アーティストの方たちとお話をしていると、「今まで特撮ヒーローものは観ていなかったけれど、ドンブラザーズは面白いから観てます」って言われることが多くなりました。
――別府さんが子どものころに観ていたスーパー戦隊シリーズとは、明らかに流れの異なる『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』について、演じる側からはどういう見方をされていますか。
『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は今までのスーパー戦隊と違うことをしようと頑張っている作品なので、先ほどのようなリアクションをいただくと、狙いどおりなんだなって改めて思いました。MORISAKI WIN(森崎ウィン)さんの主題歌がランキングで上位になったり、ドンオニタイジンの玩具が高い売り上げを示したりといったニュースを聞くたび、自分たちがこれまでやってきたことの「結果」が少しずつ出てきていると確信しました。
――前半エピソードで、別府さんが鮮烈な印象をうけたとお話はどれでしょう。
ひとつ挙げるとしたら、ドン15話「おかえりタロウ」です。復活したタロウ(ドンモモタロウ/演:樋口幸平)が、駆け寄ってきたはるか(オニシスター/演:志田こはく)に対して今まで見せなかったような表情をするんです。あのシーンの幸平を観て、ストレートに「嫉妬」しましたから。僕も幸平も、これまで演技経験がない中で頑張っていたのですが、あの表情を見た瞬間、「僕も負けてはいられない!」といっそう強い思いを抱きました。そして、7月24日に放送されるドン21話は猿原真一がフィーチャーされる回ですので、ぜひお楽しみいただきたいです。真一の魅力をいつも以上に表現できるよう頑張りました。
――真一の定番スタイルといえば、チューリップ帽と作務衣、それに「ネジネジ」と呼ばれるストールです。真一のファッションについてのこだわりについて教えてください。
真一はネジネジの色違いをたくさん持っていて、その日の気分によって変えている設定なんです。作務衣のほうはいつも同じなので、ネジネジで変化をつけています。タロウがいなくなったドン14話「みがわりジロウ」では、自分がタロウの代わりに……というわけではないんですけど、せめてタロウを身近に感じていようと赤いネジネジを巻いています。この日は赤でいきたいですと、衣装さんと相談して決めさせていただきました。
――精神的に追い込まれたときなど、真一がついネジネジを触っているみたいなクセが印象的ですね。
僕なりに真一の外見の特徴であるネジネジをうまく活かす方法がないかどうか考えて、テストの段階でやってみた芝居です。人間だれしも、落ち着かないとき、ソワソワしたときには何か動きを見せると思ったので、首のネジネジをさわってみたんです。最初はたしか、田崎竜太監督(※田崎監督の崎は立つ崎が正式表記)のドン9話「ぼろたろうとロボタロウ」で、タロウが弱っている今なら自分が勝てる、と思ったのをはるかに見透かされて焦るところでした。真一が「うわ、やっちまった!」って感じでネジネジをさわったら、監督から「それでいこう」とOKになりました。最近では、意識的にネジネジをさわって真一の不安を表しています。
――役者さんのアイデアを反映させやすい、自由度の高い現場であることがうかがえます。
いろんな監督さんがローテーションで入られますけど、基本的には僕たち役者がこういうことをやりたい、という意見を一度聞いてくださった上で、このシーンには合ってないからやめようとか、ここは面白いから入れようとか決める感じです。役を演じる上で、わかりやすい仕草を作るというのはテレビを観ている人たちに「いま真一は不安なんだな。ネジネジさわってるな」と、キャラクターの心理をすぐに理解してもらえるメリットがありますが、将来的には、微細な表情の変化、ニュアンスだけで感情の表現が出来るようになりたいです。
――時と場所を選ばず「ここで一句」と俳句を詠む風流人の真一ですが、自分で言うほど「変人」ではなく、ドンブラザーズの他のメンバーが突飛すぎる行動を取ったとき、思わずツッコミを入れる「常識的」な面もありますね。
回を重ねるごとに、真一の変人要素が目立ちにくくなってますよね。まあ、本当の変人だったら自分のことを変人だとは言わないし、変人とも思ってないですから(笑)。変わった男であるのは違いないですけど、変人の中でも常識人の部類に入るのかもしれません。