――怒ったらその場にあった鈍器を手に取り、いきなり殴りにかかるデンジャラスなはるかをはじめ、ドンブラザーズは攻撃的なメンバーがそろっていますから、基本的に「静」の人間である真一がツッコミに回るのは必然という感じです。

タロウもはるかも「発信する変人」ですけど、真一は自分の中で完結している「受け身の変人」なんです(笑)。ただ、どんな状況の中でも「ここで一句」と俳句を詠むのが、真一の変人たる所以なんでしょうね。

ドン13話「さよならタロウ」で戦いをボイコットして、ドンモモタロウが脳人と戦っているのをはるか、つよし(キジブラザー/演:鈴木浩文)と見つめながら、真一が「我慢できない」とばかりに一句詠むじゃないですか。あの局面で俳句を詠む必要はないはずですが、こういったところで真一の「変人」要素を出してもらえているのは、感謝しかありません。

聞いた話ですと、脚本の井上敏樹先生は「真一を俳句キャラにしたのを後悔している。毎回一句考えないといけないから」って言っていたそうですが(笑)、僕としては最終回までぜひいい句をお考えになっていただきたいと願っています。

――真一は、タロウや喫茶「どんぶら」マスターの五色田介人(演:駒木根葵汰)、桃井陣(演:和田聰宏)など謎めいた人物の謎めいた言動を分析しつつ、脳人やヒトツ鬼との戦いからこれまでの状況を整理し、今後どうしたらよいのかを探る「頭脳派」ポジションが与えられていますね。そんな真一を演じるにあたっての、特にこだわっている部分を教えてください。

真一はバックボーンがまだあまり描かれていないので、いったい彼がどこまで本当のことを言っているのか、はっきりはしていないんですよね。そういう意味では、真一もけっこう謎の人物です。

最初に田崎監督から言われた「真一は“芯のないスナフキン”」というキャラ説明も、そもそも良いことなのか悪いことなのかわかりません(笑)。芯がないんだけど、その場その場で真一なりの芯が生まれるんだとも言われました。芯がないゆえに、どんな状況でどんな出来事が真一に「刺さる」のかが、まだはっきりしないとも言えます。

ドン2話で初登場した際に詠んだ一句「春風や 亡きあの人と すれ違う」にしても、もしかしたら彼には本当に「亡きあの人」と呼べる存在がいたのかもしれない。僕自身は「亡きあのひと」を想像してあの句を詠んだので、涙を流しているんですけど、実際のところはどうなのかわかっていません。

これからどんな風に真一が「化けて」いくのか、その伸びしろに自分でも期待しています。何でもできるタロウがいる一方で、実は真一もかなり優れた能力を備えているんです。謎についても、頭脳派の真一がいつか解決してくれるんじゃないかと思います。

みなさん『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の謎を解明するみたいな考察をされていますが、僕自身もそういう考察・推理が大好きなんです。今後も、いろいろな新要素が出てきますから、もしかしたら真一の過去が明かされるかもしれないです。これからの動きがどうなるか、変化を楽しみにしながら演じているところです。

――ふだんのドンブラザーズメンバーの雰囲気はいかがでしょうか。

みんなが集まれば自然にワイワイと賑やかな空気になる感じですね。僕はもともとおしゃべりなほうで、一対一の会話だとずっと話していても平気なんですけど、みんながいるときだと一歩退いた状態で、人の話を聞いていることが多いんです。いまはこんな話題だから、自分の話をするより聞いておこうとか、頭の中で考えてしまうんです。そんなところは、真一と共通しているのかもしれません。

幸平とヒロさん(鈴木)は関西ノリで、いつも現場を楽しく盛り上げてくれます。こはくはマイペースでゲームをやっていたりして、みんなの妹的存在ですね。柊太朗は最初こそ大人しくしていたのですが、最近本性をあらわすといいますか(笑)、幸平と一緒にワチャワチャと騒いでいます。

――ドン14話「みがわりジロウ」より、ドンドラゴクウ/桃谷ジロウ(演:石川雷蔵)が新しく『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』世界に加わりました。石川さんとはどんなお話をされていますか。

雷蔵とは同じ事務所ですし、いちばん話が合いますね。ロケ帰りのバスの中で、一緒にゲームをやっています。雷蔵は年下なんですけど、僕の精神年齢が幼いのと、お互いゲームやアニメが好きなこともあって、撮影の合間にはそんな話ばかりしています。

――テレビシリーズもいよいよ後半にさしかかります。別府さん的には猿原真一をどんな風に成長させていきたいですか。

演じてみて、改めて真一という役は難しいなと思います。超然としているところ、意外に俗っぽいところ、設定年齢21歳という若さ、頭がいい、そしてサルブラザーにチェンジしたらいきなりサルっぽくなる……いろんな要素が詰まったキャラクターですからね。

そんな中で真一として強調していきたいのは、人一倍「優しさ」を備えているところです。孤独に生きようとしていた真一が、タロウとはるかには心を開き始めている。外では相変わらずの変人、風流人、教授で通っているけれど、ドンブラザーズの仲間たちには「素」の自分を出すことのできる関係性になっていきたいですね。真一のいろんな面の中で、特に「人間っぽさ」を表現できれば。そして僕自身も、真一と一緒に成長できればと思って、日々の撮影を頑張っています。

――7月22日から公開の映画『暴太郎戦隊ドンブラザーズTHE MOVIE 新・初恋ヒーロー』についてのお話を聞かせてください。ドンブラザーズの5人と脳人がなんと映画に出演? というコミカル要素の多いストーリーだとうかがいました。映画ゲストには、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)のクワガライジャー/霞一鍬役だった姜暢雄さん、『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989年)の島崎和歌子さん、『鳥人戦隊ジェットマン』(1992年)のホワイトスワン/鹿鳴館香役の岸田里佳さんという豪華な顔ぶれが揃いましたね。

ゲストの方々とは少ししか関わることができなかったのですが、短い時間の中でたくさんお話をすることができました。幼いころ『ハリケンジャー』が大好きでしたから、姜さんにお会いできたのはすごく嬉しかったです。島崎さんも、いつもテレビで拝見している「和歌子ねえさん」の印象そのままで、優しく話しかけてくださいました。岸田さんも含め、みなさんと共演できたことが本当に嬉しくて、これからも俳優として頑張って、またご一緒できるようになりたいと強く思いました。

――別府さんから、映画での真一の注目ポイントを教えてください。

真一は映画でも一句詠むのですが、テレビではまだ披露したことのない「詠み方」をしていますので、そこは楽しみにしていてほしいです。また、サルブラザーとして迫力満点の登場シーンを撮影したので、完成映像でどんな風になっているのか今から楽しみです。今回の映画は真一、翼、つよしの出番はそれほど多くないんですよ。だからこそ、僕たちの出番では観ている方たちに強烈な印象を残せたらと、工夫を凝らしています。真一としては、ネジネジをアイコン的に用いて、かなり面白い動きをしようと試みましたので、観ていただければ嬉しいです。ラストシーンでの、真一の「映画限定」仕様のネジネジにもご注目ください。