社会人1年目の平均貯金額は62万円という調査結果(ソニー生命調べ)があります。社会人1年目は生活環境が変わり、支出も増えがちな時期だからこそ、いかに早い段階で貯金を習慣化できるかが鍵となります。そんな新社会人のお金事情や貯金を無理なく増やすコツを解説します。

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■社会人1年目の平均貯金額は62万円

【社会人1年目の平均貯金額】

「社会人1年目と2年目の意識調査2022」(ソニー生命調べ)によると、社会人1年目の平均貯金額は62万円となっています。

貯蓄額 0円 10万円未満 10万円~ 20万円未満 20万円~ 30万円未満 30万円~ 40万円未満 40万円~ 50万円未満 50万円~ 100万円未満 100万円以上
割合 12.6% 1.8% 16.6% 9.2% 4.2% 11.8% 30.2% 13.6%

出典:ソニー生命「社会人1年目と2年目の意識調査2022

平均貯金額が40万円以上ある人は全体の55.6%となります。単純計算ではありますが、半数以上の人が毎月3万円以上の貯金をしていることになります。

【社会人1年目の目標貯金額】

同じく「社会人1年目と2年目の意識調査2022」(ソニー生命調べ)によると、社会人1年目の30歳時点の目標貯金額は平均847万円となっています。目標達成には、多くの人が社会人1年目の年間貯蓄額よりもさらに多くの額を毎年貯め続ける必要があります。高い目標を達成するには、社会人1年目からの貯金習慣が大きな力となります。

【適正貯金額はいくら?】

実家暮らしかひとり暮らしかの違いや、住んでいる地域によってもかかる生活費は大きく変わります。また、奨学金返済の有無も貯金額には大きく関わってきます。そのため、一律で適正貯金額を設定するのは難しいですが、まずは手取りの10~20%を毎月貯金することを習慣化しましょう。

とはいえ、あまりにも現実的でない貯金額を設定しても続きません。貯金額を仮決めしたら、この貯金額で生活に無理がないかを必ず確認するようにしましょう。3カ月程度試してみて、貯金額が適正だと判断できた時点でより強制力のある貯蓄方法に切り替えると無理なく続けやすくなります。いきなり貯金額を変更しづらい方法で貯めはじめないことも貯金が続くコツです。

■社会人1年目の平均賃金は22万5,400円

【社会人1年目の平均賃金】

新規学卒者の賃金を学歴別にみると、男女計で高校が17万9,700円、専門学校20万6,900円、高専・短大19万9,800円、大学22万5,400円、大学院25万3,500円となっています。

出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査

【手取り金額の計算方法】

はじめての給料日に額面給与と実際に受け取るお金の違いに驚いた方もいらっしゃるかもしれません。実際に給与として受け取るお金(手取り)は、額面給与から社会保険料や税金が差し引かれたものになります。

給与明細を確認すると、「総支給額」「総控除額」「差引支給額」といった言葉があるはずです。「総支給額」には、基本給のほか、残業手当や通勤手当など会社の就業規則などで決められた各種手当てを合算した金額が記載されています。「総控除額」には、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料といった社会保険料と、所得税や住民税といった税金を合算した金額が記載されています。40歳以降になると、社会保険料には介護保険料が追加されます。

手取り額は、総支給額-総控除額=差引支給額(手取り額)で求められます。

様々な要素によって手取り額は決まるので、正確な金額は給与明細を確認しながら求める必要があります。ただし、ざっくりとした目安としては、額面給与の80%が手取り額となります。

先程の大学卒の平均賃金22万5,400円の手取り額は目安として約18万円程度となります。このように、実際に受け取れる金額は額面給与とは大きく異なるので、貯金額を考えるときには必ず手取り額ベースで考えるようにしましょう。

【要注意!社会人2年目で手取りが減る理由】

手取り額を考えるときに注意したいのが「住民税」です。住民税は前年の課税所得に基づいて計算されます。つまり、前年の収入がベースとなるため、社会人1年目では徴収されず、住民税が徴収されるのは2年目からになります。

総支給額が1年目と2年目で大きく変わらない場合、手取り額を比較すると2年目の方が減ってしまう可能性もあるので注意が必要です。

■社会人1年目、お金の使い道は?

【毎月の平均支出額】

総務省の家計調査によると、34歳以下単身世帯の1カ月の消費支出額は157,411円となっています。

支出の内訳は以下の通りです。平均額なので、ひとり暮らしをしている場合には住居費はさらに高くなる点などに注意が必要ですが、生活には多くのお金がかかることがこのデータからもわかります。

用途 支出額
食料 35,418円
住居 7,675円
光熱・水道 35,418円
家具・家事用品 6,954円
被服及び履物 6,509円
保健医療 4,683円
交通 13,092円
通信 7,059円
教育 11円
教養娯楽 19,839円
その他の消費支出 20,220円

*総務省統計局「家計調査2021年(令和3年)平均年齢階級別1世帯当たり1カ月間の収入と支出」を元に作成

【お金の使い道、どう把握する?】

まずは自分が生活をする上で最低限かかるお金を把握しましょう。全体像を把握できたら、外食費や服飾費など自分が特に把握しておきたい項目だけをピックアップして集計するのもひとつです。

家計簿にこだわる必要はありません。レシートを1カ月分まとめて集計したり、家計簿アプリを使ったり、といったようになるべく手間のかからない自分に合った方法をみつけましょう。

現状把握をしないまま貯金額を決めるのは危険です。まずは今の生活費を把握して、無駄がないかを確認した上で、貯金額を設定しましょう。

■貯金を無理なく増やすコツ

【固定費を増やさないようにしよう】

支出が増えれば当然貯金できる額は減ります。特に固定費はお金が出ていくことが確実な支出です。だからこそ、増やすときには慎重になりましょう。特に気を付けたいのが住居費とサブスクリプション(定期購読・継続購入)費用です。

学生から社会人になり、暮らしもグレードアップさせたくなるのは自然なことです。ただ、住居を住み替えるのは手間も費用もかかる上、一度住居費を上げてしまうと心理的にも下げにくくなってしまいます。また、サブスクリプション費用は少額だからと気軽に契約してしまいがちですが、少額でもいくつも重なると負担感も大きくなります。

固定費は支払方法が自動引き落としのものが多く、お金を支払っている意識が薄くなるからこそ、安易に増やさない・定期的に見直すことを意識しましょう。

【目標を具体的にしよう】

ゴールがわからないマラソンは、走り続けることが辛く感じると思いませんか。貯金も同じです。具体的な目標(ゴール)があるからこそ、貯金の実行力・継続力も高まります。「特に具体的な目標が思い浮かばない」という方は生活防衛費を最初の目標にすることをお勧めします。生活防衛費とは、病気やケガ、失業といったもしもの時に暮らしを守るためのお金です。まずは、生活費3カ月分を生活防衛費として確保しましょう。

同時に、少しずつでいいので、これからの人生に起こるであろうことややりたいことをイメージしてみましょう。自分が望む将来を具体的にしていくと貯金のモチベーションにも繋がります。

【貯金は先取りしよう】

確実に貯金するには、自分の意思や手を使わずに“勝手に”貯まる仕組みを作ることが大切です。それが「先取り貯金」です。会社の財形貯蓄や定期預金などを活用し、自分の手元にお金が入ってくる前に自動的に貯められる仕組みをつくりましょう。

【口座を分けよう】

用途が違うお金が混ざっていると管理が難しくなります。使うお金と貯めるお金は口座を分けて管理しましょう。使うための口座と貯めるための口座が分かれていると、一目でいくら貯まっているのかがわかります。

銀行によっては代表口座とは別に、口座を追加して、旅行用や自己投資用などといったように目的別にわけて管理できるものもあります。銀行口座の数を増やすと管理が煩雑になりがちですが、ひとつの代表口座を持つだけでより細かく目的毎に貯金用の口座を作れるのでお勧めです。

■まとめ

社会人1年目は学生から社会人という大きな環境の変化に戸惑う一年かもしれません。変化に適応することに一生懸命な時期ではありますが、お金の習慣というのは悪いものほどすぐに身についてしまうものです。無計画なお金の使い方が身につく前に、まずは先取り貯金の習慣を身につけられるようにしたいものです。最初から完璧を目指さず、まずは無理のない範囲で、手軽に始められる方法を取り入れて、徐々に貯金額や貯金方法もステップアップさせていきましょう。

とはいえ、貯めるだけではなく、新たな学びや経験を得るために自分自身へお金を使うことも大切な時期です。実際にいろいろと試しながら、「貯める」と「使う」の最適バランスを見つけていってくださいね。